9日目(4)―違うとこ
初めて会った時から考えると、ミーナとの距離はずっとずっと短くなった。
ただのペットと飼い主でしかなかったのに、気が付いたらお互いのことを大事な存在だと思うようになって、今はもう『恋人』という、何よりも大事で、かけがえのない人になっていて、……これからも、もっと近づくのかな。
そんなことを考えてる間にも、どんどん学校への距離は近づいていく。
「カスミ、そういえば体育って何するの?」
「今日はサッカーだって、嫌だなぁ……」
「えー?そんなに?」
体動かすの、わたしは好きなんだけどなー、なんて言うミーナ。猫だったというのもあるだろうけど、そんなとこは違うんだなって、今更だけど思う。
「だって、寒いし疲れるし、ボールとか蹴っても全然飛ばないし足痛くなるし……」
いろいろいって、際限がなくなりそうになって「とにかくいろいろ大変なの!」と強引に締める。
「うわぁ……そんな大変なんだ……っ」
しょぼんとしてしまったミーナに、慌てて「多分私しか思ってないけどね」って付け足す。
運動神経が全然ない私と、猫だったときはお散歩したり、部屋の中で遊んだりで動くのが大好きだったミーナ。おんなじ時間をどれだけ重ねても、こんなとこは全然違う。
そんな事を話してたら、学校なんてあっという間に着いてしまっていた。
鞄を机の横にかけて、ストーブで一緒に手を温める。
ミーナにあっためられても、ストーブの熱を感じた途端に手が痛くなるくらい冷えていた。
「手、もう真っ赤だねぇ……」
「手袋、やっぱりしとけばよかったかな……」
ミーナの手も、私と同じくらい冷たくなっていて、もう、気持ちだけじゃ暖まらないって痛感する。
ホームルーム開始を告げるベルが鳴って、慌てて席に戻る。隣の席なのをいいことに、先生が来ない間、しばらく手を握り合って温め合う。
……やっぱり、手を繋いで歩くの、やめられないかも。
だって、ミーナの温もりが触れるだけで、幸せになれて、胸の奥が高鳴るから。
温もりと一緒に、優しい気持ちも、心も伝わってくるような感覚に、満たされてくから。
担任の先生が来て、渋々といった風に手を離した。連絡とかを済ませている前に、一限目の準備を済ませておく。
だって、ミーナと触れてる時間、ちょっとだけでも長くしたい。
それは、もう言葉も何も交わしてないのに、ミーナも一緒みたいで。話を済ませて教室から出た途端に、また二人の手が互いに握り合っていて。
私とミーナは違う生き物だけど、それでも『好き』って気持ちは一緒なんだ。
胸に浮かんだ言葉だけで、舞い上がってしまいそうになる私がいた。




