10日目(13)―感じる心
末広がりで縁起のよさそうな話数。
そんな風に色々見て回っていると、小物雑貨が並んでる店が気になった。猫をかたどったグッズが、いっぱい並んでたから。
「ねえ、あそこ、気になるんだけど、見てみない?」
「いいね、そうしよ?」
繋いだ手をそのままに、店の中に入る。
「いろんなの、あるんだね!」
「うん、何か、気になってるのある?」
「うーん……」
繋いでた手を離すと、ミーナがいろんなものを手に取っては戻してく。
「あ、これ、けっこう好きかも」
ミーナが手に取ってたのは、鈴と、猫の顔をかたどったアクセサリーが付いてるストラップ。
「かわいいね、私も、一緒の買おっかな」
「え、いいの?」
「いいよ、だって、かわいいし、お揃いにできるでしょ?」
「えへへ、そっか」
『恋人』とお揃いのものっていう言葉だけで、胸の奥がどうにかなってしまいそう。私とミーナの心が、一つになっていくみたいで。
一緒の時間を過ごして、一緒のものを身に着けて、そしたらきっと、もっともっと気持ちが繋がっていくって思う。
「じゃあ、これ買お?」
「あ、ちょっと、待っててくれる?」
「なぁに?」
ふと、そばに並んでたものを見て、ちょっとしたいたずら心が湧く。猫だったときのミーナが、よくちょっかいを掛けてきたみたいな。
「これ、ちょっと着けていい?」
「え、い、いいけど……」
ミーナが猫のときの毛色に一番近かった猫耳のついたカチューシャを、ミーナの頭につける。その感覚でドキドキしたせいなのか、ミーナの出す声が甘くなってるような。
「な、何、これ……っ」
「かわいいよ、なんか、昔のミーナのこと、思い出しちゃう」
鏡見てみる?ってそばにあった鏡のとこにミーナを連れて行って、そこで自分の姿を見たミーナは、顔を真っ赤にして私のほうを向く。
「もう、何してるのっ」
「ごめんって……」
急に、ミーナに抱きつかれる、転びそうになって、慌てたように引き寄せられて。
「猫のほうのわたしのほうが、よかった?」
「ち、違、……そうじゃなくて」
拗ねたような、甘い声が耳元で聞こえる。その声に、私はいつも逆らえなくなる。
「じゃあ、どういう事?」
「だって、……好きになったのは、ミーナだもん、どっちが好きなんて、決められないよ」
「えー?そんなんじゃ、わかんないよ」
「どっちのミーナも大好き、……これじゃ、だめ?」
耳元で囁きあう言葉。ミーナの秘密は、ずっと二人だけのものにしてたいから。店の中でこんなことやって、今更かもしれないけど。
「ううん、……だめじゃないよ」
抱かれた腕が離れて、顔を私から離す一瞬、ほっぺにキスされる。
意味なんて、私の頭の中でとっくにわかってる。
「これ、買うんじゃなかったの?」
「そうだね、じゃあレジ行こっか」
指がまた、自然とミーナと絡まる。手を繋ぐのも、キスするのも、二人の中では自然なことで。
私とミーナは、それだけ、深い関係で結ばれてる。それだけで、何度も胸が高鳴る。
映画のチケットとおんなじように、二人でそれぞれで買って、店を出たとこでスマホのケースにつける。
自然と見せ合って、緩み切った笑顔が零れるのも一緒で。
それだけで、なぜか『好き』って気持ちを確かめ合えたような気がした。
さて、あと2週間でこれは完結できるんだろうか




