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異世界メモリアル【11周目 第21話】


部活動での大活躍。

それはおそらく攻略必須条件ではない。

気持ちを切り替えて、義朝攻略に邁進しよう。


と、ここまではいいのだが、さっぱりイベントが進まない。

大体、三年生の夏休みに入る頃にはなんかあることが多い。

そしてそれは家族関係のことだったりする。

何度かそれとなく聞いてみているのだが……。


「義朝って、両親はどうしてるんだ?」

「さあ? 俺は寮だから、今はどうしてるかさっぱり」


義朝は家族のことを話してくれない。

何か理由があるんだろうか?

情報収集するか。


「星乃さん」

「なんだ!」


いつものように近所の公園に呼び出したつもりなのだが……。


▶きく

 たたかう

 にげる

 たばこをすう


なにやら昔のアドベンチャーゲームみたいな選択肢が登場したぞ。

なんかイベントが始まったっぽいな……。

ある意味安心している。こういう流れ、攻略に向かって進んでいる感じがするからな。

それにしても選択肢の古さよ。ハードモードって、レトロ要素もあるのか?

選ぶのは「きく」しかないだろ。いきなり「たばこをすう」は意味がない。


きく

 ▶スリーサイズ

  けつえきがた

  すきなおとこのタイプ


おい!

選択肢!

聞きたいのは義朝のことだって!

だがこの手のゲームで最初から目当ての選択肢が出ないのは普通か。

ここは無難にスリーサイズを選ぼう。


「星乃さんと義朝のスリーサイズを教えて?」

「比較する気か! ロト、おまえ最低だな!」


違うんです。

確かにスリーサイズを選んだのは俺ですし、義朝のことを聞きたかったのもそのとおりなんですが、これは違うんです。

あるんだよな、こういう選択肢を選ばせておいて思ったんと違うやつ。


▶きく

 たたかう

 にげる

 たばこをすう


こっからしか選べないのかよ~。

もはや「きく」は危ないし、当然「たたかう」も「にげる」もありえない。


▶たばこをすう


「ふ~」

「ロト、おまえ最低だな!」


考えてみれば俺は探偵でもなんでもないし、この世界、酒は多少飲んでもいいけどタバコは普通に駄目だった。


「帰る!」


星乃さんは呆れて帰ってしまった……。

ただ、この妙な難易度のシステムが始まったことはやっぱりなんか意味がありそう。

クリアすれば、前に進みそうな予感がするぞ。


「実羽さん」

「はい」


▶きく

 たたかう

 にげる

 たばこをすう


ここは「たたかう」か……嘘です。


きく

 ▶スリーサイズ

  けつえきがた

  すきなおとこのタイプ


えっと……実羽さんは、ひん……スレンダーなので聞くのは避けたい。

血液型はいまさら聞いたら、なんで知らないのかって怒られる可能性があるな。


 ▶すきなおとこのタイプ


「実羽さんってどんな男がタイプなの?」

「えっ、私の話!?」


本当は義朝の家族のことを聞きたいんですけどね。

それを聞くための事前準備に過ぎない……なんて言ったらどれだけ傷つけるかわからないな。めちゃくちゃ嬉しそうなんですけど。


「そ、そーだなー。や、全然、一生懸命な人かなー」


すごく真面目に答えてくれてる……心苦しい……。


「ちょっとワイルドっていうか、んー、男らしい? 方が好きかなー、なんて」


知ってた……正直知ってた……。

それにしても、茶髪をぐしゃぐしゃさせながら恥じらう実羽さんは可愛いぞ……。


▶きく

 たたかう

 にげる

 たばこをすう


うん。

なんというか、この選択肢があってよかったと今や思ってるね。アイテムとしては持ってないし。


▶たばこをすう


「ふ~」

「わー……かっこいい……」


星乃さんとのリアクションのギャップすごいぞ。

目がハートですよ。マジで。

次は簡単かもよ。ハードモードでも簡単かもしれないですよ。


▶きく

 たたかう

 にげる

 たずねる


選択肢変わったわ―。

やっぱりそういうシステムなんだー。

もちろんたずねるよ。


▶たずねる

 よしとものかぞく

 えっちなけいけん

 おれのすきなところ


……うわー。

たずねてえー。

義朝の家族じゃないことをたずねてえー。

こういうのって選択肢に出ないと発想すらないよなー。

割とこういうとき、選んじゃうタイプなんだよな。一番ヤバそうなやつを。

やっちゃう?

やっちゃうか、えっちなけいけん……選んじゃうか……?

駄目でしょ。

駄目よ~、ダメダメ。

ないから、セーブとロードがないから。

ちゃんとクリアしないとね……うん……。


▶よしとものかぞく


偉いぞ俺。

いつか聞いてみたいですね。えっちなけいけん。


「義朝の家族のこと、知らない?」

「あー、そうそう。実は小耳に挟んだことあって」


よかったですね。正解を選んで。

あー、セーブとロードがあればなぁ……。


「ロトさん? どういう表情?」

「いや、いやいや、なんでも」


どうやら正解を選んだとは思えない顔をしていたようだ。

自信を持って選んだ選択肢だろ!


「小耳に挟んだことって?」

「えっと、今度お墓参りに行くって」

「お墓参り?」


両親じゃなくて、祖父とかの話なのかな。

おじいちゃん子、もしくはおばあちゃん子とか……?

なのに亡くなってしまった……そういうことなのだろうか。


「実家には帰らないのに、お墓参りは毎年してるんだって」

「むむ」


それは普通じゃないかもしれないな。

なにか重要なイベントの予感がします。


「お墓参り……こっそりついていくか」



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