大神林の奥にて 連携と砲撃
「ガアアアア!!!!」
「ブオオオオ!!!!」
「ギィイイイイイ!!!!!」
鬼熊の爪と破壊猪の牙が魔石の身体になっている硬金樹を破壊していく。それに対して魔石も大量の触手を生やして二体を串刺しにしようとしているが、ディグリに戦意の火を着けられて完全に全力の戦闘態勢になった二体の身体に触手は全く刺さらない。まあ、時間が経つ毎にメキメキとかギチッっていう音をたてながら身体を強化しているから当然だよね。特に鬼熊なら両前足と破壊猪なら後ろ足の強化がすごくて目に見えて太くなっている。僕と戦った時は本気にはなってくれたけど、全力には程遠かったって事か。…………今は仕方ないって考えよう。
「次に戦う時は全力を出させるからね」
「ハイ、楽シミニシテマス。デスガ、負ケルツモリハマッタクアリマセン」
「わかってる」
「ギィイアアアアア!!!!!」
二体に硬金樹の身体を破壊され、自分の触手が効かないと判断した魔石が大きく叫ぶ。何かするつもりって二体も感じたようで少しだけ離れて見ていると魔石は、僕の指と同じ太さの触手を太い丸太と同じくらいになるまで束ねたものを六本作ると思いっきり振り回してきた。とっさにディグリが僕を地面に下ろして僕の上に覆いかぶさる。
ズバァァァァァァァン!!!!!
魔石の六本の触手が起こした爆風がおさまり周りを確認すると、周りに林立していた樹々が全てなぎ倒され二体は触手の衝撃により弾き飛ばされていた。二体を弾き飛ばしたのは驚いたけど、それよりも魔石がまた関係ない植物を傷つけた。しかも魔石は、また笑ってる。…………この野郎。僕がムカついて魔法を発動させようとしたら、僕の隣からビキビキビキビキっていう音が聞こえてきた。
音はディグリの左腕からで、見たら魔石の触手に壊されたとかじゃなくて縮んで先が大きなコブ状に変形させているようだった。そして腕の変形が終わりボールを投げるように腕を振って魔石に伸ばしていく。当然、魔石は防ごうとするけど最速で魔石の防御の間を縫って伸びていくディグリの攻撃を防ぐ事はできなかった。
ディグリのコブが当たった部分からゴゥンッていう金属同士がぶつかった鈍い音がする。コブの部分も硬金樹に劣らない硬さで、前世の大きな建物を破壊する重機みたいに魔石が怯むくらいの衝撃を与える。ただ重機と違い魔石が防御できないように当てては戻しを繰り返すから魔石の表面はボコボコになっていく。
「本当ニ、本当ニ、気ニ入リマセンネ」
ディグリは基本的に淡々と感情を込めずに話すけど、今のディグリの声からは強い怒りを感じる。でも僕も同じだから驚かない。赤のクトーや青のヌイジュは関わり合いになりたくない奴らだけど、魔石は周りの害にしかならないし絶対に確実に今排除しないとダメな奴だ。
魔石が遠くから攻撃してくるディグリには触手二本で突き刺しにかかり、鬼熊・破壊猪の二体には触手三本を振り回して近づけさせないようにし、残りの一本は用心の為か使っていない。へえ、三体を相手にしてるこの状況でまだ余裕があるんだ。良い度胸してるね。だったらその余裕も無くしてやる。
「ディグリ、僕の事は良いから前に出て」
「ソレハ……」
「魔石の事はわかったから、僕は大丈夫」
「…………」
「大丈夫だから」
「……ワカリマシタ。決シテ警戒ヲ怠コタラナイデクダサイ」
「もちろん。それじゃあ攻撃よろしく」
「ハイ」
ディグリが右腕も左腕と同じように変形させて近づき、魔石の触手を避けながらさらに魔石をボコボコにしていく。魔石の注意がディグリにいけば二体が強引に触手の振り回しを抜けて爪や牙で破壊する。逆に二体に注意がいけばディグリが攻撃回数を増やす。さあ、近距離の二体と中距離のディグリのどっちかに集中できないこの状況で余裕を残せる?
「ギィアアアアアア!!!!!!」
たまらず魔石が残りの触手も三体への攻撃に使い始める。うん、これで魔石に余裕は無くなったはずだから、これで次の段階に進める。僕は周りの魔石になぎ倒された樹々から力を別けてもらう。植物は雑草なんかのように茎や葉を切り取っても根が土中にあれば再び生えてくるし、一部を地面に植えれば根が生えてくるくらいの生命力がある。
つまり周りのなぎ倒された樹々はまだ生きているからこういう事ができる。でも傷ついてる事には変わらない。魔石をできるだけ早く倒して治療はするから今は耐えてってお願いした。……なんか樹々の気配が歴戦の傭兵が傷ついて血まみれになりながらもニヤリって笑ってる感じに変わった。…………いつもは物静かなお坊さんみたいな植物達もやる時はやるって事か。かっこいいな。それなら僕も負けてられない。
「緑盛魔法・純粋なる緑」
ただでさえ近距離の二体と中距離のディグリの攻撃で余裕がなくなっている状況で、さらに遠距離攻撃の僕が加勢する。三体も固定砲台となってひたすら射ち込む僕に魔石の触手が向かないように派手に動いていてくれた。本当に頼りになる。これだったらもっと激しくしても良いかな。僕は純粋なる緑を放ちながら、新しい魔法を発動させた。
「緑盛魔法・樹体大砲」
魔石になぎ倒された樹々の破片が集まり緑色に光り変形して現れたのは、放つ砲弾も圧縮された木片の木材でできたいくつもの大砲。三体が攻撃してくれてる間に準備した一斉砲撃を受けきれるかな。僕が右手を上げると三体は素早く砲撃範囲から移動した。そして三体が僕を見てうなずくと僕は右手を振り下ろす。
ドン、ドン、ドン、ドンドンドン、ドドン、ドドドン、ドドドドドドドドドドドドドドドドドン。森の中に鈍い砲撃音が響き次々に魔石に着弾した。木片の砲弾が触手を破壊して幹もえぐる。そしてそのえぐられた場所に純粋なる緑を集中させて傷口を広げていく。しばらくして砲撃が止むと硬金樹の身体がボロボロになった魔石がいた。硬金樹の表面に出ていた魔石の顔も原型をとどめていない。そんな魔石へ僕がゆっくり近づくと根が僕のいる地面から突き出てくる。うん、やっぱりこうなるよね。
「ギィ!?」
魔石が僕が根を避けた事を驚いていた。死んだフリからの奇襲なんてのが二度も通じると思った時点で僕を舐めてる。僕は周りの樹々が根から感じる振動を教えてもらい、突き出てくる根の位置がわかったから一歩下がって避けて目の前に出てきた魔石の根に触れる。
僕はこれを待ってた。触手は魔石自身のものだろうけど、この突き出てきた根は硬金樹の根を操ったもの。だったら硬金樹自体は元々僕が魔法で成長させた奴だから魔石が支配してても僕の魔法が効くはず。さあ、僕の緑盛魔法とお前の支配力どっちが上か綱引きだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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