8日目(14)―熱い体
「そろそろ、シャワー浴びよっか」
そう言うミーナの声に、何もできない。のぼせたみたいに、頭がぼうっとして、体が上手く動かないから。
「もう、どうしたの?」
「ごめんね?ちょっとのぼせちゃったみたい」
あんな熱く溶けるようなキスをして、なんでミーナは普通でいられるのかわからない。
「わたしも、熱いよ……、すっごく、いっぱいキスしたもんね」
抱き起してくれるミーナの優しさに甘えて、体を預ける。
湯船から出ても、感じるミーナの素肌に、熱いくらい温められる。
好きだよ、ミーナ。そんな気持ちを、唇で伝えてしまいそうになるのをぐっとこらえる。
「今日は、背中流しっこするだけにしよっか」
せっかく『恋人同士』でお風呂に入って、スキンシップをとらないのも寂しいし、かといって昨日みたいに体中洗いっこなんてしてたら、また長風呂しちゃう。
「そうだねぇ……」
背中側にミーナがいるのには、まだ慣れない。
一緒に寝るときも、キスするときも、目線が合うし、学校に行くときや授業のときは、横にいるし。
いつも一緒にいるのに、こういう構図になることは、結構少ない。だから、すぐドキドキが止まんなくなる。
「じゃあ、するね?」
シャワーを止められて、徐々に冷えてく体を、ミーナの指先は簡単に温めてくれる。
好きな人にいっぱい触られて、気持ちが昂ってしまうのを、もう止められない。
優しいけど、遠慮のない指の触れる感覚に、心ごとかき乱されるような気分になる。
泡を流されるまでの時間が、永遠にも、一瞬にも思えた。
「終わったよ、カスミ」
「ありがと……じゃあするよ?」
「うん、お願いね」
今度は、ミーナが私に、無防備な背中を晒してくれる。
ミーナの肌のにおいを、いつもより濃く感じる。私しか知らない、甘い恋の香りに、気が付いたらぼうっとしてしまう。
「どうしたの?カスミ……」
「うわ、ご、ごめんね?」
ボディーソ-プを手に付けて、ミーナの背中を撫でるように洗う。
相変わらず、ミーナの肌は、白くて綺麗だ。日に焼けない部分は、透き通ってしまいそうなくらい。
何かをこらえようとして、漏れるミーナの声。私がそうだったみたいに、ミーナも、ドキドキしちゃうのかな。
だとしたら、すっごく、嬉しい。私とミーナが、同じ気持ちを持ってるとこが、また増えるから。
「じゃあ、流すからね?」
そう言って、シャワーを流すのが、ちょっと寂しかった。だって、もうちょっとだけ、すべすべなミーナの肌に触れてたかったから。
「もう、終わったよ?」
「へへ……っ、ありがとね、カスミ」
「ううん?こっちこそ、ありがとね」
そんな風に言葉を交わして、あとは自分で体を洗う。
ミーナが自分の体をそうやって洗ってるのを見て、色っぽい、なんて感じてしまう。
そんな姿に、目が離せなくなる。それをミーナに気づかれる前に、慌てて目を逸らす。
ミーナのことをわざと見ないようにして、なんとか体を洗い終わった。
「じゃあ、出よ?」
ミーナのほうが先に終わってたらしく、私がシャワーを止めたのを見て、手を握ってくる。
お風呂から出るのを急かすわけなんて、一つしか考えられない。
その一つの理由が、ミーナと一緒ならいいな。
そんな物思いは、脱衣所の冷えた空気なんてわからなくなるくらい体を熱くした。
珍しくキスしてないね
どうしたんだろう




