8日目(3)―二人の秘密
ついに45話です。
傘立てには、見知らぬ、使い込まれた傘があった。
周りからみた『真部美奈』のこと、今更のように思い出す。最初からミーナは、人として私の隣で生きてきたってことになってるんだって。
私にとっての『ミーナ』を知ってるのは、この世界でたった二人だけ。
恋人同士の、二人だけの秘密。
胸を自然とくすぐらせる甘い響きに、溶けていってしまいそうになる。
自分のと、その傘を取って、ミーナのだと思うものを渡す。
「はい、ミーナの」
「えへへ、ありがとー」
ミーナの顔が、いつもより緩んでる。私と同じこと、考えていたらいいな、なんて。
傘を使うのは初めてのはずなのに、ちゃんと使えてる。
いつもみたいに学校への道を、二人で歩く。
私の右隣に立って、左手を、繋ぎたそうにうずうずしてる。
そんな仕草が、たまらなくかわいくて、右手に持ってた傘を左手に持ち替えて、指を絡める。
右手だけじゃなくて、体中に、ミーナの温もりが伝わる。寒い今日は、特に。
「……でも、ちょっと、手ぇ濡れちゃうね」
「そうだねぇ……」
二つの傘の隙間から、雨が漏れて、私とミーナの手にかかる。
確かに、凍っちゃいそうなほど冷たいけど、ミーナの温もりを感じられないより、ずっといい。
「でも、やっぱりこのままでいよう?」
「……うんっ!」
ミーナの唇から、白い息とともに、元気な声が漏れる。きっと、それは、ミーナも同じこと、思ってるから、……なのかな。
「ねえ、ミーナ」
「ん?なぁに?」
ふと思い出したこと、伝え忘れそうになって、慌てて口に出す。
「私とミーナが『恋人』だってこと、秘密にしよ?」
普通じゃない関係だということを、気づかれないように隠すため。心の中でそう言い訳する。
でも、本当は、……飴玉みたいに甘いとこ、もっともっと増やしたい。そんな不埒なこと、考えてしまう私がいる。
「うん、分かった。……絶対、内緒にするね?」
ああ、やっぱり、くすぐったい。でも、そんな感触が、たまらなく好き。
周りには、誰もいない。その事が、抑えられない気持ちを止める、最後のブレーキを壊す。
傘がぶつかるまで、体を近づける。もともと近かったのに、吐く息がかかりそうなくらい近い。
立ち止まって、目線が合わさって、自然と顔が寄って、……唇が重なる。
抱き合わないだけで、キスってこんなに難しくなるんだ。そんな変な事、考えていて。
素肌を突き刺す寒さも、唇を重ねた一瞬だけ、感じなくなる。
いつものドキドキに、誰にも見られないかという不安が重なって、……その瞬間が、頭に焼き付いてしまうくらい、ミーナのことしか、頭に入らなくなる。
「っ、はぁ、……お外で、キスしちゃったね……っ」
「うん、……すっごく、ドキドキしちゃったよぉ……」
また、二人で学校への道をたどる。冷えた空気は、いつの間にかミーナの温もりに蕩けていた私の頭を冷やしてたみたいだ。
「ちょっと急ごっか、遅刻しちゃったら大変だよ?」
「そうだった……」
うなだれるミーナの手を引いて、早歩きする。スマホの時計を見て、ここからなら、なんとか間に合うかなって予測する。
でも、今重ねたくちづけの感触は、忘れられそうになかった。
『二人だけの秘密』……路ちゅー……うっ頭が




