10日目(6)―重なる温もり
投稿が遅れて申し訳ないのです。
「最初、どこ行く?」
服を選ぶのに時間をかけすぎちゃったから、どうしようかちょっと悩む。
「わたしがお散歩してたとこ、見てくんじゃなかったの?」
「……ああ、そうだったね」
昨日のこと、ちゃんと覚えてくれてる。それだけ、私とデートするの、楽しみだったのかな。
「ねえ、手ぇ繋ご?」
「うん、いいよ?」
自然に恋人つなぎになった手を、私のジャケットのポケットに入れる。
こうしたら、あったかいまま、お互いの温もりを感じる。
「じゃあ、行くよ?」
そう言うミーナの手に引っ張られるようにして、ミーナが、猫だったときおさんぽしてた道を辿る。
他の家の土地だったりで、全部同じってわけじゃないみたいだけど、その都度教えてくれるし、そんな風に生きてたミーナのことも、見てた景色も、すっごく気になってしまって、回りをきょろきょろと見回す。
「でも、やっぱり見え方は全然違うや」
「そりゃそうだよ、もうミーナは人になったんだもん」
他の人が聞いたら、意味も分かんないことを言ってるようだけど、二人の間でならちゃんと繋がる。私たちだけの秘密が、そうさせてくれる。
不意に、ミーナの足が止まる。前を見ると、見覚えのある場所で。
あの日、――猫だったミーナの亡骸を見つけたときのこと、今になったらずっと昔のことみたいで、でもまだ二週間も経ってない。あの時についた心の傷は、人になったときのミーナに癒されたはずだけど、……、まだ、消えたわけじゃないみたいで。
「ミーナぁ……っ」
突然沸いた気持ちに、繋いだ手も離してミーナに抱きつく。
「もう……、カスミ?」
壁際に引き寄せられて、そのままあやされるように背中を撫でられる。
「わたしはずっと、カスミのそばにいるよ?」
「本当?……」
「うん、本当だよ?」
何かの糸が切れて、熱くなった目元から涙が溢れ出す。
「ごめんね?嫌な事、思い出させちゃったね」
「ミーナは、悪くないよぉ……っ」
ごまかしきれないくらいに涙声になった私のこと、優しく抱いて包んでくれる。
「でも、ちょっと嬉しいな、私がいなくなったの、それだけ悲しかったんだなって」
「もう、変なこと言わないでっ……」
だって、そんなこと言われたら。胸の中を熱くするくらい気持ちが溢れそうだから。
「あ、ごめん、わたしつい……」
こんな気持ちを見つけたこと、そんな風に否定しないでよ。頭で考えるより先に、唇でミーナの唇を塞ぐ。
「んんっ……カスミ?」
「すっごく、悲しかったし、寂しかったんだからぁ……」
「ごめんね?だからもう……」
「ずっと、一緒にいてくれなきゃ、許してあげない」
拗ねたようないじけたような口調に、自分でも顔が熱くなって。
「わかった、……じゃあ、約束するね、ずっとそばにいるって」
ミーナが辺りを見回して、それから意を決したみたいに目を閉じる。
こういう時も、考えることは一緒で。
重なった唇の温もりが、どんな言葉よりもずっと深く永遠を誓い合った。
デートしてるのにいちゃいちゃしないわけがなかったんだ(謎の絶望)




