9日目(8)―潜む心
教室から帰ってから、ミーナが私に言ってくる。
「わたし、眠くなっちゃったぁ……、寝ちゃってたら、起こしてね?」
「う、うん……」
人になってもミーナは、自由気ままな猫のまま、変わってないとこもあるんだ。
今になって、やっと気づけたミーナの知らないとこ、何でだろう、ちょっとドキドキしちゃう。
そんな気持ちをたしなめるように、授業開始のチャイムが鳴って、慌てて教科書とノートを出す。
授業が始まってしばらくしてから、隣を見ると、もうミーナは眠ってしまってる。机に伏せて、寝顔だけこっちのほう向いて。
いつもずっとそばにいるのに、寝顔なんてほとんど見ない。ミーナの髪をそっとかき上げて、寝顔を覗く。
すやすやと、ゆっくりとした寝息を立てて、無防備な姿になったミーナ。
なんて言えばいいんだろう。……すっごく、かわいくて、ずっと見てたくなるくらい。
でも、起こしてあげなきゃ。ミーナ以外にも寝てる人はけっこういるけど、……こんなかわいい表情、他の人に見られるのは、ちょっと嫌かも。
それは、多分、『嫉妬』というもの。こんな気持ちが、胸の中にあったのに、ちょっとドキっとする。
ミーナの顔なんて、いつでも見れるのに。目覚ましよりちょっと早く起きれば、もっと近くで、ミーナの寝顔なんて見れるのに。『恋心』というものは、不思議でたまらない。
軽く背中を叩いて、ミーナの瞼が開いたのが見える。
「ん……、カスミぃ……」
「おはよう、もう寝ちゃうなんて、びっくりだよ」
「えへへ、ごめんねぇ?」
二人だけに伝わる言葉で、そんな言葉を交わして、すぐに授業に意識を戻す。
今日は寝てたけど、基本的にミーナはまじめな子になっていて……私も、一緒に頑張らなきゃ。
一緒にいるって思えてるから、なのかな。チャイムが鳴るのが、思ったより早かった。
帰りの会もあっという間に終わって、そのまま、二人きりの帰り道。
「明日、休みだねぇっ」
「ちょっと、楽しみだねぇ、……何しよっか」
教室の騒がしさに混じって、私たちも気分が浮かれる。
「帰ってからにしよっか、そっちのほうが、気兼ねなく話せるでしょ?」
「それもそうだね、……早く帰ろ?」
昇降口を出ると、冷えた空気が一気に私たちを襲う。
自然と、指は一番深く握り合っていて、肩が触れるくらい身を寄せ合う。
こんなに寒いのに、ミーナと一緒にいるだけで温かい。
家までのちょっと長い道のりが、ちょっと楽しくなる。
「ただいまー」
「あら、おかえり」
そんな挨拶を交わして、二人で部屋に戻る。
ストーブをつけて、一緒に着替えを持ってベッドに腰掛ける。
視線が重なって、それから先はもう体が知っている。お互いを抱き合う腕は、キスをするときの優しさで。
部屋の空気が温まるまで、ミーナと唇と唇で温めあった。
さーて、10日目のフラグ立てる伏線を立てましたよっと




