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異世界メモリアル【12周目 第1話】


あんまりだ。

あまりにもあんまりだ。

12周目をスタートして、まともに行動できるだけの運動能力と、まともに生きていける程度に文字が読めて常識がわかるようになったら、もう夏休み。

ハードモードプレイを要求した二人は、いまだに現れない。

もちろん他の女の子も現れない。どんなギャルゲーだよ。

しかも、しかも……。


「アニキさー、まだカレシできないの? ウケるんだけどー」

「なんでウケてんだよ!?」


舞衣が変だった。

今回の舞衣はちゃんと妹である。幼なじみとかじゃなく。年下の。

もちろんサポートキャラである。ステータスを教えてくれる。

顔も体型も、舞衣に間違いない。

だが、キャラが変だった。


「だから、容姿あげようよ容姿。アニキの見た目キモすぎだしー。まじやばいんだけど。チョベリバだよ」

「悪かったな……」


髪はグレー。ちょっと光ってるか?

長くて、なんだかウェーブがかかってて、とにかく派手だ。

ネイルもなんか派手。服装はなんかだらしない。

肌色はすこし日焼けしていて、つけまつげをしているご様子。

おそらくだが……ギャルなんだと思われる。

ギャルゲーのギャルってそのギャルじゃねえんだよ。ギャルゲーにギャルは普通出てこないんだよ。


「イケメンになるならやっぱアイテムがいいっしょ」

「いや、ルックスより体力や基礎学力がいるんじゃ」

「てか、ブサメンすぎて女の子近寄ってこないんじゃね?」

「確かに……」


実羽さんか星乃さんは攻略されることを願っているわけで。そのためにわざわざハードモードにしているんだ。上手に生きていくことを考えている場合ではない。

いまだに登場すらしないのは、容姿が低すぎるからというのはあり得る。

『心得』がないハードモードで容姿を上げる場合、アイテムは必須といってもいい。


「バイトどーする? 死ぬやついっとく?」

「いかねえよ!」

「あはは! だよねー!」


ばしばし肩を叩いてくる舞衣。うーん。


「んじゃいっちゃいますか、舞衣べすとすりー」


ちゃきっと左目をウインクさせつつ、横ダブルピース。

舞衣であることは間違いないが、どうしてこうなったのかわからん。

11周目からこうだったら、ハードモードだからかな、で納得したが。


1.ホスト

2.俳優

3.モデル


ホストってのはイケメンがやるものでは?

俳優も基本的にはそうでは?

モデルなんてもっとそうでは?


「説明を頼む」

「おけまる水産」


なんだそれ……。オッケーという意味らしいことはわかるが。


「1はね、ホストって言って、お姉様方を接客する? お仕事? らしい? うーん?」

「ホストは知ってるけども」


むしろギャルなのによく知らないのかよ。

まぁ中身は舞衣だしな。


「指名を受けたホストの隣で『オレにはとても無理ッス』『さすがでゲス!』『かっけーっす』とか言って盛り上げる仕事らしいおー?」

「噛ませ犬じゃねーか」


道理でブサイクなのにできるはずだぜ。というか俺がブサイクなほど指名されたホストがカッコよく見えるのかもしれん。つらい仕事だなあ。


「ホストとして振る舞うことで容姿が向上するし、バイト代もいいみたい。サイコーって感じじゃん?」

「そうですね!?」


問題点なんて、プライドがずたずたにされることくらいだもんね! 大したことじゃないね!


「2はね、舞台俳優だね。魔法でブサイクにされた悲しい男役だよ」

「えげつない役だな」

「セリフも『この顔で生きるのはつらすぎる』『鏡を見たら死にたくなる』『早くまともな顔になりたい』みたいな感じ」


ひどすぎじゃね?

俺以外にやらせたら人権侵害だからやりたいくらいだね。俺はいいよ、そのうちイケメンになれることがわかってるから。お芝居は芸術も向上するから、ステータス上げの観点からもいいんだよね。


「3はね、ブサイク専門雑誌BUSSの専属モデルだよ。アガる~」

「どストレートだな。なにその雑誌」

「イケメンが着たらカッコイイ服をブサメンが着たらカッコよくないから、ブサメンに似合う服を紹介する雑誌」

「意外とアリだなそれ」


そもそもカッコイイやつは何着てもカッコイイので、ブサメンが着てもカッコイイ服のほうがいいもんな。むしろ、前世でそれがなんで無かったのか不思議になってきたわ。


「3にしようかな」


2をやることになる俳優さんは気の毒だが。


「やば! アニキがモデルなんだけど!」

「舞衣もやったらいいんじゃない。ギャル雑誌」

「マジ!? あげぽよ~」


正直、俺はこういうギャルみたいな女の子はまったく興味がなかった。

好きか嫌いか考えるまでもなく、住む世界が違う存在というか。

だから舞衣がこうなってしまったときは、それはもうショックだった。

一つしか選べない属性には『ヒロインモブ』を選んだので、遠くから義朝たちを眺めることだけが生きる楽しみという感じ。舞衣と違ってよく知ってる彼女たちを。

しかしまあ……。

慣れたというか、わかってきたというか……。


「アニキー! 死なないでガンバー!」


満面の笑みで手をブンブン振って送り出してくれた。死なないでしょ。ちゃんと死なないやつ選んでくれたでしょうに。

しかし、うん。

やはり、舞衣はギャルでも最高に可愛いんだよなー。

ギャルを攻略するギャルゲー、あると思います。

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