表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/318

黒の村にて 再会と袋

 ……よし、状態を確かめても特に失敗したものは無い。今日も良いものができた。僕が作業をやめて確認してると、近くで作業していた屋内作業の責任者が声をかけてくる。


「お、ヤートできたのか?」

「うん、納品する分は全部できた。あと一つ聞きたいんだけど、また注文増えてるよね?」

「それだけヤートが作る薬草団子(ハイハーブボール)の人気があるって事だ。薬効の高さに携帯性の良さ、そして保存が効く。人気が出ないわけが無いな」

「そういうもの?」

「そういうものだ」

「わかった。今日の作業は終わったから帰るね」

「ああ、また頼む」

「うん、それじゃあ。…………あれ?」


 作業場を出ようとした時に、植物達がザワザワしてるのに気づいた。植物達はよほどの事がない限り落ち着いているから、今みたいにザワザワしてるのは珍しい。理由を知るために同調で僕の近くの植物を通し様子を探ると騒めきが森の外側で他より大きいところを見つけて、そこに意識を集中したら植物達のザワザワしてる理由がわかった。


「ヤート、どうかしたのか?」


 話しかけられて振り返ると、作業場にいたみんなが僕を見ていた。ああ、みんなからは、僕が突然立ち止まったまま動かないんだから気になるのは当然だね。


「植物達がザワザワしてたから様子を同調で探ってた」

「原因はわかったのか?」

「うん、森の外からお客さんが来た」

「何?」


 僕が言うと、みんながピリピリし始めたから変な方向に話しが進まないようにわかってる事を伝える。


「青のイリュキン達がこの村に向かって来てる」

「……そうか、俺は村長(むらおさ)とラカムタに知らせてくるから、ヤートは門で青を出迎えてくれるか」

「わかった。先に行ってる」


 すぐにみんなからピリピリした空気が無くなり作業に戻っていった。うーん、これだけはっきり緊張状態から普段の状態を切り替えれるのは驚きだな。確か前世で、みんなにピッタリな言葉を見た気がする。なんだっけ? …………そうだ。「常在戦場」だ。意味は「いつでも戦場にいる心構えで事をなせ」みたいな事だったはず。こうして考えると、いつでも戦える覚悟と実力があって自然体なんだからすごいよね。




 門に着き門番のネリダさんに青のイリュキン達がもうすぐやってくるって伝えて、いっしょに待っていると少ししてイリュキン達の姿が見えてきた。イリュキンは門に僕がいた事に驚いていたけど、すぐに気を取り直してさわやかにあいさつしてくる。


「コホン。やあ、ヤート君、久しぶりだね。出迎えてくれて嬉しいよ。門番のネリダ殿も、お久しぶりです」

「うん、久しぶり」

「無事に青の村と黒の村を往復できて何よりだ」


 イリュキンも咳をするんだね。どう考えても無理矢理な気がするけど、何かしらの話のきっかけに咳をするのが普通なのかな? あと気になるのは、前に来た時と水守(みずもり)の顔ぶれが違う事だ。


「なんで水守(みずもり)が前と違うの?」

水守(みずもり)は基本的に当代の水添え(みずぞえ)水添え(みずぞえ)候補の側にいるもの達で、一生を青の村の領域から出ずに終わるものもいる。だから、水添え(みずぞえ)や候補者が青の村の領域外に出る時は、毎回水守(みずもり)を違う顔ぶれにして外での経験を均等に積めるようにしてるんだ」

「なるほど、いろいろあるんだね。ああ、村長(むらおさ)とラカムタさんには、イリュキン達が来るのは伝わってるはずだから、すぐに来ると思う。少し待ってて」

「ありがとう。待たせてもらうね。お前達も楽にして良いよ。ただし、黒の方々に失礼のないように」


 イリュキンが水守(みずもり)達に言うと、大きな袋を持ってイリュキンのすぐ後ろにいる二人以外が、身体をほぐしたり黒の村や周りの植物を興味深そうに見始める。この様子だと本当に青の村の領域外に出た事ないんだな。僕が青の水守(みずもり)達を見ているとイリュキンが僕の隣に来た。


「改めて、久しぶりだね」

「そうだね」

「君がくれた薬草団子(ハイハーブボール)乾燥薬草(ドライハーブ)は、おばあさ……おっと、当代の水添え(みずぞえ)を始め青の村でも大好評だったよ」

「それは良かった。さっき聞いたばかりなんだけど、僕が手を加えた薬草関係の加工品は人気があるんだってさ」

「ずいぶんと他人事みたいに言うんだね」

「これでも驚いてるよ。あんまりというか、今のところは顔に出ないだけ」

「それは……すまない。無神経な発言だった」


 こういうところが良いところなんだけど本当にイリュキンは真面目だね。


「僕が無表情なのは前からだから特に気にしなくても良いよ」

「そうかい?」

「うん。ところであの二人の水守(みずもり)が持ってる袋は何?」

「ああ、あれは前に君からのもの以外にも素晴らしい贈り物をいただけたから、それに対する我ら青の竜人の総力を挙げた黒の方々への返礼品さ」

「…………あの袋を持ってる水守(みずもり)、ちょっと辛そうだから絶対に入れ過ぎでしょ。というか袋も特別製っぽいし気合入れ過ぎじゃない?」

「ふふふ、言っただろう。青の竜人の総力を挙げたと」

「ふむ、それは何が入っとるか楽しみじゃな。のう、ラカムタ」

大神林(だいしんりん)でも手に入らないものはあるから、青の特産物には興味がある」


 イリュキンの本気の目を見て僕が驚いてたら、村長(むらおさ)とラカムタさんが僕とイリュキンの方に歩いてくる。どうやら僕とイリュキンの会話を聞いてたみたいだね。イリュキンはすぐに身なりを確認し二人に近づいていき水守(みずもり)達も集まってきた。


「黒の村長(むらおさ)殿、顔役のラカムタ殿、お久しぶりです。青のイリュキン、再び黒の村に来る事ができて幸いです」

「ほっほっほ、青の村と同じようにはゆかぬじゃろうが、ゆるりと休むと良い」

「ああ、再び会えて俺も嬉しいよ。元気そうで何よりだ」

「ありがとうございます。それでは青の村からの返礼品をお受け取り下さい。袋をお二人の前に」


 イリュキンが言うと袋を持っていた二人の水守(みずもり)村長(むらおさ)とラカムタさんの前に進み袋を地面に下ろした後に一礼してイリュキンの後ろに戻った。……地面に下ろした時にドスンって鈍い音がしたんだけど、何を持ってきたんだろ? でも、まあこれでイリュキンが黒の村に戻ってきたね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


感想・評価・レビューなどもお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ