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異世界メモリアル【12周目 第8話】


「おっと、今日は馬に乗ってないのか? 二本足で歩けるとは驚きだ」

「おお、ロトなのか? 馬に乗ってないから、誰かわからなかったぜ」


つまんねー!

こいつらはクラスメイトの男子たちだ。

貴族のイジり方はまったく面白くない。

乗馬のステータスだけが高くなったから、こういうふうに言われるのはわかる。

わかるが、皮肉のレベルが低すぎる。

沙羅さんの爪の垢でも煎じて飲めと思うね。


「あっ、ロトさん……コホン。小さい馬かと思ったら人でしたわー!?」


実羽さんだ。

下手なコントにしか思えないが、周りに合わせようと必死の様子だ。下手すぎてカワイイ。


「下半身は立派な馬かもしれないな!」


星乃さんだ。

うまいことを言ったとドヤドヤの顔をしているが、今どきおじさんでも言わない下ネタだ。


「……」

「下半身って……」


貴族たちはドン引きして去っていった。さもありなん。


「……? 下半身が馬?」


実羽さんはさっぱりわかってない。無理しないでいいんだよ。

さて、そろそろデートに誘ってみるか。


「星乃さん、今度の週末だけど……」

「すまない、その日は用事があって!」


気持ちいいくらい断られた。

まあ、まだ無理だとわかってるので、さほどショックはない。


「実羽さん、今度の週末だけど……」

「やった! あっ、いや、すまない、その日は用事が」


やったって言ったじゃん。

うん、もう大体わかった。実羽さんはおそらく星乃さんに付き合ってるだけ。なにか理由があって下手な芝居をしているのだろう。


「残念だなあ。しょうがないから妹の舞衣とデートしよう」

「ぐっ!? くっ……」


実羽さん……悔しがり過ぎだから……。冗談のつもりだったが、罪悪感すらある。


「まあ、もう少しまともな顔になってからまた誘ってくれ!」


星乃さんの容赦ないセリフ。

用事があるとかじゃなくて、ルックスが原因だって教えてくれてありがとう。

ま、二人とも俺のステータスが上がることを待ち望んでることはよくわかった。


「じゃ、ルックス馬糞は退散しますね」

「ルックス馬糞! ははは!」

「あっ、うう……」


笑いすぎてお腹痛くなってる星乃さんと、未練たらたらの実羽さんを置いて、学校を去った。

朝も放課後も行く場所は同じだ。


「おう兄弟」


もはや冴島さんと一緒にいるのが一番落ち着くね。

いつものように手綱を受け取る。


「じゃ、池に行ってきます」

「頼む」


もはやプール調教は慣れたもの。

そしてこの池で聞こえてくる、演奏も慣れたもの……。


「ん?」


おかしい。

何も聞こえない。

この時間帯は必ず聞こえるはずだ……。


「ちょっと行ってみるか」


ルートを少し変えて、いつも演奏してると思われる建物へ。

この世界の建物はほぼ石でできているが、これは木造だった。いかにもリゾート地の別荘という感じ。

池を見ながらのんびりするためのウッドデッキがある。馬を降りて、そこに行ってみることにした。

ウッドデッキから建物の中を見ると……。


「あっ」


女の子が倒れていた。

バイオリンみたいなものを持ったまま。明らかに異常事態だ。

デッキチェアでガラスを割って……!

なんてことをしなくても、普通にドアが開いていた。

迷うことなく、侵入する。


「大丈夫ですか!?」


駆け寄って声をかける。

反応なし。

息はしている。

額に手を当てると、熱があることがわかった。

この世界に救急車はない。


「よいっしょ」


お姫様抱っこで馬の元に向かう。

部屋着というか、ネグリジェみたいな格好だが……そんなことを言ってる場合ではない。

顔は上品で、肌は白く、全体的に痩せていて、髪は長くて灰色がかった銀色。つまりめちゃくちゃ美少女だが……そんなことを言ってる場合ではない。

彼女を馬に乗せ、冴島さんの元に向かう。


「まだ爪が完全に治ってないのに、ごめんな……」


馬には少し無理をしてもらう。

数分だから、我慢してくれ。


「冴島さん!」

「どうした兄弟。冴島って誰や」


そういや勝手に俺がそう呼んでるだけで、名前知らなかったわ。


「そんなことより、彼女を医者に! 熱があるんです」

「おお!? こりゃパリティビット様のところのお嬢様やないか。わかった、すぐに呼んでくる」


彼女を馬小屋に寝かせる。

飼い葉がたっぷりあるので、寝心地は良いはずだ。


「はあ……はあ……」


熱が高くて辛そうだ。

とりあえず水を飲ませてみようとしたが、そのまま口からこぼれていった。


「人命救助優先だな」


俺は水を含み、彼女に口移しで流し込む。

コップ二杯分くらい飲ませると、少し表情が和らいだ。


「連れてきたで兄弟」


冴島さんがお医者さんを連れてきてくれた。

彼女のことも彼女の病気の事も知っているのだろう、すぐに薬を飲ませた。


「薬を飲まずに夜になっていたら、危なかったかもしれません」


そう言って、お医者さんは、簡単に説明をしてくれた。

このパリティビット家のお嬢様は、生まれつき病弱で療養のために別荘にいるらしい。

ハウスキーパーが一日おきに家事をしにいくが、今日は不在の日だったとのことだ。


「とりあえず後は安静にしていれば大丈夫でしょう」


安心したところで、ふと思う。

これは新しい攻略キャラとの出会いなのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新キャラありだと思います
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