8日目(11)―恋の味
今回はいちゃいちゃ成分多めでいきたいと思います
ミーナと『恋人』になってから、いろいろなものがキラキラに輝いているみたいに思える。
きっと、私とミーナはいつも一緒にいるから、……ちょっとした時間も、二人で作る想い出になるから。
家族全員でご飯を食べるときも、頭の中は、ミーナのことしか考えられなくなる。
だって、二人だけの秘密の時間に、胸がわくわくしてるから。
いつもだったら一番食べるのが遅くてミーナを待たせてるのに、今日はミーナと同じくらいに食べ終わった。
部屋に戻ってから、ミーナにからかわれる。
「もー、本当に楽しみだったんだね」
「仕方ないでしょ?……だって、」
ミーナのこと、好きだから。そう言おうとした唇を、唇で塞がれる。
重ねるだけの優しいほうだったのに、胸の奥の鼓動は否応なく高鳴る。
「何で言わせてくれないの?」
「ふふ、聞かなくてもわかるもん、カスミの気持ち」
「もー、ずるいよー!」
子猫のじゃれ合いみたいな会話をして、鞄に入れてたマシュマロの袋を出す。
「ちゃんと焼けるかな、学校のよりは熱くないだろうし」
「うーん……、まあそのときはそのままでもいいし大丈夫だよ」
一番強い設定で、ストーブの火をつける。温まるまで、マシュマロを焼く準備をする。
割り箸を割って、マシュマロを一つずつ刺していく。一本をミーナに渡して、二人でマシュマロを焼いていく。
回して確認していると、ちょっとだけ焼き目が付いていた。
そのまま、もうちょっと待って、学校で食べたのみたいな綺麗な焦げ目がつく。
「そろそろ、大丈夫みたい」
「じゃあ、食べよっか」
いただきます、という声が、綺麗に重なる。
二人で隣にいるときの定位置になっているベッドで、マシュマロを口に含むのはほとんど同時だった。
「ちょっと熱いけど、甘いね」
口に入れた途端、ほんのりとした苦みの後に、溶けるような甘さが口の中を刺激する。
「ほんとだ、甘いね」
しばらく、そうやって甘さを堪能していると、突然、ミーナの顔が近づく。
「でも、こっちのほうが、もっと甘いや」
何のことかわからずにミーナのこと見つめたまま固まって、ようやく気づいて、目を閉じる。
「「……んっ、……ずりゅ、じゅる、……ふぅ、ちゅぷぅっ」」
私の中で、そして、ミーナの中で、一番甘いもの。
それは、『恋人』と交わす、キスの味。
もっと、ちょうだい。私たちにしかわからない、何よりも甘いこと。
蕩けてく気持ちに、もう体はついていけなくなる。ふわふわとした高揚感と、抗えない快感が、頭を満たす。
唇が離れたのが、一瞬みたいに思える。名残惜しげに鳴った音が、さっきのキスがどれだけ深いものだったのかを表してるみたいだ。
「んっ、……やっぱり、カスミのほうが甘いや」
「ミーナも、すっごく甘かった……っ」
体を、ミーナに預ける。もう一回したいなんて、言葉じゃ恥ずかしくて言えないから。
汗ばむくらい熱いのは、全力にしたままのストーブのせいじゃない。
高鳴る鼓動の求めるまま、もう一回、ミーナと激しいキスを交わし合う。
口の中をミーナが溶かしてく気持ちよさも、激しく鳴る水音も、こらえきれずに声になる吐息も。
全部、キスの甘さを引き立てて、頭の中に焼き付けていく。
「っはぁ……、すっごく、甘いね……」
「うん、……」
力が抜けて、互いを預けあうように抱き合う。
恋って、こんなにも甘いんだ。そう思えるのは、ミーナのおかげ。
好き、と小声でつぶやくと、わたしもだよ、って返してくれた。
いちゃいちゃ成分が多すぎたかもしれない




