決戦にて 魔石の狡猾さと溜まっていくイラつき
「おい!!」
「何をする!!」
「相手が違うだろ!!」
虚ろな目をした青の竜人が手足を振り回してみんなに襲いかかっている。……あの青の竜人の目は兄さんと姉さんがおかしくなってた時の目と同じだ。これで兄さんと姉さんをおかしくしてたのは魔石って確定と。兄さんと姉さんの雰囲気が剣呑なものになっている。
「……リンリー、イリュキン、俺とマイネはあんな感じだったのか?」
「似てるけれど同じじゃない」
「私もそう思います。ガル君とマイネさんは、無意識でも魔力を使いながら上手く戦ってきたので数段厄介でした」
「まあ、確かに……な!!」
兄さんが魔石に操られてる竜人の振り回してくる腕を受け止め、強引に苔の地面に引きずり倒す。すぐさま押さえ込み気絶させるなり動けなくしようとしたところで、魔石の黒い水でできた触手が何本も兄さんに迫ってきた。
兄さんが青の竜人を押さえ込んだせいで動きが止まったから狙われたみたいだね。魔石はどこまでもうっとうしいやり方をしてくるな。
「ガル、すぐに離れて」
「一旦、下がるんだ。ガル」
「ガル君、引きましょう」
「……チッ、わかったよ!!」
兄さんは迫ってくる魔石の触手から姉さん達に守られて、素早く起き上がりその場から離れる。しかも兄さんは起き上がった時に、押さえ込んでいた青の竜人を振り回して魔石からかなり離れたところに放り投げた。
……いくら大霊湖の水面が苔達に覆われてるとはいえ、結構な高さから落ちたら痛いはず。あの人、大丈夫かな? イリュキンが一瞬兄さんに投げられた青の竜人を心配げに見たけど、すぐにみんなをからめ取ろうとする魔石の触手への対応に戻る。そんな中、新た青の竜人の一人が魔石の触手に捕まり魔石の前へと運ばれる。
「クソッ!! そうはさせるか!! ……チッ!!」
「ギィ」
「この野郎……」
捕まった青の竜人を助けるためにラカムタさんが竜人息を放とうとしたら、魔石が捕まえた青の竜人をラカムタさんの竜人息の射線上に移動させた。魔石のやり口にキレかけるラカムタさんの横をイリュキンが走り抜け魔法をする。
「水帯!!」
「……ギ」
「姫さま、ありがとうございます」
「礼は良いから動くんだ!!」
「はい!! ……姫さまお逃げください!!」
「っと、本当に戦いにくい」
イリュキンが水帯で魔石の触手を断ち切り捕まっていた青の竜人を助けたけど、魔石の触手がイリュキンの水帯に触れて侵食しだす。イリュキンはすぐに反応して水帯を解除したものの、出現させていた水帯のほとんどが侵食されて魔石の触手になった。
この大霊湖の魔石は、水を戦闘に使うイリュキン達青の竜人とは相性が悪すぎる。ラカムタさんも僕と同じ事を感じたのか、大声でみんなに注意を促していく。
「青は魔石に対して水を使うな!! 逆に利用されるぞ!!」
「……腹立たしいがそのようだ。皆、魔石への攻撃は黒と魔獣達を中心に行く。我ら青は彼らを守るぞ」
ハインネルフさんの号令に青のみんなは苦々しく思いながら僕達の守護に徹してくれた。その対応を見てラカムタさんと三体は魔石への攻撃に専念する。……気になるな。魔石がラカムタさんと三体の攻撃で攻め立てられてるのに笑ってる。…………しまった。魔石に注意を向けすぎた。
「みんな!! 魔石に操られてる人に気をつけて!!」
「何!?」
「不味い!!」
「ギ」
魔石に操られてる青の竜人が魔石の触手による激しい攻撃に紛れて、みんなの近くでジッとうずくまっていた。そして魔石が声を出すと、魔石に操られてる青の竜人の両手をみんなの方に伸ばして水帯を発動させた。さすがにこれは盲点過ぎてみんな対応できず、五人の青の竜人がからめ取られる。
「あいつ、魔法を使えたのかよ!!」
「……魔石がわざと稚拙な動きをさせていたとしか思えませんな」
「私達は完全に馬鹿にされていますね」
「ギィィィィ」
魔石はそれを見て笑うと五人の青の竜人を黒い水の触手で奪い取り自分の目の前に運ぶと目を開き黒紫色に光らせた。光を浴びた五人は最初の一人と同じくピクリとも動かなくなる。魔石が五人を苔達の地面に落とすと最初の一人が五人のもとへ合流する。そして五人が不自然な動きでむくりと起き上がり、最初の一人といっしょに魔石を守るように並んだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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