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第11話

「それでは明日から始まる部活動勧誘週間についてですが」


5対5で座っている会議室に猛の声が響き渡る。

上座側、出入口から遠く窓際付近に並んで座っているのは生徒会の面々。

奥から華美、たんぽぽ、ひとつ空いて紅羽、そして庶務として生徒会に入った氷麗。

今は議長として立っているが、本来なら空いている席には猛が座る。

そしてフェニックスの姿もまた紅羽の膝の上にあった。ジャンケンで華美に紅羽は勝ったのだった。


そして、反対側には自警団の面々が座っていた。

さっき5対5と言ったが、これには間違いがある。

正しくは6対4。なぜ自警団側が4なのかと言うと。


「議事を進める前に1つ。なぜ団長は来ていないのですか?」


議長である猛が、自警団のトップである団長が来ていないことを聞く。

本来自警団の団長が座るところにはお情け程度にぬいぐるみが鎮座していた。


「それは私から説明しよう」


そう言って口を開いたのは、自警団のNo.2副団長の大和梓(やまとあずさ)

艶のある長い黒髪を一つ結びにした髪と鋭い目が特徴の美少女。護身のために常に刀を腰に下げているせいかその表情と相まって近寄りがたい雰囲気を醸し出している。しかし、見てくれはいいだけに男子の人気は高い。


「修行に出ているため団長はこの会議はおろか数日間学校を留守にする」


「なっ……?!」


まさかの梓の言葉に猛は驚いた。


「自警団のトップであるのにも関わらず学校を留守にしてるなんて生徒会は何も聞いてませんよ!」


「それは言わなければいけなかったのか?」


「と、当然に決まってます!何を」


「猛くん落ち着いて」


頭に血が上っている猛を華美が宥めた。


「梓さん」


「なんでしょう?」


「次回からは生徒会にも話を通すようお願いします」


「話を……ですか」


含みのある返答に華美の眉尻が上がる。


「なんでしょうか」


「話を通すようにと言うのであれば、その小さいのをこの会議室に連れてくることなんて我々は聞いてないのですが」


「ほう……」


いきなり自分の話題になったことでフェニックスもまた目つきを険しくした。

そして、若干であるが、紅羽も険しくなったのをフェニックスは感じ取る。


「それもそうですね。私たちにも落ち度があったことは認めます。しかしながら学校の警備及び防衛を任されている自警団のましてやトップである団長が不在というのはいささか疑問に感じます」


「いーじゃねーか華美」


殺伐とした空気の中でフェニックスが意気揚々に話し出した。


「俺にボコられたから修行だかなんだか知らねーがに行ったんだろ?雑魚の1人や2人居ないところで変わるはずがないんだからどーんと構えとけば」


フェニックスの首スレスレで梓の出した刀が止まっていた。

いや、首スレスレでフェニックスが指で抑えている。


「今の……ガチで殺す気で来たな?」


「当たり前だ。団長を侮辱したその罪万死に値する!」


「いいぜやろう。俺も暴れたいと思ってたところだ」


「ていっ!」


「痛っ!何すんだ紅羽てめー!」


「何すんだじゃないよフーちゃん!ケンカをすぐやるなんてお母さん教えてないよ?」


「お前はおれの親じゃねーだろうが!」


「いいからすぐにケンカするだなんてフーちゃんはやっぱり見たまんまの子供だね」


「何言ってんだ!俺は子供じゃねー!」


「だって大人だったらすぐにケンカなんてしないよ?」


「……っち。わーったよ大人しくすればいいんだろ」


「うん!よろしい!」


一連の流れを生徒会そして自警団は見ていた。


「フーちゃんとくーちゃんは仲いいねー」


「なるほど。ああいう風にフェニックスさんを手懐ければいいんですね」


氷麗は紅羽のフェニックスに対する扱い方をみて学び、たんぽぽはのほほんとした眼差しで、2人を見ていた。


そして、視線を変えないまま、すごく優しい口調で


「ということでいいかなあーちゃんー。ここは席についてもらってー」


その声は優しい口調とは裏腹にひどく恐怖を覚える声音だった。

梓はしぶしぶといった形で自分の席へと戻る。


「猛くん議事を進めて」


華美の言葉にはっとした猛が再び議事を進行する。


「いよいよ来週から部活動勧誘週間ですが、昨年同様警備の方は自警団に一任します」


「部活動勧誘週間ってそんなにすごいんですか?」


新入生である氷麗が質問する。

その氷麗の言葉にふんと鼻をならた生徒がいた。


「首席様はそんなことも知らないんだな。違うか通過点としか見てないから興味ないのか」


氷麗の目の前に座る逆立つ赤い髪が特徴の男の子。烈火灼熱(れっかしゃくねつ)1年。

自警団がスカウトした新入生だ。


氷麗は灼熱の言葉にムッとしたがここで反応しては議事が進まないと判断し自重した。


「まさか次席をスカウトしていたとは」


すでに自警団入りしている灼熱を見て、華美が呟く。


「そちらが雪城氷麗をスカウトしたように我々もスカウトを行っただけだが?」


梓が華美の言葉を拾い、半ば喧嘩腰で説明する。


空気がまた殺伐とした中で猛がすぐさま話題を変えた。


「来月の新人戦について議事を移しましょう」

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