8日目(8)―ふわふわの心
ついに50話です!やりました!皆さまのおかげです!
一本の傘は、二人で入るにはちょっと狭い。
でも、こうやってミーナと体を寄せ合って歩くのは、胸の奥が『幸せ』って気持ちで満たされるくらい嬉しい。だって、こうして隣を歩くのが、『恋人』になった、一番大好きな人だから。
「あ、こっちだよ?」
「そっか、ついいつもの道行こうとしちゃった」
いつもとは、ちょっと違う道。
「お散歩の時、よく歩いてたのにな」
今だと違う道みたい、そう笑うミーナ。
……そういえば、まだ私、ミーナが猫だった頃のこと、知らないことだらけだ。一緒にいた時間は長かったけど、今みたいに言葉で教えてくれないし、しぐさだって、どう思ってるのかは、ぼんやりとしか教えてくれなかった。
知りたい、好きな人のこと、もっと。そう思うのは、いけない事かな。
「お散歩って、どこ歩いてたの?」
「んー……いろんなとこ、歩いてたよ?」
「じゃあさ、今度、一緒に行っていい?」
そう言うと、にっこりと笑った。
「もちろん!」
つられて、私も笑う。そんな事を言ってたら、行こうとしてたコンビニがもう目の前。
「じゃあ、入るよ?」
「うんっ」
傘を閉じて、傘立てに隣り合わせで置く。手が空いて、自然に繋がった指先は、恋人つなぎのほうで。
コンビニの空調が、暑いと思っちゃうくらいドキドキした。他の人もいるのに、二人の距離感は『恋人』のまま。二人だけの内緒にしよう、なんて言ったのに。
でも、私も、こうしていた方が好きだし、自然にいられる。仕方ないでしょ?だって、こうしている時間が、一番長くて、大好きなんだから。なんて、誰に言い訳してるんだろう。
マシュマロの大きな袋を買おうとして、食べきれるかちょっと不安になる。
だって、私はあんまりおやつとか食べないし、それに、二人きりだと、……『恋人同士』じゃないとできないこと、したくなっちゃうから。
ちょっと小さめのを選んで、レジに持っていく。割りばしを入れてもらえないかに頼んだら、ちょっと不思議そうな顔をしながら入れてくれた。
店先に出て、ミーナにマシュマロを私のリュックに入れるようにお願いする。でも、私の後ろにミーナがいるって状況は、どうしようもなくドキドキしちゃう。
相合傘をし直して、いつもの道に戻ってきて、ちょっとほっとする。今いるのは、私とミーナの二人だけ。
ちょっと、もう我慢できないかも。こんなに近くにいて、『恋人』でいることをずっとこらえてきて、触れ合うくらいの距離にいるのに。
自然と、顔を見つめ合う。赤い顔は、寒いからじゃなくて、きっと、照れちゃうから。
足を止めて、目を閉じたのは、きっと、ほとんど同時で。
ちゅっていう音を残して、唇が離れる。重ねた一瞬、頭が真っ白になって、そこをあったかくて甘いものが満たしてく。
力が抜けて、ミーナに体を預けると、ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。
これガチであと20話ありそう。




