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第9話

「つーちゃん今日来るかなー?」


フェニックスと氷麗が戦闘を行った翌日の放課後。

生徒会室では、全メンバーが揃っていた。


「一応昨日は帰り際に再度勧誘してみましたけど、どうですかね?」


たんぽぽの問に猛が答える。

その表情は来るか来ないか五分五分と言った感じだ。


「来るといいよね。後輩ができるから」


机に突っぷしながら紅葉が言う。


一応昨日は、フェニックスと氷麗が模擬戦を行った後、華美と猛で再度勧誘はしていた。

しかし、負けたショックが余程大きかったのか、氷麗本人は上の空で、話を聞いているのか華美たちでさえ分からない状態だった。


氷麗以外にも庶務を任命してもいいという候補生はもちろん全学年含め何人か居るのだが、氷麗は即戦力だ。

フェニックスにボコボコにされて弱いイメージが付きがちだが、実際は強い。強いと言ってもまだフェイステン程ではないが1年の中ではダントツだ。

特別人間(スペシャル)の中でも珍しい自然(ナチュラル)の使い手で伸びしろもある。次世代のことも考えると氷麗にはぜひ生徒会のポストをやってもらいたいと言うのが、華美を始めとする生徒会の総意だ。


「来るか来ないかは本人の意思だからな。俺らは待つしかねーな」


棒状の飴を舐めながらフェニックスが言う。


「もうちょっとふーちゃんが手加減してればなー」


「俺が悪いのか?」


紅葉の何気ない言葉にフェニックスが反応する。

実際昨日の模擬戦はフェニックスとしてはだいぶ力を抑えた方だ。元の身体ではないため、まだ安定性は欠いているがかなり手加減した方だと自分では思っている。

実際、元の力の10%も昨日は出していないだろう。


「当たり前だろ。どこに新入生を初日でボコボコにするやつがいる」


しかし、手加減したと思っているのはフェニックスの意見であって、実際の周りの評価ではない。

紅葉の意見に猛はすぐに乗っかりフェニックスを批判した。


「あぁん?じゃあ聞くがどこに転校初日の転校生にボコボコにされるやつがいるんだ?」


しかし猛の批判をケンカを売りにきたと勘違いしたフェニックスは買い言葉に売り言葉ですぐにそのケンカを買ってしまう。


「なんだ?やるのか?」


「いいぜ?俺もちょうど本気で殺りあいたいと思ってたんだ」


「2人とも辞めなよ〜。猛は高校生なんだからもっと大人な対応しないと。ふーちゃんとケンカしてもダメでしょ?ふーちゃんもそんな乱暴な言葉お母さん教えた覚えはないよ?」


「ケンカじゃない!」

「いつ俺のお袋になった!」


戦闘が勃発しかねない状況を紅葉が宥めたが、逆にそれは2人のボルテージをさらに上げる結果になった。

フェニックスと猛。二人して紅葉にツッコンだ。


しかし、ボルテージは上がったもののその怒りの矛先が紅葉に向いたため、戦闘開始とはならなかった。計算してやったかは分からないが、結果的に紅葉は場を収めることに成功した。


コンコン


場が収まったのを見計らったかのように、生徒会室にノック音が響いた。


「どうぞ」


来訪者を生徒会長である華美が入室を許可する。


「失礼します」


二つに分けた髪の毛を華麗になびかせ、雪城氷麗は生徒会室に入室した。


瞬間、場に戦闘とは違う緊張が走る。

机に突っ伏していた紅葉もそーと背筋を伸ばす程に。


「用件は何かしら?昨日の件?」


「はい。昨日の件についてお返事をさせに参りました」


場に緊張が走る。

この生徒会室には総勢6人もの人間が居るのだが、氷麗もそして華美も自身を見つめる相手を見ていた。

まるでこの部屋にはこの2人しか居ないかのように。


少しの沈黙の後、ゆっくりと氷麗は頭を下げた。


その動作を見て、華美はゆっくりと目を瞑る。


「若輩者ではありますが、よろしくお願いします」


透き通る声で氷麗はそう言った。


「え?」


驚いたのは華美だった。

氷麗がよろしくお願いしますと言った後、瞑っていた目をすぐに開けたのだから。


「庶務をやらせて頂きます!」


そして、氷麗は気高く宣言する。


「ほんとうに?」


断られると思っていた華美は、確認を取る。

今のは聞き間違いではないのかと。


「ほんとうです。嘘は嫌いなので」


言葉以上に氷麗の目は語っていた。

その氷麗の目を見て華美はようやく嘘ではないと理解する。


「……ありがとう。これからよろしくね」


そして、感謝の気持ちを伝えた。


「やったー!!!」


一連の流れを見て、喜びを抑えていた紅葉が喜びを爆発させる。

庶務のポストが埋まったことに関してでなく、自分に後輩が出来たことに対して。


「やったねー」


たんぽぽも安堵の表情を浮かべる。

3年であるたんぽぽは生徒会の役員がやっと埋まったことに対して安堵したのだ。

本来なら華美を会長としてスタートした新体制の時に埋まらしておきたかった全役員。

それがようやく埋まったのだから。


「やっと生徒会全役員揃いましね。これで自警団にもつつかれることはないでしょう」


「だねー」


「ねぇ!ねぇ!氷麗っち!」


「氷麗っち?」


「どうして庶務を引き受けてくれたの?」


紅葉が全員が気になっていたことを代弁して聞く。


「それは……あの人です」


氷麗は人差し指をフェニックスに向けた。


「ん?俺?つかいいか?人様には指を指すなって華美がこの前言ってたぞ?……俺は人じゃねーが」


「そう。それです。そのあなたが人じゃないというのに興味を惹かれたので引き受けました。貴方の強さにも」


「は?どういうことだ?」


「貴方は何者なんですか?」

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