8日目(13)―止まらぬ気持ち
この回で7万文字突破です。
頭がくらくらしてて、お母さんが何て言ってたのかはよくわからなかったけど、時計を見ると、もうお風呂の時間。
「もう、お風呂だね」
「うんっ」
心なしか上機嫌なミーナ。私と一緒に入るからなのかな、きっと。
下着だけ持って部屋を出て、もう自然と手が繋がる。
お風呂場に向かうと、リビングにいるお母さんに優しく諭される。
「あんまり長湯しちゃ駄目よ?風邪引くからね?」
「「……はーい」」
昨日なんで長くなったのかまでは知らないはずなのに、何故か見透かされた気がした。
あのことを思い出して熱くなった顔を、俯いて隠す。目だけでミーナのほうを見ると、俯いた顔が、赤くなっていた。
同じこと、思い出しちゃったのかな。そうなら、すっごくかわいい。
一緒に脱衣所に入ると、ミーナが残念そうにつぶやいた。
「今日は、あんまりキスできないね……っ」
「うん、そうだね……」
やっぱり、そういうこと、したくなっちゃうんだ。私と同じとこを見つける度、おんなじ『好き』って気持ちにドキドキする。
一緒のお風呂は、もう慣れたようで、まだ心臓が高鳴ってしまう。
「ミーナ、もうお風呂慣れたね。……猫のとき、あんな嫌ってたの、嘘みたい」
「そうだね、……カスミと一緒だからかな」
そんなかわいいこと言わないでよ。堪えてる気持ちが、溢れちゃうから。
わざと遠ざけてたミーナの距離が、ぐっと近づく。迫られてるような体勢に、心臓が飛び上がってしまう。
「ねえ、……キスしよ?」
「え、……、ちょっと、ミーナ?」
長湯しちゃ駄目って言われてるのに、そんなことしたら、絶対時間なんて忘れちゃう。
「カスミ、……駄目?」
でも、好きな人に、そんな寂しそうな顔されたら、駄目なんて言えるわけない。
「い、一回だけ、……だよ?」
「よかった、……大好きだよ、カスミ」
抱き合って、柔らかい素肌の温もりを感じる。
近づけ合った唇が、一つに重なる。
優しくて、でも深くて濃厚なキスに、一瞬で体が熱くなる。
「はぁ、ちゅぴっ、……れりゅ、……ちゅる、んにゅっ」
お互いの気持ちが絡まる水音が、こらえきれなくなって漏れる吐息の音が、狭い空間に反響して、胸の高鳴りが激しさを増していく。
長い長いキスに、息も、心も、限界になる。
これ以上されたら、私、どうにかなっちゃう。ミーナの背中に回してた手で、肩を押して離そうとするけど、全然力が入らない。
でも、それに気づいたのか、ミーナの唇が離れた。しばらく、私もミーナも乱れた息を整える。
「ミーナぁ、……一回だけって言ったじゃん……っ」
夢みたいな時間から、現実に慌てて戻す。
「一回だけだよ?唇離してないもん」
「そうじゃなくて、……結局長風呂しちゃうじゃん……っ」
「あ、そっか……、でも、カスミだって、したかったんでしょ?」
これ以上、何も言えなくなる。それが、本当のことだから。
「もう、ばかぁ……」
でも、大好きで、止まらなくて。ミーナのこと、きつく抱きしめる。
「仕方ないでしょ?……大好きなんだもん、カスミのこと」
ずるいよ、そんなこと言わないでよ。もっともっと、ミーナに溶かされたくなるから。
「お風呂上がったら、いっぱいキスしよっか」
そう言うミーナの声に、頷くのが精一杯だった。
7日目みたいにお風呂回だけで7話くらい使うとかはないので安心してください。




