表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

310/364

異世界メモリアル【11周目 第9話】


「おいロト」

「なんだよ」

「溺道を舐めるなよ」

「舐めてねえよ!」

「は? ふざけんなよ」

「ふざけてねえよ!」


俺がふざけてるだと。

それこそふざけるな。

俺は一刻も早く死にたいんだぞ。死にたいのに、死なずにやってんだぞ。


「とにかく駄目だ」

「なんで!? 俺は溺道だけが生きがいなんだよ!」

「その格好じゃ、こっちがやる気しないんだよ!」


クッ……。

やはり見た目か。


「見損なったぜ、義朝。見た目なんかで人を判断するとはな」

「そんなこと言っても駄目だからな。ちゃんとしてない方が悪い」


駄目か……。しょうがないか。

11周目はとにかく状態異常になりやすい。

ヤンキー状態から回復したと思ったらガリ勉になったが、ようやくガリ勉が終わったと思ったらまたも状態異常だ。

部活動しか興味のない俺は、授業と運動部以外何もしてない。結果、芸術が0になった。

そんな俺がなったのが『野暮』です。コモンセンスが無いというか、感性がズレているというか。そういうヤツということらしい。

この状態だとまともな格好が出来ない。

とにかくクソダサい見た目になるため、容姿が-50となる。

それはまぁ、どうせ0だからぶっちゃけどうでもいいと思っていたが。


「その水着でふざけてないって……プッ……くくく」

「クスクス……」


周囲からも失笑を買っている。

俺だってなんでこんな水着なのかわかんないんだっての。

なぜか着ている俺の水着は……いうなれば女児が身につけるようなデザインだった。ワンピースタイプで胴体は全部隠れていて、ひまわりの柄。腰の周りにフリルみたいなのがついている。

確かに、ふざけているようにしか思えないか……仮に男の義朝がこんな格好だったら、ふざけていると思うだろう……。笑っちゃうかもしれない。

ただ、俺は今容姿が0ですからね。笑えないくらいクソダサブサイクなんだよな。やっぱり死にてー!


「はぁ……」


プールから出て、着替える。さすがに制服は変更されないらしく制服のままだが、ひどく趣味の悪い眼鏡を強制装着。やたらでかくて、薄くサングラスっぽくなってて、フレームがデコられている。

ガリ勉のぐるぐる眼鏡もダサかったが、これはわざとらしいからサムい。

やはりこの状態異常を回復させるのが優先か……芸術を向上させるしかないということだ。

とはいえ、どうやって上げたらいいものか。

溺道をやめたら生きている意味すら無いので、部活を変えるわけにもいかない。

部活以外で絵を描くか、音楽をやるか。ダンスという手もある。

……どれも、死にたいと思いながら出来るようなことじゃないぞ……。


「……実羽さんに会いに行くか」


ボランティア部の部屋の前。

正直、開けるのが憂鬱だ。

でも、俺は彼女が人を見た目で判断するような人じゃないと信じるぜ!


「実羽さ~ん」

「あ、ロトさん……うわー」


引いてるわ~。

がっつり引いてるわ~。


「ごめんね、おとなしく不登校やってヤンキーになってから出直すよ」

「待って! さすがにそれを望んでいる人だと思われたくないんだけど!?」

「いや、わかる。わかるよ。いくら状態異常のせいだって、クソダサブサイクを見るのはしんどいよね。せめて実羽さんの好みに近づけて来ないとね」

「これでロトさんをすんなり帰すと、カルマが上がっちゃうんですけど!?」


俺が女の子の親密度を上げるゲームをしているように、彼女はいい人になるゲームをしている。悪い人っぽい行動や言動は、かなりのダメージになるようだ。

とりあえず、このまま帰ってはいけないようなので、ドアを後ろ手に閉めて、彼女の近くの椅子に腰を下ろす。


「ごめんごめん。じゃあ、ボランティア部に助けてもらうようお願いするよ」

「何を?」


どうやって芸術を上げたらいいか……?

いや、違うな。

もう、めんどくさい。


「早く死にたいんだけどどうしたらいい?」

「あー! もー!」


実羽さんは手を上げて叫んだ。


「それ聞いて死に方教えるわけないじゃん! 何聞いてんの!?」


おおう……。

おっしゃるとおりなのだが、口調が……いや、こっちが素な気がする。妙に似合ってるというか。


「なんで死にたいなんて言うの」


実羽さんは、目をすっと細めつつ、髪をばさっとなびかせ、長い脚をすらっと組んだ。似合うなあ……。


「ほら、だって俺ってブサイクだし? ダサいし? 頭も悪いし? 料理も出来ないし?」

「だからと言って死ななくても……」

「義朝の胸を揉むことくらいしか、生きる目標がないし?」

「……」

「ほら、今、実羽さんだって、死んだほうがいいじゃないかと思ったでしょ?」

「だから、私のカルマを上昇させないでよ!?」


別にそういう目的だったわけではないのだが。


「どうせ、俺のことなんて誰も好きになってくれないから」

「……そんなことないよ」

「え? ああ、実羽さんは俺がヤンキーだったらアリなのか」

「べ、別にそういうわけじゃないし!」

「いやそれ、もうそうだって言ってるようなもんなんだよなあ……」


うんうんと頷く俺を、むーっと睨む実羽さん。いいんだよ。認めちゃいなよ。


「……星乃さんに聞いてみたら」

「え? 星乃さんは出会ってないけど」


そうなのだ。今回はなぜか出会っていない。というか、条件もよくわからない。


「出会ってなくても、聞けるじゃん」


へ?

どゆこと?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] あ、ラジオか…。 それはそうと女児用の水着を着る男子高校生とか野暮ってレベルじゃねぇよw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ