9日目(16)―伝える想い
しばらく、そうやって唇と唇で熱を交わし合ってると、すぐ、体の熱さが限界になる。
「んっ……、もう、熱いよ……」
「そうだねぇ……」
まともに顔を見れないくらい、顔が火照ってる。俯いてるミーナの顔も、赤くなってるのがわかる。
「お風呂、入っちゃおっか」
「そうだね……っ」
お互いの顔を見れないまま、服を上から脱いでいく。畳んだ寝間着と持ってきた下着を棚に置いておいて、それ以外のものを洗濯かごに入れる。
ミーナが服を脱ぐ衣擦れの音すら、私の中で危ういバランスをとっている気持ちを揺るがす。きっと、そんな姿なんて見たら、……この感情は、抑えられなくなってしまう。
「カスミ、もう服脱いだ?」
「う、うん……っ」
ミーナの方は、まだ見れない。そのまま、ミーナ気配を感じたまま、お風呂場に入る。
でも、それがいけなかった。気が付いたら、隣にいたらしくて、戸の前でぶつかってしまう。
「うわっ、ご、ごめん……」
「ん、うん、いいよ……?」
思わずミーナのほう向くと、……なんだろう、こういう気持ち。
ミーナの、一糸まとわぬ姿なんて、何回も見てるはずなのに。どうして、今、私はこんなにも心を乱しているんだろう。
ミーナのこと、好きになったのも、『恋人』という関係になったのも、もう今更だし。
「カスミ?ぼうっとしてたら、風邪引いちゃうよ?」
不思議そうに訊いてくる、ミーナの声。お風呂に入りかけた姿は、なんというか、えっちな気分になる。
心の奥がぞわぞわして、でも、その気持ちが何なのかは、まだわからない。
「う、うん、……今入るから」
湯船のお湯を体に掛けて、ミーナの隣に座る。
まだ、ミーナのこと、まともに見れないのは変わらない。
なんでだろう、……キスしたら、分かるかな。
ミーナの腕を、軽く引っ張る。私を見つめる目線に、また、胸を射抜かれて。
「ん、……どうしたの?」
胸のドキドキが、どうしようもないくらいに、ミーナの熱を求めてしまう。
「ミーナぁ……、キスしたくなっちゃった……」
「もう……、しょうがないなぁ、カスミは」
その声が、ちょっと甘い。
顔が、一瞬で近づく。それと一緒に、私の鼓動も、どんどん激しくなる。
「み、ミーナ?ちょっと待って……」
「何で?……カスミがしたいって言ったんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
初めてミーナと唇を重ねたときみたいに、心の準備が全然できてない。
「それに、……あんなかわいい声で言われたら、わたしも、我慢できないよ……っ」
真っ赤になった顔は、その言葉が本当だって証明してるみたい。
ああ、もう、かわいい、好き。
「んっ……もう、いいよ?」
私からも、顔を寄せる。目を閉じて、そこからはもう体が覚えてる。
……ちゅっ。
重ねるだけの優しいくちづけに、体が蕩けていきそうになる。
「なんか、初めてキスしたときのこと、思いだしちゃった」
「そ、そうかなぁ……」
ドキドキしすぎて、そんなこと、考える余裕もなかった。
「あのときさ、キスって、『恋人』がすることだって言ってたでしょ?」
「うん、そうだね……」
でも、そのときの事は、今でも覚えてる。まだ、二週間も経ってないし、それに、私が初めて好きな人とキスした時だから。
「その時ね、わたし、『好き』っていうのも、『恋』っていうのも、全然知らなかったの」
「そう、なんだ……」
「でも、カスミとはじめてキスしたとき、胸の中がドキドキして、何かが溢れちゃって、わけがわかんなくなっちゃったの」
「うん、私も、一緒……っ」
ファーストキスの感触は、まだ頭の中でそのときを思い浮かべられるくらい忘れられない。
そのときが、きっと、私がミーナに恋をした最初のとき。
「でも、それが、『好き』ってことだったんだね……『恋人』になりたいくらいに」
「うん、そうかも……、私も、同じ気持ちだったもん……っ」
ちゅっちゅっ、って、啄むように唇を重ね合う。
何だ、私もミーナも、最初から、持ってたのは、おんなじ『好き』だったんだ。
「好きだよ、カスミぃ……っ」
「ミーナ……、私も、好き……っ」
言葉じゃ全然伝えきれなくて、優しいくちづけを交わし合う。
やっぱり、どうしようもないくらい、私はミーナに恋してる。
うちの子の1日を書くだけで2か月近く費やしてる書き手がいるらしい




