8日目(5)―おんなじ気持ち
本当は昨日(9/13)の連載開始半周年に上げたかったけど無理でした。
一応13日昼だからまだそこから考えればセーフですよね(震え声)
2時間目の授業は、あっという間に始まってしまう。
先生の声をぼんやりと聞いたまま、頭の中では全然違うこと考えている。
私、贅沢なのかな。
いちばん特別な人と、今だって、『好き』って気持ちで繋がることができて、いちばん近くにいられるのに。もっと、繋がっていたいって思ってしまう。
私の中にある恋の熱は、まだ全然収まらない。それどころか、『恋人』という、いちばん深い関係になってから、ますます燃え上がってるような気もする。
どうしよう、体の中、熱くなって。
抱きしめられたい。触られたい。溶けちゃうくらい、いっぱいキスしたい。
窓からくる冷気が、体に熱を求めさせてるのかもしれない。ミーナのぬくもりを欲しがる頭は、勝手に悶々としていく。
ふと、右手に感じた温もり。思い当たるのは、たった一人だけ。
その手を辿っていくと、やっぱり、ミーナのもので。
視線が重なって、ミーナがほほ笑む。その顔に、……頭を渦巻いてた気持ちが、ちょっとだけ和らぐ。
触れられたがってた温もりは、私の体に触れられた途端、心を満たしてく。
やっぱり、あったかい。二人だけにしかわからない恋心は、確かにここにちゃんとある。
私も、しっかりしなきゃ。浮ついてた気持ちを、教室に戻す。
ちゃんとミーナは、私のこと、好きでいてくれてる。
だから、私も、ミーナが好きでいてくれる私でいたい。
集中していると、時間はあっという間だった。
「ん……っ、疲れたねぇ……」
丸まった背中を伸ばしながら、そんな事を言われる。
「まだ午前の半分だよ?もう……」
そう言うと、突然、ミーナが席を立つ。そして、私の後ろから、ミーナの腕が回される。
「カスミの体、あったかいな、……ストーブよりも、ずっと」
頭の上から、声が降ってきた。見上げると、いつも見てる笑顔が、反対向きだからか、すっこくおかしい。
おもわず吹きだすと、「何がおかしいの?」って、ちょっと怒った声。
「だって、普段、こんな感じで見ないもん、ミーナのこと」
「へへ、……そっか」
ミーなの声が優しくなる。私を抱く腕が、ちょっときつくなる。
「私も、……ミーナにぎゅってされてるほうが、あったかいな」
「ほんと、同じだねぇ」
ミーナと、繋がりたくなる、心も、体も。
だって、いちばん近くにいる、いちばん好きな人だから。
抱かれた腕が離れて、ミーナが私の横に膝立ちになる。
目線が重なって、近づいた顔。まるで、キスする前みたいな。
重なることを期待してしまうミーナの唇が、言葉を紡ぐ。微かな声は、きっと二人にしか聞こえない。
「我慢できなくなっちゃった、……いい?」
何しても『いい?』って訊いてるのか、それだけで分かってしまう。そしてそれは、私も期待してたことだけど。
「ミーナ、ここ学校……っ」
このことは、二人だけの秘密にするつもりなのに、――私とミーナが、キスをするような関係だってことは。
「……駄目?」
でも、断れないよ。ミーナの寂しそうな顔、見ちゃったら。
それに、体はもう、とっくのとうに愛されたがってる。
喉がカラカラになって、なんも言葉にならない。その代わりに、ミーナの背中に腕を回す。
左手にカーテンを握ってたのを、視界の端で捉える。
目を閉じる前の一瞬、ミーナのほほ笑む顔が見えた。
「カスミも、一緒だったんだ、……かわいいっ」
触れた唇の感触にこんなにドキドキしたのは、たぶん二人で交わした初めてのキスくらい。
それくらい、ドキドキしちゃう。だって、ここは学校で、二人だけの場所じゃないから。
重ねるだけの優しい、それもちょっとしか触れなかったのに、もう息が激しい。
「ん、……体、熱いや、もう……」
「私も……っ」
カーテンを持っていたのは、きっとさっきのこと、隠すため。
『二人だけの秘密』にしてたかったのも、キスしたがってたのも、一緒だったんだ。
おんなじ気持ちを持ってるってことは、私とおんなじ『好き』を持ってるってこと。
何回も言葉で、体で、教えてもらったのに、確かめるたびに心がキュンと鳴る。
「また、授業始まっちゃうね……、そろそろ戻るよ?」
「う、うん……っ」
隣の席だっていうのに、離れるって聞いて、ちょっと寂しくなってしまう私がいた。
某2014年冬アニメを思い浮かべてしまったのはうちだけじゃないはず。




