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青の村にて 感覚の強化と質の変化

 兄さんは僕としっかり約束できて満足したのか、再びラカムタさんとタキタさんの方に視線を戻した。僕も視線を戻したんだけど、僕の場合このままだと二人の動きが見えないから、とりあえず強化魔法(パワーダ)を発動させる。


強化魔法(パワーダ)


 お、視力を強化したら、さっきよりは見えたけど、それでもブレが大きくてラカムタさんとタキタさんの輪郭がはっきりしない。強化魔法(パワーダ)を発動させて、これという事は根本的に僕の動体視力が足りないんだね。


 ……よし、あの手でいこう。僕は腰の小袋の中から小分けにしておいた小包みを取り出す。一応同調で小包みの中身の状態を確認して問題ないと判断した後、掌に数粒出して魔法を発動させる。


「緑盛魔法・視覚強化(クリアアイ)


 魔法が無事に発動したので一粒を口に含み飲み込む。……成功だ。ラカムタさんとタキタさんの動きがよく見える。…………うーん、見えるようになったら、それはそれで僕は格闘をしないし知識がないせいで問題があった。二人の動きは複雑だから、どの動きにどんな狙いがあるのかや、どの動きが効果的になってるのかがわからない。まあ、それでも最上級の動きを見れるのは良い事だから、じっくり見よう。


「ハハハハハハハハハハ‼︎」

「フハハハハハハハハハ‼︎」


 笑い声が大きくなってきてるし二人とも楽しそうだ。お、ラカムタさんのえぐりこむような突きを、タキタさんがフワッとした円を描く動きで受け流そうとしたけど、そのタキタさんの腕をラカムタさんがつかもうととして、すぐにタキタさんはラカムタさんの意図を見切り腕を引いた。


「ラカムタさんとタキタさん、二人とも手数は同じくらいだけど、基本的にラカムタさんの攻めをタキタさんがさばいてる感じだから、主導権はラカムタさんが握ってるのかな?」

「ヤート殿の言う通りですよ。なかなかの観察眼をお持ちのようですね」

「うん、よく見えるようになる魔法を使ったから」


 僕が言うとイーリリスさんは、僕の持っている種に目を向けた。

 

「先程ヤート殿の食べてた種に、そんな効果が?」

大神林(だいしんりん)の植物で滋養強壮作用がある種類だから、その成分を目に集中させたんだ」

「あの二人の動きが見切れるようになるんですから、すごい効果ですね」

「リンリー、逆に言えばそれだけ強く強化しないと僕には見えないって事。こういう時は欠色(けっしょく)の身体は不便だなって思うよ」

「ヤート、お前の強みは冷静さと取れる手段の幅の広さだ。気にするな」

「兄さん、ありがとう」

「それでだ、ヤート……」

「何? 兄さん」

「その種が俺にも効果あるなら使わせてくれ」

「良いよ。はい」

「おう、助かるぜ。……おお‼︎ これはすごいな」


 さっそく兄さんは視覚強化(クリアアイ)の効果付きの種を飲み込み、その効果に驚いていた。まあ素の能力値の高い兄さんの方が効果は強くでるはずだから驚くのも無理はないかな。


「ヤート……」

「「ヤート君……」」

「ああ、ごめん。気が利かなかったね。姉さん達も使ってよ」


 種を渡すと姉さん達も、すぐに種を飲み込む。僕はその様子を見て周りが気になり広場を見回すと、このままじゃ不公平になるって感じて視覚強化(クリアアイ)の効果付きの種を十数粒生み出し近くにいた青の大人に視覚強化(クリアアイ)の効果を説明して、種を使っても良いと思う青の子供達へ渡してと頼んだ。


 種を受け取った青の大人は、一瞬複雑な表情になったけど、すぐに気を取り直して青の子供達の集まっているところに近づいていく。これでだいたいの人がラカムタさんとタキタさんの動きを見れるようになるはずだ。


「ヤート殿、お気づかい感謝する」

「私からも、お礼を言わせてください。ありがとうございます」

「気にしなくて良いよ。ラカムタさんとタキタさんの手合わせっていう見るだけでも勉強になるのを見れないのはもったいないなって思っただけだから」


 ハインネルフさんとイーリリスさんにお礼を言われた後は、みんなでラカムタさんとタキタさんの手合わせに集中した。




 しばらく見ているとラカムタさんとタキタさんの動きに変化が出てきた。それまでは二人の身体で動いていたのは両手だけだったけど、徐々に両足も動くようになる。


 つまり二人は蹴りを使うようになったという事で、その意味は大きい。なぜなら手技のみの時は左右の二択だったけど、そこに蹴りが加わる事で蹴り足の左右二択と蹴りの高さ上段・中段・下段三択が加わり、攻撃手段の選択肢の増加という意味で手合わせの質が全く違うものになったからだ。


 具体的に言うと、ラカムタさんとタキタさんは威力のある蹴りを囮に突きを当てようとしたり、逆に手技の数を増やして両腕に意識を向けさせた後に蹴りを放ったりと駆け引きをするようになった。


「これは……」

「さすがとしか言えませんね……」


 僕がわかる範囲でも、すごい数の駆け引きなのに、ハインネルフさんとイーリリスさんが唸っているところからすると、僕のわかる範囲の数倍は駆け引きをしてそうだ。


「なんでおっさん達は一発も当たらねえんだ?」


 兄さんの疑問はよくわかる。ラカムタさんとタキタさんは本格的に手合わせを始めてから、手合わせの質が変わっても、二人は一切お互いの打撃を被弾してない。やっぱりラカムタさんとタキタさんくらいの実力者同士の手合わせになったら当てるだけでも一苦労なんだな。


 本当に見応えのある……いや、見応えしかない二人の手合わせだけど、まだ嫌な予感はしてるから終わるまでは気を抜かずに見ていよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


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