決戦にて 激突の結果と新たな魔法
魔石の視線が、もう僕しか見てないって感じだ。その考えが行動にも出て僕への突進だからわかりやすい。それに対する僕の行動も単純で、魔石から逃げたくないので迎撃する。
「緑盛魔法・超育成・樹根撃拳」
僕の周りの足もとから根が何本も出てきて絡んでいき、巨大な根の拳と太く強靭な根の腕を形作る。そこからギチギチと音を立てながら根の腕が僕の後ろに引かれ、殴る前の振りかぶった状態になった。
魔石の黒い水の防御を超えられるかはやってみないとわからないけど、さすがにこれだけの大質量を高速で打ち込めば全く通じないという事はないはず。まあ、仮に通じなかったとしても、その時はその時でなんとかすれば良いだけだ。
「ギィイイ!!」
魔石が僕の迎撃態勢を見たのか叫び声を上げて、固めた黒い水で僕の方に向けてる面をどんどん鋭角に変化させ僕を貫くという魔石の意思を現す槍の穂先のような形になった。
しかも魔石は黒い水の形状を変えてる最中も、後方の面を伸ばして苔達の地面を押し自分を加速させている。僕は僕でそんな魔石の様子を見て、生やす根の本数を増やし樹根撃拳を強化していく。これで決められると良いんだけどな。
「殴れ・樹根撃拳」
「ギャギィアアア!!」
あと数瞬で魔石が僕へと到達する時に、樹根撃拳の巨大な根の拳と魔石の槍のように鋭角に固まった黒い水が激突してドバンッと衝撃波と衝突音が拡がった。そして、その結果は…………決着つかずの相打ちとなった。僕の樹根撃拳は拳部分が壊され、魔石は固めた黒い水の鋭角部分が樹根撃拳に砕かれたから引き分けだね。
ただ、魔石を遠くに殴り飛ばせたという点を考えると僕の勝ちって言えるかもしれない。とはいえ問題は樹根撃拳でも決定打にならなかった事。さらに威力のある魔法がいるのか、……魔石はまだまだ殴り飛ばされた勢いが無くなりそうにないから魔法の準備をするとすれば今だね。
「緑よ・緑よ・我が望む大砲となれ」
魔石に拳部分を砕かれた樹根撃拳がばらけ、そのまま世界樹の杖に絡みついていく。そして完成したのが世界樹の杖を核とした長大な樹根の大砲。僕はこれからこの樹根の大砲に力を集める。
「緑よ・緑よ・我に力を」
僕が呼びかけると地面になってる苔達・聖月草・発光栗がドクンと脈動してから緑色の魔力を放ち、その魔力が世界樹の杖に集まってきた。……ああ、この感覚は苔達が地面になっていて見えないけど、大霊湖の水生植物達も力を貸してくれてるね。
植物達の緑色の魔力が世界樹の杖に溜まり、次に樹根の大砲に流れていく。…………魔力面はともかく制御するのがきついな。世界樹の杖・樹林緑地界降臨・樹根の大砲を同時に発動してるわけだから当たり前か。泣き言を言ってる暇はないから僕は僕のできる事をするだけだ。
「ギィッ!!」
ようやく樹根撃拳に殴り飛ばされた勢いが止まった魔石が、すぐに僕の方を見て叫ぶ。これは僕が魔石を消滅させれる魔法を作り上げようとしてるから当たり前で、魔石が僕の魔法の完成を阻止するために動き出すのも当然だね。
「ギィギィアッ!!」
魔石がまた自分を押し出して僕の方に来ようとする。僕は樹林緑地界降臨を維持するために世界樹の杖を地面に突き刺していて動けないし、魔法を完成させるために迎撃もできなくなっている。このままだと僕は何もできずに魔石に襲われるだろうけど、僕は一人じゃない。
「ガアッ!!」
「ギャ!!」
僕への突進を始めた魔石が鬼熊の前足の振り下ろしを受けて、また吹き飛ばされる。そして魔石が体勢を立て直した時には、僕と魔石の間にみんなが陣取って魔石をにらみつけていた。
「おい、ヤートのところに行けると思うなよ?」
「ガア」
「ブオ」
「絶対二通シマセン」
「これ以上、大霊湖で暴れさせるわけにはいかん」
「本当にその通りです」
「何よりここで奴を見逃せば、青にとっての末代までの恥」
ラカムタさん・三体・ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんが魔石の相手をしてくれるなら安心だ。僕が目を閉じ集まってくる植物達の魔力の制御に全神経を集中すると、それを合図にラカムタさん達と魔石の戦いが始まった。
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