8日目(6)―甘い記憶
ちょっと投稿遅れてしまいました。申し訳ないです。
午前の残り半分をなんとか耐え抜いて、二人でお昼を食べる。
『普通の友達』の距離感では絶対無いだろうけど、まさか私とミーナの関係が、もっともっと深いものだって分かる人はいないはずだ。
二人の席をくっつけて、隣で同じ中身のお弁当を食べ進める。
なんか、小学校のときの給食みたい。班のみんなで机をくっつけて、……なんて言うのも、ミーナが私のもとに来るずっと前のことなんだっけ。
なんだか、勝手に胸がくすぐったくなる。私とミーナの周りだけ、あったかくて甘い空気が満ちてるみたい。
「今日も、おいしいねぇ」
「本当だねぇ」
それは、たぶんミーナと一緒に食べてるからだろうけど。二人でいるときは、何だって幸せになれて、頬が、自然と緩む。
箸が勝手に進んで、いつもより早く食べ終わる。
なんだろう、辺りから、甘いにおいがする。ストーブの周りに、人だかりができていて。
ミーナもにおいにつられたのか、一緒に近づくと、みんなでマシュマロを焼いているのが見えた。
「あ、美奈たちも食べる?」
「う、うん、ありがとっ」
私よりもミーナのほうがこういう会話についていけるのは、ちょっと羨ましいし、もやもやする。
私のほうがずっと長く人として生きていたのに、なんでミーナのほうがクラスに溶け込んでるんだろう。
それに……ミーナの心が自分じゃない方向に向くと、不安になっちゃうから。
いつだって、私のこと向いてほしい。私だけのミーナでいてほしい。そんなこと、わがままだって分かってるけど、頭の中に浮かんでしまう。
そんな考えにに耽っていると、割り箸に刺さったマシュマロがぐいっと近づく。
「あ、香澄、はいこれ」
「う、うん、……ありがと」
こんな風に普通の会話でも緊張しちゃうから、なのかな。こうやって教室に溶け込めないのは。
ちょっと気が落ちてしまったせいか、ため息がこぼれる。それに気づいたのか、ミーナの手が、私と繋がる。
手のひらから伝わる熱は、私にとって何よりも優しい。
「はい、美奈の」
「うん、ありがとっ」
同じ言葉を伝えるのにも、こんなに違う感じになってしまう。そんなことに、またへこみそうになる。
でも、もう今は大丈夫。ミーナの温もりが繋がってるから、あったかい気持ちを伝えてくれるから。
少し腕を伸ばして、マシュマロを焼き目がつくまで熱に当てる。そろそろかなって箸を回すと、綺麗に焼き目がついていた。
「そろそろ大丈夫だよ」
「うん、ありがと」
焼き上がったのを何となく見せ合って、それから口に含む。
あったかくて、口の中で溶けて、おいしい。
でも、何でだろう、ミーナと交わしたキスの感触を思い出して、胸の奥がバクバク鳴る。
「甘くて、おいしいね」
「そうだねぇ」
見つめ合って、笑顔になる。そんなことも、ミーナと『恋人』でいるときと同じ。
……ミーナと、今すぐキスしたい。不意に、強く湧き出た衝動を、繋がってる手を握り締めて堪える。
「ごちそうさま、ありがとね」
「いいよ、どういたしまして」
そんな会話を残して、ストーブから離れる。ごみ箱に割りばしを捨てて、自分とミーナの席の間までたどり着く。
もう、体の中、熱い。ミーナへの恋心に焼かれて、溶けちゃいそうになるくらい。
それなのに、ミーナの体の温もりを感じてたいって気持ちが溢れてる。矛盾してるみたいだけど、私の中でちゃんと混ざりあって。
「カスミ、手ぇ痛いって……」
「ご、ごめん、私つい……」
握りっぱなしだったミーナの手を、慌てて離す。だって、ああしてなきゃ、キスしちゃいそうだった。そんな事、今更みたいに言い訳できない。
何もできなくなってもじもじとしていると、ミーナに抱き寄せられた。耳元で、私にしか聞こえないくらいの甘い声が響く。
「いいって、……それに、私も一緒だったもん」
「……へ?」
ミーナも一緒だったって、どういうことなんだろう。答えは、すぐ教えてくれた。
「キス、したくなっちゃったんでしょ?」
「な、何でわかったの?……」
「わかるよ、……カスミが我慢してるとき、いっつも顔赤くなってるもん」
そんなになっちゃうっけ、私。
顔が熱くなって、何も言えなくなっちゃう。
「私も、一緒だよ。……だって、一緒だったもん、そういうこと、するときと」
「……そっか、よかった……」
唇が重なること、思い出しちゃったのは、ミーナもおんなじだったんだ。
「……帰ったら、いっぱいしよっか」
「……うんっ」
一瞬、きつく抱き合って、恥ずかしくなって離す。
力が抜けた体は、熱くとろけていきそうだった。
もうだめだこの子たち、もうどうしようといちゃいちゃしだす




