8日目(15)―重なる『好き』
体についた水滴を拭いて、寝間着に着替える。
猫だったときみたいにしっぽで全部分かるとかじゃないのに、ミーナの心の奥が、うずうずしてしまるのがわかる。
きっと、私もおんなじ気持ちだから。ミーナにいっぱい甘えられたいし、甘やかされたい。
『恋人』とじゃないとできないこと、いっぱいしたい。そんな気持ちが簡単に繋がっちゃうから、私たちはどうしようもなく二人の世界に落ちてしまう。
視線が重なって、いつの間にか二人の距離が近づく。
一瞬、触れた唇に、頭の中がぽわぽわとした気分になってしまう。
「また、キスしちゃったね」
「お風呂出たし、もう大丈夫だよ、……多分」
自然とこぼれる笑みと、軽く抱き合う体。
やっぱり、甘くて、優しい。ミーナの温もりに、心がとろけてく。
いつもみたいに寝る準備を済ませて、二人の部屋に向かう。自然と繋がる指先から伝わる体の熱が、お互いを溶かし合うみたいだ。
部屋に戻って、そのままベッドに座る。自然と向かい合って、軽く抱く腕でお互いを感じる。
「もう、我慢しなくていいよね……っ」
逸る声に、私ももう我慢できないって気づかされる。
「うん、……いっぱい、キスしよ?」
私の言葉が終わった瞬間、ミーナの唇の感触に襲われる。
私とミーナが溶け合うような水音が鳴って、体が、あっという間に火照る。
余裕のなくなった吐息の音も、落ち着くのに、ドキドキする肌の香りも、何よりも甘いキスの味も、全部好き。
だって、こんな、他の誰にも言えないことを、いちばん『特別』でいたい人としてるから。
初めてミーナと唇を重ねたとき、あんなに躊躇ってたのが嘘みたい。
「ちゅっ、ふぅ、……くちゅ、んちゅ……、んはぁ……!」
吐息も、鼓動も高まり合って、体がもう壊れちゃいそうなくらいになって、思わず唇を離してしまう。
「ふぅ、はぁ、……すっごく、いっぱいしちゃったね……っ」
「ん、うん、……っ」
力がもう入らなくて、ミーナと一緒にベッドに寝転がる。
一緒に溶け合って、まるで心が、体が、一つに混ざりあったみたいな気分。それが、たまらなく好きで。
「ミーナぁ……、好き……っ」
体を寄せて、唇を重ねる。胸の中が痛くて、苦しいくらい、激しくて熱い気持ちが体に溢れる。
「カスミぃ、好き……っ」
お返しみたいに、ミーナからも。
好きになるのって、苦しくて痛くて、そんなのすら愛おしくなるくらい甘い。
ミーナに蕩けた心は、もう一回、深くミーナと繋がりたがる。
「ねえ、もう一回しよ?……」
答えを聞く前から、唇を塞いでしまいそうになる。唇が重なりそうな距離で、ちょっとだけ躊躇する。
でも、そんなこと、必要なくなった。……ミーナから、唇を触れさせてくれたから。
ちゅ、……じゅる、ぴちゅ、んにゅ、はぁっ、……んくっ、……
濃密に過ぎる、二人だけの、甘くて気持ちいい時間。
ずっとずっと続けてたかったけど、体が、もう持たなくなりそうで、口惜しいけど離す。
ミーナの荒くなった息遣いが、だんだん収まってくのを感じながら、ゆっくり余韻を味わう。
「カスミぃ、……すっごく、ドキドキしちゃったねぇ……」
「そうだねぇ、ミーナぁ……っ」
熱くなった体を、布団に入れるのももどかしく。そのままいつも寝るときみたいに、体が重なるように深く抱き合う。
片手で目覚ましを探ってライトをつけると、もう日付が変わって30分も経っていた。
余韻から覚めると、だんだん眠気に誘われる。ミーナの熱だけじゃ足りなくなって、二人で布団をかぶる。
「おやすみ、ミーナ」
「うん、おやすみ」
密着した体から感じる温もりに、ただでさえ近いミーナの顔が、まつげが触れ合う距離まで近づいて、条件反射で目を閉じる。
唇が重なって、閉じた瞼が、そのまま重くなっていった。
ようやく8日目が終わりました。長すぎませんかねちょっと。




