第10話
「何者って魔王の息子だけど?」
フェニックスはありのままに事実だけを述べた。
特にどういうわけでもなくそのままに。
異世界の魔王の息子だという事を。
「魔王の息子って……本気で言ってるんですか?」
自分から質問しておいてなんだが、氷麗はフェニックスの回答に疑ってしまう。
しかし、子供特有の言っては失礼になってしまうが、汚れのない純粋な瞳をしているフェニックスを見ると、本気で言っていると信じてしまう。
「本気に決まってるだろ?俺は嘘なんかつかねーし」
「でもこの前フー君、ピーマンを食べたくなくて」
「おい華美!それは言うなって言っただろ!」
「ふーちゃんピーマン食べられないんだー」
「ち、ちげぇし?食えるし?ちょっと味が大人すぎるから19の俺にはまだ早いかな〜って思ってるだけだし?」
「え?ちょっと待って下さい?19?もしかして19歳なんですか!?」
「あ?そうだけど?」
「初対面だから敬語を使っていましたが、まさか歳上だったとは……しかもその見た目で」
「おい。見た目は関係ねーだろ」
「関係あると思うよ?ふーちゃん」
衝撃の事実に氷麗はうなだれた。
まさか、こんな小さな身体をしている子が自分より強くて、なおかつ自分より歳上だなんて。
「ということはやっぱり魔王の息子って言うのは」
「本当に決まってるだろ?魔力だって持ってるし。実際にお前に使っただろ?ちなみにこの身体は異世界からこの世界に来た影響かなんかで小さくなった」
ここで確信へと氷麗の心は変わった。
こんな小さな身体をしている子が魔王の息子なんだと。にわかには信じれないが、本人もそう言っているし、実際にフェニックスの攻撃も受けているから氷麗には分かる。
魔力とはその名前の通り、魔の力のことである。
いくら特別人間と言っても人間である氷麗たちには魔力などありはしない。
だからフェニックスの魔力攻撃には為す術がない。
何も出来なかった氷麗は痛いほど覚えている。
「そうなんですね」
と、氷麗はすべてを理解した口調でそう言った。
「ふーくんへの謎は全部解けたかなー?」
たんぽぽが氷麗に聞く。
「全部……ではないですけど、謎は解けました。いえ、逆に深まりました」
「深まったー?」
「はい。どうして身体が小さくなったのか、とか」
「だからそれは言ったろ?こっちの世界に来た影響かなんかで」
「それは分かります。けど、どうして身体が小さくなるんですか?普通に考えれば不思議です」
「確かに……不思議だ」
氷麗の言葉にフェニックスは頷いた。
確かに言われてみればそうだ。
こっちに来た時は影響のせいだとばかり思っていたが、じゃあなぜそんな影響が?というか影響とはなんだ?フェニックスは考え込んだ。
「この世界じゃないが、何回か他の世界には行ったことがあったしな……そん時は今みたいなことにはなってないし……勇者の仕業か?」
この世界に初めて来て以来、身体が小さくなったことに対して真剣に考えてみるが、フェニックスには分からなかった。しかし、勇者がキーになるのは間違いないと改めて確信した。
「んん。皆さんいいですか?」
フェニックスの身体について各自各々思っていると、猛が咳払いをして注目を集めた。
「週末明けから行われる部活勧誘週間の話をしたいのですが」
「そうね。せっかく全メンバー揃っていることだしね」
華美が氷麗に目配せをして、もう生徒会のメンバーなんだという自覚を持たせた。
その華美の目配せになぜだが氷麗も嬉しくなった。
自分は必要とされているのだと。
「そう言えば氷麗っち入学式でここを通過点としかーって言ってたよね?」
「うっ……それは、その」
先輩の洗礼?を氷麗は毘沙門で初めて受けたのだった。




