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私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


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10日目(2)―溢れる期待

新年、あーけまーしたー!

「んねぇ、もうちょっとだけ、一緒にいよ?」

 

 無意識に、漏れた言葉。こんなふんわりと甘い時間、手放したくなくて。


「でも、それじゃあデートできないよ?」

「うぅ、そっか……、そうだよねぇ……」


 でも、それは、二人でデートする時間を手放してるのと一緒で。

 想像するだけで心が甘く跳ねるのに、本当にすることになったら、どうなるんだろう。

 どうしよう、考えるだけで、楽しみすぎて、興奮してしまう。

 

「じゃあ、……もう一回だけ、キスさせて?」

「うん、いいよ……っ」

 

 ドキドキが高まりすぎて、溢れてしまった衝動。ミーナは、優しく受け入れてくれる。

 ……やっぱり、手放したくないよ。こんなあったかい気持ちも体温も。

 重ねるだけで抑えるので、私の心はあっという間に限界になる。


「ちゅ、……じゃあ、ご飯食べよ?」

「う、うん……」

 

 耳元にかかる囁く吐息に、金縛りにでもあったみたいに動けなくなる。

 ずるいよ、だって、こんなにあったかくて、大好きになっちゃってるんだから。

 その温もりに、抵抗なんてできない。起き上がるミーナの体に、私も起こされる。


「早くご飯食べて、デートしよ?楽しみだね」

「そうだねぇ……っ」


 もう一回、今度はミーナから。

 重ねられたくちづけは、初めて重ねたときからそうだったように、甘くて愛しい、

 私の手を引っ張る手に、リードを引かれた犬みたいに引きずられる。


「ほら、カスミ、行くよ?」

「う、うんっ……」


 これじゃ、まるでミーナがこの姿になる前の反対みたい。

 それでも、ミーナはもともと猫だったし、自由気ままだったのに。

 ああ、私はもう、ミーナのとりこにされてるんだ。

 でも、それでもいいかな。……だって、ミーナと一緒にいる時間は、幸せだから。

 

「おはよう、二人とも、休みなのに早いわねぇ」

「「うん、おはよう」」


 平日と同じ時間に目覚ましかけたのも、デートの時間、ちょっとでも長くしたいから。

 そんなことも、二人だけの秘密。自然と、笑みが零れそうになるのを、慌ててこらえる。


「「じゃあ、いただきますっ」」


 用意されてたご飯を、隣の席にいるミーナと一緒に食べる。

 二人で一緒に食べるご飯は、いつだっておいしい。早くご飯食べよ、ってミーナの言葉に触発されたわけじゃないけど、自然と橋が進む。

 

「ごちそうさま、おいしかったよ」

「あら、最近ご飯食べるの早くなったじゃない?」

「うーん、そうかなぁ……っ」


 お母さんにも、ちょっと気づかれてる。でもきっと、理由までは知らない。

 きっと、ミーナは、理由も知ってるんだろうな、私がそうなってることの。だって、こうなったのは、私がミーナに恋して、そして、『恋人』という関係で結ばれたから。

 そんな事考えてたら、ミーナの声がかかる。


「へへ、わたしも、食べ終わったよ?」

「そっか、……じゃあ、顔洗わなきゃね」


 二人でデートなんて、どうなるのかな。

 恋人同士でデートするの、これが初めてってわけじゃないのに。

 目をキラキラさせてるミーナと同じくらい、私もワクワクしてるかもしれない。

10日目はデート回と言ったくせにまだ外に出てもいないぞどういうことだよ

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