10日目(4)―一緒の時間
ミーナが着替えてるのが、肌に服の擦れる音でわかる。それをわざと見ないようにしてるのは、ミーナがかわいくなっていくとこなんて見たら、デートすることも忘れちゃうくらい、いちゃいちゃしちゃいそうだから。
私も、早く着替えなきゃ。ニットの下に着るシャツとタイツを、クローゼットから出す。
上半身のほうから寝間着を脱いで、ミーナが選んでくれた服に着替える。
それだけで、心臓の奥がきゅうってなる。私の為に選んでくれたものだから。
「ねえ、もう着替え終わった?」
「もうちょっと、待っててね」
そんな感傷に浸ってたせいか、ミーナのほうが先に着替えを済ませてたことに、その言葉で気づかされる。
横目でちらりとミーナのほうを見ると、こっちに背中を向けて、私のほうを見ないようにしてた。私がミーナのこと、そうやって見ないようにしてたみたいに。
一瞬見えた服は、当然と言えばそうだけど、私が選んだもので、また、胸の奥がキュンと鳴ってしまう。
そんな気持ちを忘れようと、素早く着替えを済ませて。
「ミーナ、着替え終わったよ?」
「じゃあ、見ていい?」
「うん、いいよ?」
見ちゃいけないなんて言った覚えもないのに、見ないようにしてた訳なんてもう分かってる。私も、きっとおんなじ理由だから。
「今日のカスミ……いつもより、ずっときれいだね」
頬を赤らめて、俯いたミーナの言葉。
「ありがと。……でも、ミーナだって、すっごくかわいいよ?」
「もう、恥ずかしいよぉ……っ」
一番素敵になったとこ、完成形で見たい。そう思ったのも、歯が浮くような台詞で、自分も赤くなっちゃうとこも一緒で。
「でも、嬉しいな、そんなこと言ってもらえて」
重なる視線に惹かれていって、近づいてく二人の距離。
「だって、ずっと一緒にいるんだもん、……ミーナに似合う服だってわかるよ」
「それじゃあ、わたしも一緒だね、カスミのこと、一番近くで見てたから」
自然と重なった、唇と唇。人と人としてミーナと生きてきたのは、まだちょっとしか経ってないけど、猫だったときから数えたら、もう1年も一緒にいるんだ。こういう雰囲気も、きっと自然にわかる。まだ、恋人って関係になってからちょっとしか経ってないのに。
「もうそろそろ、行かなきゃね」
「うん、そうだね」
こうやって二人きりで甘えてるのもいいけど、二人でデートするっていう言葉の響きだけで甘いものは、どうしようもなく胸の奥を高鳴らせていて。
これだけで、もう幸せかも。まだ外に一歩も出ていないっていうのに。もうデートしてる気分になっている私がいた。
もうそろそろ、行か(せ)なきゃね




