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私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


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9日目(3)―近づく距離

 ミーナの温もりがあっても手は冷たくなっちゃうけど、心は、ずっとずっとあったかくなる。

 『好き』な人の温もりに触れるだけで、甘いようなくすぐったいような気持ちになってしまうから不思議だ。


「ねえ、こっち来て?」

「ん、何?」

 

 ミーナの手に引っ張られるように、路地裏の物陰に連れてかれる。

 急にミーナの足が止まって、真剣そのものなミーナの顔に、引き込まれるように顔が近づく。

 繋いでた手が離れて、向かい合った体は自然に抱き寄せあっていた。

 背中に回るミーナの腕に既視感を覚えて、反射で目を閉じる。その一瞬前に、ミーナの無防備な、私にしか見せないような顔が見えた。

 

 ……ちゅっ。


 いつもそうしてきた時と同じ音と一緒に、ミーナの唇の温もりが立ち去る。

 唇が触れた一瞬、寒いとか、ここが外だってこととか、全部頭から吹っ飛んだ。二人でキスをするときは、いつもミーナのことしか頭に入らなくなる。

 

「もー、何でこんなことしたの?」


 たしなめようとした声が、自然に柔らかくなって、頬が上がるのが抑えられない。

 だって、……ずっと我慢してたこと、ミーナからしてくれて、嬉しい、って思っちゃったから。


「だって、カスミってば、ずっと我慢してたでしょ?……わたしだって、そんなカスミのこと見てたら、我慢なんてできないよ……っ」

 

 うつむいたミーナの顔が赤くて、本当の気持ちが零れちゃったんだって気づく。

 そんなとこも、たまらなくかわいい。ミーナのことを知っていくたびに、好きになっていく私がいて。


「ううん、ありがと、……大好きだよ、ミーナ」


 耳元で、そっとミーナに囁く。気恥ずかしい言葉に、自分でも体が、溶けちゃいそうなくらい熱くなる。


「えへへぇ……?わたしもだよ、カスミ」

 

 お返しみたいに、耳元に息がかかるくらいの距離で優しく言われた。


「もう、学校行くよ?遅刻したら大変だよ?」

「あっ、そっか」


 さっきの時間が嘘みたいに、また手を繋いで学校までの道を歩く。

 でも、ミーナの顔をまともに見れなくて、横目で見たミーナの顔がわざと目線を逸らしてて、あのことが本当にあったことだって分かる。


 もう、二人の距離なんてこれ以上近づけられないくらいだと思ってたのに、まだ、近づけられるんだ。

 そんな事が、私の中で悦びの感情になって溢れてしまう。

 もっともっと近づいたら、私とミーナの関係は、一体どうなるのかな。

 今だって、十分『恋人』らしいことしてるけど、それよりも、もっと先のこととか、しちゃうのかな。

 それって、……と頭の中をピンク色の考えがよぎって、思わず足が止まってしまうくらい恥ずかしくなる。


「カスミ?どうしたの?」

「な、なんでもない、から……っ」


 そうやって返すので、私は精一杯だった。

ついに60話到達。

「もっと先のこと」を考えて顔を真っ赤にするっていったい何を考えてるんですかねぇ……

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