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異世界メモリアル【2周目 第16話】


10月に入って、もうすぐ生徒会の立候補だ。


いつものごとく、妹が俺の部屋のドアをノックする。

薄いピンクの縦縞が可愛らしい薄手のパジャマは、半袖から長袖に変わっていた。


「どう、お兄ちゃん普段の生活は」

「ああ、ヨガとかピラティスとか半身浴とかばかりでOLになった気分だ」

「それは楽しいね」


そうなのか……?

まぁ地獄の筋トレに比べればマシだし、顔が綺麗になっていくのは嬉しい気がするけど。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 110(+10)

理系学力 113(+7)

運動能力 88(+19)

容姿   91(+26) 

芸術   95(+19)

料理   108(+0) 装備+100

―――――――――――――――――――――――――――――


料理を全くしてないこと以外は非常にバランスがいい。

なお、料理当番はこなしているが、”遺伝子レンジ”という装備品に材料を突っ込んでいるだけのためスキルは上がらない。

正直、料理なんかしている暇があったら、髪とお肌を綺麗にしたい。

ん~、なんかますますOLみたいだな……。


「うん、これなら生徒会に立候補するのは余裕でしょ」

「おお!? やっぱりそうか!?」

「当選するかどうかは、応援者も影響するからね」

「それを確認しよう」


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

星乃煌(ほしのきらめき)    [1年生のことは全員愛している]

来斗述(らいとのべる)     [友人D]

ニコ・ラテスラ(にこらてすら)  [一緒に酒飲みながら実験したい]

画領天星(がりょうてんせい)    [ロト×男子生徒D]

次孔律動(じあなりずむ)    [競馬友達の誕生か!?]

―――――――――――――――――――――――――――――


うう~ん……。

まぁ一応みんな友達ってことかな。

てんせーちゃんだけはオカシイけど、まぁ多分友達ってことだろ、きっと。


「一応演説はしてくれそうな感じだよ」

「そうか、良かった」


それにしても、デートの内容からしたらもっと関係が進んでてもおかしくないんだけどね。

そんなに甘くないんだよなー。 

一年目の2学期序盤だからかなり良い方なんだろうけど。

こっちはもうみんな大好きなんだけど……。


そう、やっぱりというか俺は全員に惚れていた。

良いギャルゲーっていうのは、攻略キャラがみんな魅力的すぎて1位なんて決められないという悩みがあるものなのだ。

この世界はクソゲーだが、ギャルゲーとしては最高だ。

ただのギャルゲーなら幸福な悩みなんだがな。


***


「君、生徒会に立候補したまえ!」


廊下で突然肩をがっちりと掴まれて、声をかけられた。

いかにもギャルゲーの突発イベントという感じだ。

立候補できるフラグが立ったことがよく分かるぞ。

声をかけてきたのは、会長。

星乃煌(ほしのきらめき)だった。

黒いロングのストレートヘアに、大きな胸、細い腰、カモシカのような脚。

整った顔立ちにやや釣り上がった目、やや高い鼻、少し太めの眉毛は意志の強さを感じさせる。

後ろからフラッシュでも焚いているかと思うほど、存在感がある。

近くから見るのは初めてだが、なんて完成度の高い人なんだ。

これがカリスマってやつなのか。


「そ、そのつもりです」

「そうか! 大いに結構!」


テンションの高さとなんともいえないオーラにたじたじになる俺に、快活に答える星乃会長。

決して大声というわけではないのだ。

話し方が強いというか、言葉に妙に勢いがあるのである。

爆発的な笑顔のまま、俺の目を見て言う。


「君は会長に立候補するのか!?」


私がいるのに生徒会長に立候補するなんて、と脅しているなんてことは少しもなく。

どちらかというと期待している、面白がっているような表情だ。

俺は生徒会長になろうなんて少しも思っていない。


「め、滅相もない。ヒラ役で結構です」

「そうか!? じゃあ一緒に生徒会が出来るといいな!」


あっはっはと豊かな胸を反らしながら、バカ笑いする星乃会長。

バイタリティが溢れすぎてて、こっちは溺れそうだ。

少し話すだけでやたら疲れる。

美人の上級生だから、緊張していることもあるかもしれない。

さらに俺はゲーマーでスポーツはゲームでしかしないタイプなので体育会系のノリが苦手だ。

星乃会長は一応攻略対象っぽいが、あらゆる意味で、最難関攻略キャラだろうな。

今の所、俺には攻略できる気が全くしない。

いや、デートに誘うことすら出来そうにない。

だが、一つだけ、一つだけ聞きたいことがある。


「会長、生徒会に入れば、本当に世界を変えられるんですか?」


そう質問すると、馬鹿笑いを止め、指で顎を触りながら興味深そうに俺を観察する。

ちょっと真面目な顔をされると、余計に美人に見えてしまい、思わず目をそらした。


「君は生徒会で、世界を変えたいのか!?」

「え、ええ、まあ」


目線をふらふらとさせながら、曖昧な返事をする俺。

会長はふむ、と両腕を組んで俺を見下ろす(身長は俺のほうが若干高いんだが、なんか見下ろされている感じがする)と、


「そうか! では生徒会に入ったら、この世界の秘密を教えてやろう!」


そう言い放ち、俺に手でまたなと挨拶すると、笑いながら廊下を歩いていった。


この世界の秘密、だって?

星乃会長は、やはり只者ではないかもしれない。





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