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私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


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10日目(11)―満ちる幸せ

猫の日。

このネタも去年のこの辺で浮かんだはず。

 さすがに周りが見えるようになって、今の状況に、ほっぺが燃えそうなくらい熱くなる。

 そりゃ、ミーナのことは大好きだし、こうしてるとほっとするけど、二人の関係を、見せびらかしているような気がして。

 こんだけ距離が近いと、電車が揺れる度に頭と頭が軽く当たって、……顔、近い、キスしたい、なんてまたときめいて。

 この関係は、二人だけの秘密のはずなのに、体は、いつだってミーナの温もりを求めてしまう。

 そんな心を追い払って、ゆっくりと抱いてた腕を外す。でも、顔は、お互いを見合わせたまま。


「こうしてると、ドキドキしちゃうね」

「うん、本当だね」

 

 自然と離れた体。でも、心は、ずっと繋がったまま。

 ちょっとずつ人の数は増えていって、そろそろ目的の駅に着くって頃には、立ってる人も多くなって。


「次で降りるからね?」

「わかったよ」


 荷物をちゃんと抱えて、何もなくなってないかを確認する、ミーナのも、とくに何もなってはいないようだ。

 ドアが開く音がして、一緒にたくさんの人が降りていく。

 それに紛れて電車を降りて、リュックを背負いなおすために人気の少ない場所に一旦移る。

 急に外に出て、また冷えた空気が頬を撫でる。


「どうだった?」

「すっごく早いんだね、ひゅーんって街が流れてったよ」

「そうじゃなくて……」


 人としての日常に慣れていけてるのは、私のことじゃないけど、ちょっと嬉しいかな。

 でも、そうじゃなくて、……言葉には言い表せないけど、ちょっともやもやする。


「ちょっと楽しかったな、きっと、……カスミと一緒だからかな」

「そっか、それならよかった」


 さらりとかわいい事言われて、また、惚れ直しそうになる。それ以上、言葉になんてできない。


「もう、行っても大丈夫?」

「うん、平気だよ」


 ほとんど人もいなくなった階段を歩く。自然とまた手を繋いで。

 改札を出るときは仕方なく手を離して、それから、磁石でも付いてるんじゃないかってくらいあっという間に繋ぎ直して、私のポケットに突っ込む。

 二人でデートするってことに、ようやく現実味が帯びてきたみたいに、繋いだ手が、いつのまにかきつくなっていく。

 人通りが多いとこ歩くから、はぐれないように、なんて頭の中で勝手に言い訳を組み立てていて、……こんなの、今更なのに、って不思議に思う。


「カスミ、手、痛いよ……」

「うわ、ご、ごめんね?」


 慌てて繋いだ手を緩くして、どうすればいいのか迷う。


「大丈夫だよ、絶対、離れないから」

「……うんっ」


 私の言ってないはずの言い訳を受け止めて、優しく私ごと抱き包んでくれるみたいに。

 自然と見つめ合って、零れる笑顔に、心がどんどん癒されてく。

 人波を辿って、今日行く予定のショッピングモールまでの十分くらいの時間。

 こうしてただ二人で歩いてるだけで、幸せで満たされていった。

デート回の日に目的地に着くまでに11話かかる人がいるらしい

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