9日目(12)―蕩けた心
自然と高鳴る気持ちは、それだけじゃまだ満足してくれなかった。
もうちょっとだけ、キスしてたい。そんな気持ちに、ミーナが気づいたように目を閉じる。
唇の触れる音が、私とミーナの間に響く。
二人の間を遮るものは、何もない。ただ、溢れるくらい熱い思いを、交わし合う。
お互いを溶かすような長い長いキスはどちらからともなく終わって、銀色の橋が、さっきの口づけが夢じゃないって証明する。
体の力が抜けていく。そのまま、ミーナの上に倒れて、その衝撃でベッドサイドの目覚ましが落ちてくる。
私にもミーナにも当たらなかったけど、ドフン、と思いのほか重い音を立てる。ちょうど見えた時間を見ると、もうそろそろ晩御飯の時間になっていた。
「わっ、……んもう、びっくりしちゃったね」
「そうだねぇ、ていうか、もう晩御飯の時間になっちゃったね」
「えー、もう?」
ミーナと繋がってた時間は、あっという間に過ぎていく。二人で洗いっこしてたときも、求めあって、いっぱいキスしたときも。
でも、その時間が、たまらなく幸せで、離れられなくなる。
「二人とも、ご飯できたよ?」
ドアの外から聞こえた、お母さんの声。
「うん、今行くね」
ドアの向こうに返事をして、ミーナのこと、ベッドから抱き起こす。そのとき、ミーナの唇が、私の唇を襲ったのは、多分偶然じゃない。
自然と繋がる手のひらの温もりが、心の中でくすぐったくて甘い。
大好きな人の温もりと肌の柔らかさを感じながら、リビングに向かう。
家族四人で食べるご飯は、いつも通りおいしい。
でも、そう思える一番の理由はきっと、ミーナと一緒にそうしていられるから。
ふと、大事なことを思い出す、明日の予定、ちゃんと言っておかなきゃ。
「あ、そうだ、……明日、ミーナと出かけてくるね?お昼、私たちの分作らなくていいよ?」
「ええ、わかったわ」
「ありがと、お母さん」
二つ返事で許してくれたのを聞いて、自然と、隣にいるミーナと目が合う。
その顔が、急に緩んだ。はにかむ顔は、いつもみたいに可愛くて。
でも、私にだけ、見せてほしかったな。
胸にあるミーナへの熱い想いのドロドロした部分が、どす黒いような事を私に思わせてしまう。
そんな気持ちを頭から消すように箸を動かすと、いつの間に皿の中身は空っぽになっていた。
食器を流しに置いて、もう食べ終わってたミーナと一緒に部屋に戻る。
やっぱり、繋がった手は、あったかい。私の中にある汚いとこも、優しく包んでくれるような。
「明日、楽しみだねぇ」
そう言うミーナの声に、そうだねぇ、って返した。
どうあがいてもいちゃいちゃ




