第3話
「だめ……なにその姿……いや、格好……。萌えすぎて死にそうだよ……」
「くそ、この俺が……!こんな屈辱を受けるとは……!」
華美の膝の上にフェニックスが座ると、華美はフェニックスに腕を回して落ちないようにした。
それをされて、更にフェニックスのプライドは傷ついた。
「じゃあフーちゃん!私の膝の上に来る?」
「おめぇも対して漢字読めねーだろ」
「よ、読めるもん!」
「……。議事を進めても?」
「あぁ……!うん!いいよ!進めて猛!」
「じゃあ……んん。今日の入学式ですが、式の進行は我々生徒会が行います」
「いつも通りだねー」
「はい。特にこれといって重要な案件はありませんが、会長。代表挨拶お願いします」
「ええ。分かっているわ」
「後は自警団と連絡を取り合いながら式を円滑に進めましょう。これで入学式については終わりになります。あとは各自プリントに目を通しておいて下さい」
猛の終わりと言う言葉を聞いてから、各自息を吐きリラックスした。
特に疲れているわけでもないのだが、何故かやってしまうのは性なのかもしれない。
「自警団と連絡を取り合いながらねー」
「なのは先輩今更心配した所で変わらないですよ。我々が自警団に合わせましょう」
「だねー」
「華美これはなんて読む?」
「これはねフー君」
分からない単語をフェニックスに教える華美。
その二人の様子を眺めるなのはたんぽぽと悶えてる紅葉。
その緩やかな空気に再び戻った時、猛が口を開いた。
「では次に、ポストが空いている庶務についてなのですが」
「今日入ってくる新1年生から採用する予定なんだよねー?はーちゃんー?」
「ええ。そのつもりよ」
「最有力はやっぱり、新入生代表挨拶をする彼女ですか?」
「そうね。できれば彼女に庶務をしてもらいたいとは思っているわ。彼女なら1年生とは言っても生徒会の仕事を全うできると思うもの。入学式が終わって落ち着いたら勧誘しに行くつもりよ」
「ちょっと待って下さい。それは会長自ら勧誘しに行くということですか?」
「……?えぇ。そうよ?」
「それなら僕もついて行きます」
「どうして?」
「どうしってそりゃ……」
「そりゃはーちゃんのことが……怖い!怖いよ!たーくんー!?」
「私が何なの?」
「な、何でもありません。僕はただ会長が1人で行くべきではないと判断しただけです」
「そう?じゃあフー君一緒に来て」
「なっ……!」
「はーちゃんそれは……」
「会長。いくらなんでも今の流れでそれは……」
「……?だって一人で行くのはダメなのでしょう?だったらフー君と一緒に行ってもいいじゃない」
「まーそうなんだけどー」
「そうなんですけどー」
猛の好意にまるで気づいていない華美は、天然というか、なんというか、場の空気を微妙にするのには長けていた。
これでも名門、毘沙門高校の生徒会長なのだから分からない。世の中には不思議なことで溢れていた。
「ていうか、俺は行かねぇぞ?」
「……どうして?」
フェニックスがそう拒否を示した後、華美は不思議そうに首を横に振った。
まさか、断られるとはこれっぽっちも思っていなかったからだ。
本当に不思議な顔をする華美を見て、フェニックスは一つため息をついた後、理由を述べた。
「俺がこの姿でほいほいと1年が集まる所にでも行ってみろ。すぐにマスコット代わりにされてお終いだろ」
「確かに……!」
そう力強く答えたのは華美ではなく、紅葉だった。
目をキラキラとさせながらうんうんと頷く紅葉は、マスコットとなったフェニックスを想像して少し涎を垂らしていた。
これでも去年、毘沙門美少女ランキングトップ5なのだから、分からない。
「つーわけでそこのやつと行ってくれ」
「おい。誰がそこのやつだ。ケンカ売っているのか?」
「あぁん?また負かされたいのか?」
「上等だ。決闘してやる……!」
「ストップ。分かったわ。フー君が行かないと言うのならば、連夜くん一緒に勧誘しに行きましょう」
「会長がそう言うのなら、仕方ありませんね」
「またまたーうれしいくせにー……だからねー?たーくんー?怖いからねー?」




