表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/100

9日目(13)―秘密の意味

ついに70話なのです!

 二人きりの部屋に戻ると、なんだか安心する。

 遠慮なく『恋人同士』でいられるし、私しか知らないミーナのことが、いっぱい増えるから。


「ねえ、カスミ?」


 もうちょっと甘えてたくて、二人でベッドに座ると、突然ミーナが真剣な目で私を見つめる。


「な、……何?」

「なんで、『デート』って言わなかったの?」


 普段のミーナからは考えられないくらい、険のある声。その声に突き刺された私は、一瞬でうろたえてしまう。


「え……、だって、私とミーナが『恋人』だっていうの、秘密にしよって……」

「じゃあさ、なんで、そんなことするの?」


 それを話すことは、この、脆い関係を終わらせてしまうかもしれない。そんな不安が、私の中に渦巻いて、何も言えなくなる。

 でも、ちゃんと言わなきゃ。私とミーナのつながりのこと。


「あのね?ミーナ……」

「何?」


 その言葉すら、棘があって、私の心に突き刺さる。


「私とミーナが、……女同士が『恋人』になるのって、普通じゃないことなの」


 その言葉を吐き出すのに、何度も躊躇って、でも、これは、ちゃんと言わなきゃいけないことだから。


「……え?」

「だって、普通は男と女ですることでしょ?……ミーナだって、猫のときは、男の子と子供作ろうとしてたでしょ?」

「そうだけど……、でも、わたし、カスミの事好きだし、我慢できないもん……っ」


 さっきまで鋭かった目は、いつの間にか涙をこらえてるのに必死になっていて。私に、かわいい、なんて場違いなことを思わせてしまう。


「私も好きだよ、ミーナのこと、……ずっと、『恋人』として生きてたいくらい」


 ぎゅっと、ミーナのことを抱きしめる。それをただ、ミーナは受け止めるだけ。


「でも、どうしても、秘密にしなきゃいけないの、ごめんね?……」


 何を続けようとしたんだっけ、目元に感じる熱さと、溢れそうになる涙をこらえようとして、これ以上何も言えない。


「わたしも、ごめんね?カスミのこと、疑って……っ」


 涙声になったミーナのこと、優しく抱きとめる。ミーナが、私にそうしてくれるみたいに。


「私も、ごめんね……?」


 唇が触れる。私の言葉を塞ぐように重なったそれは、ミーナの精一杯の返事。

 私も、その口づけに応える。溢れる涙をこらえるものは、もう何もない。

 交わしたキスは、互いの涙でしょっぱくて、でも、胸の中はずっとずっと甘い。

 唇が離れると、ミーナの顔が、涙でぐしゃぐしゃになっていた。


「もう、ミーナってば、顔すごい事になってるよ?」

「カスミだって、そうでしょ?……」


 そうやって笑いあう。泣いてる顔だってかわいいけど、やっぱり、笑ってるミーナが一番好き。

 濡れた顔をミーナに拭いてもらって、それから私もミーナの涙を拭う。

 自然と抱き合った体が、お互いを温め合う。


「色々大変かもしれないけど、……これからも、ずっと、『恋人』でいよ?」

「……うんっ!」


 誓いのキスみたいに重なった口づけは、私とミーナの心を、もう離れないくらい結んでいった。

痴話喧嘩でもさせようと思ったのにどうしてこうなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ