8日目(9)―想うこと
「「ただいまー」」
「おかえり、二人とも」
リビングを素通りして二階に上がっても、もう怪しまれない。
私とミーナが、仲良しな姉妹だと思われてるからだけど、本当は、――『仲良し』なんて言葉じゃ、全然言い表しきれない『恋人』という仲だから。
二人きりの部屋でなら、気兼ねなく『恋人同士』でいられる。ミーナと二人でいたい理由は、私にとってはこれだけで十分だ。
部屋に入ると、ミーナがすぐストーブをつけてくれる。換気のために開けられてた窓を閉めて、温かい空気が満ちるのを待つ。
鞄を下して、着替えをベッドに置く。ミーナの顔が、不意に近づいてドキドキする。
激しくなる鼓動に耐えられなくて、ベッドに腰掛けると、ミーナもそこに座る。私と向かいあうようにして、脚を私が逃げられないようにするみたいに。
普段同じ高さにあるミーナの顔が、今は頭半分くらい高い。自然と抱き合う体が、厚着をしてるはずなのにお互いの温もりを肌で感じる。
「お部屋あったまるまで、……二人であったまろっか」
何をしようとしてるのか、言われなくてもわかる。
「うん、そうしよっか」
目を閉じて、唇を軽くすぼませる。ミーナに、身も心も預ける。
唇が降ってくる間の時間が、すっごくもどかしくて、……重なった瞬間、今まで待ってた分の『好き』って気持ちも、体から溢れそうなくらい伝わる。
「まだ、ちょっと寒いねぇ……」
暖かいとか、寒いとかじゃなくて、ミーナの温もりを、もっと感じてたい。
「じゃあ、もっとあったまらないとね」
自然と、唇が近づいて、いつもみたいに優しく触れ合う。
でも、今日は、ミーナのほうも積極的だった。
唇じゃない、柔らかいものが唇に触れる。それがミーナの舌先だって分かって、私も、ミーナの唇を舐める。
そのまま、恋人どうしじゃないとできないような深いキスを交わす。何よりも甘い感覚が、私の全部を満たしてく。
「「……ちゅ、ぴちゃ、……じゅぷっ、ちゅる、……」」
二人の唇の隙間から漏れる音に、胸の奥の高鳴りが、体がおかしくなりそうなくらい早くなる。
頭がくらくらして、体中から汗が出るくらい熱い。痺れたような体は、もう何もできない。
重ねるだけのときよりも、大きなリップ音を残して、永遠みたいな時間が終わる。
「もう、熱いね、カスミ……」
「うん……っ」
何も考えられなくなるくらい熱く痺れた頭を、ミーナの肩に載せて休める。
そのせいで、まだ制服姿だというのに気づいてしまう。学校にいるみたいな感覚がちょっとだけ沸いて、ドキドキが一層高まっていく。……って、そんな場合じゃなかったと、蕩けた頭をなんとか戻す。
「制服、着替えなきゃね」
「うん、そうだったね……」
そうやって服を脱いでくミーナを、まともに直視できない。
キスの先の、『恋人』がする、一番深い事を想像してしまうから。
想像にふけりながらゆっくりボタンを外していくと、なんだか足のあたりがむずむずする。
満たされてるはずなのに満たされないみたいな感覚を、錯覚だって心に言い聞かせる。
好きすぎて、壊れちゃいそう。溢れる気持ちは、胸を満たして止まらなくなっていた。
65000字突破です。
というか、この子たちいちゃいちゃしすぎでしょ




