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第13話

一年生同士による模擬戦及びエキシビション当日。


朝、氷麗が登校すると、各所にあるモニターに今日行われる模擬戦のトーナメント表が張り出されてあった。


入試で上位10人はシードとされ、当然入試1位である氷麗は第1シードでトーナメント表に名前があった。


反対ブロックには自警団からスカウトされたという入試成績2位の烈火灼熱の名前も見つけ、当たるならば決勝という組み合わせだ。


「いよいよ今日だね!」


氷麗の横に並び話しかけてきた人物は氷麗の友人である光だ。明るい性格の持ち主で氷麗以外の友人も多数いる。

友人作りが苦手な氷麗に取っては尊敬できる友達で、話しかけてもらった時の嬉しさは今でも覚えている。


氷麗とは違い戦闘向きでない能力の持ち主のため、今回の模擬戦には参加しないのだが、やはり気になるようで熱心にトーナメント表を見つめていた。


「男子が興奮してたもんね。やっと力を試せるって」


「まぁでも勝つのは氷麗で決まってるけどね!」


「それは……どうかな?」


フェニックスに敗れて以来、氷麗は自信を全面には出さないようにしていた。出さないようにと言うよりは出せなくなっていたという方が正しいかも知れないが、まだ見ぬ自分より強い人がいるかもしれないという憶測を氷麗は持つようになっていた。


「優勝候補ブッチギリのNo.1なんだからもっと胸を張っていいんだよ!」


「私が優勝候補?!」


「そうに決まってるでしょ?首席なんだから!」


まさか自分が優勝候補に名前が上がっていたとは露ほど思ってなかった氷麗は、驚きと共に少し気合いを入れる。優勝候補に恥じぬ戦いをしよう!と。


「じゃ私生徒会室に行ってくるね」


「あ、うん!じゃまたね!」



氷麗が生徒会室の前に立つと中から怒号が聞こえてくる。声の高さからしてフェニックスだと分かる。


恐る恐るノックしてドアを開けるとフェニックスが怒った表情で猛に向かい、その猛はフェニックスを片手で制し、その制されているフェニックスの姿を見て紅羽が悶え倒れているというなかなかすざましい状況になっていた。


「どうして俺が一番最後なんだ!最初にやらせろ!」


「うるさい。これは会長が決めたことだ。これがベストと判断したからこうしたんだ」


会話の内容を聞いて氷麗がホワイトボードに目を向けると、エキシビションのメンバー表が書いてあった。


先鋒 猛

次鋒 紅羽

中堅 たんぽぽ

副将 華美

大将 フーくん


「これじゃあ初っ端から一敗をプレゼントするようなもんじゃねーか!」


「なんだと!?もう一回言ってみろ!」


「何回だって言って……離っ下ろせ!華美!」


猛に食いかかろうとしたフェニックスを華美が抱き上げ、それを見た紅羽が再び悶え倒れた。その様子をたんぽぽは楽しげに眺めている。


「フーくんよく考えて」


「あんだよ」


「この中で1番誰が強いの?」


「俺に決まってるだろ!」


「でしょ?でね、この大将って言うのはね?1番強いひとのことなの。で、この大将をやるには誰がやらなきゃいけないと思う?」


「……俺だ」


「そう。だから私はフーくんを大将にしたの。意地悪で最後にしたとかじゃないから分かって?」


「んだよ。だったら最初から言えよなー」


華美の上手い理由説明に氷麗は関心し、さりげなくメモを書いた。


「てことは一番はじめのお前は弱いからか。ま、頑張れよ。俺が挽回するからよ」


「うるさいぞ捨て大将」


「捨てた衣装?」


フェニックスの強さ的に捨て大将ではないのだが、皮肉たっぷりに猛は言った。しかし、意味の分からないフェニックスには効果はなかった。


「こういうオーダーで組んでみたけど皆大丈夫?」


フェニックスなが駄々をこねたこともあってか不安になった華美がオーダーの確認を取る。


それぞれ了承したという顔をしていて、フェニックスのように駄々をこねたり、不満がる者など出なかった。


「なんか懐かしいねーエキシビションでも自警団と模擬戦なんてさー」


ニコニコしながらたんぽぽがそう言うと、華美以外のメンバーはたんぽぽの方に向き、次の言葉を待った。


「ん?あ、そっかー皆知らないのかー。私とはーちゃんが1年生の時にもあったんだよねー自警団との模擬戦ー」


「会長が1年の時にも今回のような状況になったんですか?」


代表し猛が質問をする。


「そだよー。今よりもっと対立しててねー何かとあれば争ってたなー。模擬戦模擬戦模擬戦って感じでねー。まぁそれがキッカケではーちゃん無双伝説が始まったんだけどねー」


「辞めてよ恥ずかしい」


羞恥を表に出さない華美が珍しく頬を染める。

その光景にドキッとしつつも猛は昔から華美が神がかり的な強さを発揮していたことを知る。


「ふんっ今日からは俺の伝説に塗り替えてやるっての」


華美の伝説を聞いて、少し釈然としないフェニックスが口を尖らせる。

そのフェニックスを華美はハイハイと撫でていた。

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