10日目(17)―互いの想い
スクリーンに写された景色に、二人で息を呑む。その瞬間、ざわついていた周囲が、ぴたりと静かになる。
テレビよりもずっとずっと大きい画面に映される物語は、私の中にどんどん入り込んでいく。
しばらく映画を見ていると、ミーナの頭が、すとんと肩に乗る。もう、ミーナってば、すぐ寝ちゃうんだから。
スクリーンの光に照らされた無防備な寝顔は、すっごくかわいくて……って、そんなことをしようと思ったわけじゃない。
顔が見えるくらい照らされてて、音だって割りと大きく響いてるのに、それで寝れるのは、ちょっと凄いかも、なんてちょっと呆れる。
「ミーナ、起きて」
一緒に映画見に行こうって、デートすることを決めたときに言ったのに。
軽く肩を叩いて、それでもミーナは起きてくれない。
ミーナが、絶対起きる方法は、……わかってるけど、こんなとこでしていいのかってドキドキする。喉がカラカラになって、ジュースを飲む。
でも、周りは暗いし、他の人は映画のほうに目を取られてるし、……気づかれない、よね。
……ちゅっ。
唇にするのは恥ずかしいから、ほっぺにしたけど、それでも、熱くなってしまうほっぺは、どうやっても収まらない。
そのまま頬を抑えて固まってる私に、ミーナの頭がもぞもぞと動いて。
急に、背中に腕の感触を覚える。近づいた顔は、唇をすぼませてるのが見えて。
自制心よりも、反射と、恋心が勝る。重なった唇は、いつもと同じで甘い。
「今日のカスミ、ちょっとすっぱい」
耳元で囁かれた声に、ようやく周りの景色に気づける。
「もう、ミーナってば……、ここ周り人いるから……っ」
「カスミからしてきたんでしょ?」
耳元で、小声で言いあう。吐息混じりの声は、耳に当たってくすぐったい。
「だって、ミーナが寝てるから……っ」
「だからって、キスすることないじゃん、……その気に、なっちゃうし」
「せっかくデートして一緒に映画見てるんだから、二人で見てたいんだもん……」
「もう……、かわいいな、カスミは」
そんな簡単に、かわいいこと言うなんてずるい。ミーナのほうが、ずっとかわいいのに。
せっかく、二人で映画観てたはずなのに、ミーナのことしか、見えなくなっちゃう。こういうことしちゃうと、もう、周りなんて見えなくなっちゃうとこは、ミーナも一緒みたいで。
もう一回だけなら、いいかな。ミーナの体を軽く抱いて、部屋でしてるときみたいに。
薄明りに見えたミーナの顔は、もう目を閉じて、唇を軽くすぼませていて。
こんなのを、我慢できるわけない。だって、ミーナのこと、好きだから。
優しく重ねた一瞬だけで、心が、とろとろに溶けていく。どちらからともなく離した唇の紙一重の隙間に、そっと囁かれる。
「映画とか、見れなくなっちゃったね」
「そう、だね……」
お互いのことしか見れなくなって、結局こうやって深く繋がってしまう。
でも、それでもいいかなって思ってしまう。……それだけきっと、お互いが、お互いのこと、想いあってるってことだから。
こいつらいっつもいちゃいちゃしてんな




