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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
赤と青の遊戯

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34.マリアンヌとの再会


 レースをふんだんに使ったドレスを身に着けたマリアンヌは、数人の男性を連れて登場した。

 金の髪にはきらきらと輝く宝石がいくつもつけられ、同じようなデザインのネックレスとともにとても眩く、間違いなく会場の女性の中で一番目立っていた。


「マリアンヌちゃん。今日も美しいね~」

「彼女たちに用事があったので、この後行くつもりでしたよ」


 双子はマリアンヌの姿を見ると、にこにこと笑みを浮かべ彼女のほうへと向かう。

 それに気をよくしたマリアンヌは一瞬笑顔を浮かべたが、私の手元を見て眉を寄せた。


「そうなの? いつもはこういう会では私のところに真っ先に来るのに、なかなか来ないからどうしたのかと心配したのよ」


 お気に入りが来なくて、待ちきれなかったようだ。

 そのお気に入りが渡したであろう水晶がどうしても気になるのか、ちらちらと私の手元、そしてベアティとシリルへと視線を向ける。

 一度目を外そうとして、やっぱり気になると何度も二人を見た。


 ――ああ~、やっぱり二人のことは気になるよね。


 特にベアティは一番のお気に入りだったため、マリアンヌがすぐに惹かれる可能性はあると思っていた。

 案の定、ベアティを見た瞬間頬を染め、口元を綻ばせたのが見えた。

 そして、シリルの髪にも一度視線を留め、それから全体に視線を動かし小さく頷いたので、シリルも目を付けられたのだとわかった。


「ごめんね~。先日彼らに悪いことをしたからお詫びを渡してたんだ~」

「そう。水をかけちゃったんだよね。だから、お詫びの品を渡していた。彼女はランドール・エレナ嬢だよ。エレナ嬢、彼女は知っていると思うけど、マリアンヌ・スタレットだよ」

「ええ。知っていますわ。随分久しぶりですが、お変わりないのですぐにわかったわ。あれから大丈夫だったかしら?」


 少し弾んだ声でマリアンヌはそう告げると、すっかり機嫌をよくして私たちのほうへと身体を向けた。

 私は笑みを張り付けながら、マリアンヌを観察する。

 二度目だからか、マリアンヌの感情が手に取るようにわかる。


「お久しぶりです。なかなか体調が回復しなくて、当時お誘いいただいたのにお断りすることになって申し訳ありませんでした。領地でゆっくり療養したおかげで、今はとても元気に過ごせるようになりました。スタレット様はさらにお綺麗になられてびっくりいたしました」


 関わるつもりはないが、気分よくいてもらうほうが攻撃性も減るだろうとよいしょもしておく。

 無駄に対立して、自由に動けなくなるほうが困る。


「あと、ミイルズとアベラルドに水をかけられたみたいだけどそちらも大丈夫だったかしら? 彼らは悪戯好きだから大変な目に遭ったでしょう?」


 水晶を持っているのが私だということもあり、被害に遭ったのが私だと思っているようだ。

 ここでベアティたちだと話せば、マリアンヌに二人に話す機会を与えそうだ。双子も言及しなかったこともあり、私もそのまま濁した。


「そこまで被害はありませんでしたから。むしろ、このような高価な物をいただいてしまってどうしようかと」

「お詫びならもらっておいたらいいのじゃないかしら? 私もそれより大きい物をどうしてもというからいただいているわ」


 自分のほう大きい物をもらっていると、優位であることを伝えないと気が済まないらしい。

 双子の物をあたかも自分の物のように言えるのか不思議だが、これがマリアンヌだ。

 良くも悪くも勢いがあり周囲も習う人が多いので、彼女の言うことは正しいのだと思わせるのに長けていた。


 何も言う気もなく小さく頷くと、そこでマリアンヌが再度ベアティとシリルに視線を向けた。

 死に戻り前のお気に入りの二人が気になって仕方がないようだ。


 ――ここで紹介しないわけにはいかないわよね。


 私は小さく息をつき、二人を紹介した。


「黒髪がベアティで、白銀の髪がシリルです。二人とも私の従者をしてくれていますが、学園にも一緒に入学する予定です」

「ベアティとシリルね。私はマリアンヌよ。よろしく」

「エレナ様以外の女性と親しくする気はないので、すみません」

「僕も。ごめんなさい」


 手を差し出したマリアンヌを無視して、二人はぺこっと頭を下げた。


「なっ!」

「すみません。二人は貴族ではありませんので、マリアンヌ様のような高貴な方とどう接すればいいのかわからないんです。平民が貴族に気安くするのは無礼になることもあると教えてきたので、許していただけたら」


 正直、すぱっと言い切ってくれた二人の姿い胸がすっとした。

 苦笑しながら二人が平民であることを告げると、マリアンヌは一瞬険しくなった顔を隠すように笑顔を浮かべた。


「そう。平民だからね。私は気にしないから、二人も気楽にしてちょうだい。あら、殿下がお見えになったようだからそろそろ行かないと。王都は久しぶりでしょう? 楽しんでね」

「エレナちゃんたち、またね~」

「また」


 結局受け取ってしまった水晶を手に小さく会釈をしながら、私はマリアンヌと双子たちを見送った。



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