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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
黒と獣人奴隷

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失敗 sideマリアンヌ


 受け取った手紙を読み終えると、マリアンヌ・スタレットはくしゃくしゃと握り腹立ちまぎれにぽいっと床に捨てた。

 せっかくこちらから誘ってやったのにド田舎のランドール子爵家令嬢ごときに断られたと、ひどく気分を害していた。


「生意気ね! ――ああ、そのリボンの色は気に食わないからやめて」

「お嬢様がお選びになったもので楽しみにしていらっしゃったと思うのですが、今から変更なさいますか?」

「つべこべ言わず、私の言う通りにしていたらいいの」

「かしこまりました」


 午後からの同じ派閥のご令嬢たちとのお茶会のため、新しく買ってもらったばかりのドレスを着て見せびらかすのを楽しみにしていた。

 似合うと思って一緒に購入したリボンだが、今日はやけに縁取る水色が腹立たしく映り変えさせ、マリアンヌはこんな気持ちにさせたエレナに苛立ちを募らせた。

 用意が整い、メイドと入れ替わるように従者のステファンが部屋に入ってくる。


「お嬢様、とても可愛くて似合っておいでです。お茶会の主役はお嬢様ですね」

「そう」


 気分は優れないままぶすっと返すと、ステファンが眉を上げた。


「どうされたのですか?」

「……そこにあるものを読んでみたらわかると思うわ」


 マリアンヌが視線を先ほど投げ捨てた手紙に向けると、ステファンはマリアンヌが捨てた手紙を拾い、丁寧に広げ目を通した。


「なるほど。件のご令嬢は欠席と。体調が優れないと書かれていますね」

「あれから半年は経っているのよ。軟弱だという話は聞いたことはないわ」

「王都まで一週間かかりますし、前回のことで何かしら心身に影響があったのかもしれません。体調が理由であれば、さすがに無理強いすることはできないでしょう」


 ぷりぷりと怒っているそばで冷静に返され、マリアンヌはじろりとステファンを睨んだ。


「そもそも、あなたがあの子のスキルがいいって言ったんじゃない!」

「回復スキルは見たことがないレベルだったためお勧めはしましたが、こちらとしてもまさか失敗されるとは思いませんでしたので」


 マリアンヌはそう言われ、ぷくぅと頬を膨らませた。

 ステファンの能力が自分のスキルには必要だということは、両親から説明されずとも七歳のマリアンヌは承知していた。


 教会の洗礼を受けなくても侯爵家は内々にスキルを知ることができるようになったのは、鑑定スキル持ちのステファンのおかげだ。

 マリアンヌが強奪スキル持ちであることも、ステファンの鑑定スキルで知ることができた。


 そのため前回の茶会ではいてもおかしくないように会場で仕事をさせ、自分に見合うスキル持ちを探させていた。

 だけどこんなことになるなんて、と失敗の痛手に半年経った今でも思い出しては憤っていた。


「私は悪くないもの。あの子がおかしいの」

「そうですね。惜しいといえば惜しいですが、彼女とは縁がなかったと思うしかありません。もともと他人のスキルの全容はわからず、レベルももちろんですが付属効果も人によって違いますので。私のスキルも万能ではないので、見るだけでは細かな情報はわかりませんから」

「わかっているわ」


 スキルの詳細を知るためには、触れる必要があるとステファンが言っていた。

 それでも触れてもわからないことは多く、見るよりは少し理解できるといったものだと説明を受けている。

 スキルが見るだけでわかること自体がすごいことだというのは、聞いて知っている。


「そもそもあの場では、候補の一人を見つけたとのご報告だったのですが。強奪スキルは三回の行使のみ。そのため慎重に決められるものだと思っておりましたから」

「だって、ちやほやされていたあの子から奪ったら気持ちがいいと思ったんだもの」


 田舎から出てきたくせに、自分より注目を浴びているエレナが鬱陶しくてしょうがなかった。

 その上、かなり上等なスキル持ち。マリアンヌにこそ相応しい、回復スキルという周囲にありがたがられ敬われるものを奪うのに迷いはなかった。


「そうですか。一回が無駄になってしまったのであと二回。次は慎重に行われなければなりません」


 言われるまでもなく、スキル表示のところには残り二回と書かれてある。

 教会で洗礼を受ける十歳までに、なんとしてでも自分に相応しいスキルを見つける必要があった。


「わかっているわ。次はまず手堅いのをお願い」

「はい。相手のスキルレベルの上限に影響するようなことはないはずですが、もしかするとあまりにレベルが高すぎたからということがあるのかもしれません。次はそこそこの高ランクでお嬢様に見合うものを見つけます」


 高位貴族であるほど、スキルを得た時に開示する風潮がある。

 やましいことがないこと、力の誇示のためなど理由は様々だが、そのため侯爵家の子女であるマリアンヌもスキルありと判定されれば開示することが決まっていた。


 執事長の息子であるステファンが鑑定スキル持ちとわかってから、侯爵家ではあらゆる可能性を考慮し、教会の洗礼よりも前に子供たちのスキルをステファンに鑑定させることになった。

 持っている者からしたら欲しいスキルを手に入れられる美味しいスキルだが、ほかの者からしたら他人のスキルを強引に奪う忌まわしいものだ。


 だから、教会の洗礼を受ける前に強奪スキルを使い切って三つスキルを獲得し、そのうちの一番いいスキルを発表する方針になっていた。

 だが、その一つはエレナのせいでなくなってしまった。


「つくづく、気に食わない子ね」


 可愛いとちやほやされていたこと、いいスキルを持っていること。

 そして、せっかく誘ったのに断ってくる生意気さ。


 何より、前回発動の失敗のせいかその場で倒れたマリアンヌは、しばらく頭痛でまともに動けなくなった。

 そのため、その後の王家が催す第三王子が参加する茶会に出席できなかったりと散々だった。


「まあ、スキルを奪えなかったけど、もしその失敗の影響で今も体調を崩しているのならいい気味だわ」


 せいぜい田舎で療養して、周囲から取り残されたらいい。

 その間にいいスキルをゲットして、交流関係を含め自分の取り巻く環境を完璧に整えるつもりだ。

 次に出会った時には圧倒的な差を見せつけてやるのだと、マリアンヌはにんまりとほくそ笑んだ。




黒と獣人奴隷はここまでです。

お付き合い、ブクマ、評価、リアクション、とっても嬉しいです!!

毎日励みをいただいてます。

誤字報告もありがとうございます!

次章は白銀と元婚約者

また一人増えます♪

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