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第十四話

誤字報告超ありがとうございますっ。頑張ります。


では続きです。


よろしくお願いします。

 


 季節は秋になった。と言ってもまだ暑い日が偶にある十月十日の昨日、無事に体育祭を終えた私の学校は本来なら授業がある土曜日だけど今日はお休みだから私とあまちゃんは街にいた。


「ねぇねぇ彼女たち。俺たちと遊ぼーよ」


「うざぁ」


 ま た ナ ン パ っ






「椎名。ここに居たくないんだけど」


「じゃあ屋上でも行く?」


「行く」


 と、昨日の体育祭、始まって早々に午前中は出番がないから埃っぽくて騒がしいグラウンドから逃げたいと言った全くやる気のないあまちゃんに付き合って、お昼になったら明日香に屋上に来てねとひと言断ってからお弁当とおやつを持って屋上に避難して、特に何をするわけでもなく誰もいない屋上の手摺りに体を預けて体育祭の様子を二人でただ眺めていた。



「そう言えばこの前ね」


「へぇ」


 クラスメイトや同じ組みの人たちを間近で応援もせず自身が熱くなることもなく、こうして無為に過ごしているといかにも青春を無駄にしているようで勿体無いかなぁと少し思うけどそれはそれ。


「だって宇宙が言ってた」


「そう」


 そりゃあ確かに、青春の1ページとして今日のことを振り返ってみた時に、体育祭? 何してたっけ? ってなるだろうけど、みんなで頑張ろーみたいなことは嫌いだと言って憚らないあまちゃんは私の大事な友だちだから、何か鬱屈した物を抱えている筈のあまちゃんにこうして付き合うのもまた青春の1ページと言える。

 この狭いコミュニティでほぼ全方位に壁をおっ建てるあまちゃんにも、あまちゃんらしくいることを許容出来る心の広いクラスメイトが何人か居てくれるけど、その頑なな心を許して遠慮せず甘えられるのはやっぱり私と明日香だけ。その遠慮の無い毒舌とか馬鹿にした口調や態度を私と明日香がもはや気にしていないのは、私たちがあまちゃんのことを密かに手の掛かる妹のようにも思っているところがあるからなわけ。

 もしもあまちゃんがそれを知ったら、はあ? 私が妹ってどういうこと? とか言って怒り出しそうだけど、プンスカ怒る姿を想像するとちょっと微笑ましくなる。


「みんな何が楽しいんだろ」


 いつもと同じ、あまちゃんが呆れたふうにそんなことを言うけど、たとえ私も同じように、そんなの何の意味もないでしょうにと思うことだったとしても、誰かにとっては楽しいこと。みんなが無駄だと思うのなら、この体育祭なぞ開催されない。


 だから私は我儘気ままなとても手の掛かる妹を優しく諭す。


「あまちゃん。楽しいことなんて人それぞれだよ」


「それはそうだろうけど」


「だったら今楽しさの極みにいる明日香はどうなるの?」


 極楽だよ極楽。そこに居る貴女のお姉さん見てみなさいよと口には出さずに明日香がいるグラウンドに目を向ける。丁度タイミングよく明日香がゴールテープを切って、息を切らしたまま私たちに向かって親指を立てた。よく見えないけどきっとわかり易いほどのドヤ顔していることだろう。私も親指を立てて返す。


 私は知っている。そうすることで明日香は明日香らしく、私だけじゃなくてあまちゃんも気にかけていることを。それはあまちゃんにも伝わっている。だからこそ訊いてみたい。


 あれを見て明日香を他の人と一色たにして馬鹿にするの? 違うでしょう? と目で訊いてみる。


「しない」


「ふふふ」


「ちっ」


 高慢チキな妹を少し嗜めてみたらちゃんとわかっていたようで、嬉しくなってあまちゃんに向けて菩薩のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべていたら舌打ちとともにお尻に蹴りが飛んできた。


「うぎゃ」


「その顔ムカつく。アレは別もの。そんなことわかってる」


「ててて。それは嬉しいけどあまちゃん、アレって」


「アレはアレ」


「アレかぁ」


「アレよ」


 素っ気ない口調とその言葉の上辺だけを見れば失礼極まりないものだけど、その実単に素直になれない照れ隠しだからいかにもあまちゃんらしく、素直になれたら楽なのに拗らせちゃってるなぁと軽く笑う。


 とは言えどちらかと言えば私もあまちゃん側の人。私は誰が何を好きでも気にもしないし馬鹿にもしないけど、空気を読んで人に合わせているだけで、本当はそんなに熱くならなくてもってちょっと思っちゃう人だから。それは明日香についても例外じゃない。好きだからって私と合わない所までをも手放しで肯定することは出来ない。


 けど、他人と合わないところがあるのは当たり前で、そういうところを含めての私の好きな明日香だから、私は張り切る明日香を少し苦く笑いつつも結局は、楽しそうで良かったね私も嬉しいよって思うことになる。

 私が明日香を好きな理由を忘れなければ、明日香がそれを失くさなければ、私がずっと明日香を好きでい続けることは簡単なこと。私からすればそれはとても辛いことだけど。



「まぁ、私もみんなで頑張ろうとか苦手だし、声が大きい人とかしつこい人とかノリが寒い人も苦手、というか嫌いだけどね」


 ああいうのは嫌い。と、私は無駄に異常な盛り上がりを見せて騒いでいる生徒たちの方を指差した。


「椎名も相当だと思うけど」


「まぁね。けどあまちゃんより百万倍はマシだよ」


「ぶっ飛べ」


「うぎゃ」


 二 発 目っ





 体育祭そっち除けで屋上に居て遊んでいる私たちに関係なく、グラウンドで青春を謳歌する生徒たちの騒がしい声がわいわいと響いている。お尻の痛みはもう消えているから大丈夫。


「平和だ」


「そうね」


 最近はこういう行事の度に近隣住民からうるさいとクレームが入るらしく、剣の舞とか、てててーんてててーんてててててんっという運動会の定番の曲は無し。クレームを入れるお前らだって体育祭くらいやっただろうに自分勝手な奴らだなぁって思っているとグラウンドでやけに目立っている子がやっぱり目に入る。


「明日香だ」


「え、どこ?」


「あそこ。あれ」


「なにあれめちゃくちゃ速くない」



「あ、明日香がまた出てる」


「張り切ってたからね」


「体力ありすぎ」


「甘いねあまちゃん。明日香だよ」



「あ、手振ってる」


「ちゃんと見えてるんだよあれ」


「椎名こそさっきから怖いんだけど」


「いやいや。だって明日香って目立つじゃん。ん? なにその悔しそうな顔」


「なんでもない」


「あ、わかった。見つけられないから悔しいんだ、って、ちょっ、痛いよあまちゃん」


 私たちはぼーっとしながらグラウンドを眺め、豆粒ほどの大きさでも異様に目立つ明日香を見つけてそんな感想を漏らしてはその都度あまちゃんにぐーパンされるという訳のわからない理不尽を繰り返していた。




 そして午後(いち)の、やりたくもない騎馬戦を無事に乗り越えて、出るつもり満々だった障害物競走も無事回避して私なりに体育祭を楽しんでいよいよ最後の種目、リレーを走る明日香をこの目にしっかり焼き付けたあと、閉会式に参加するために屋上を後にしたところであまちゃんが私を誘った。


「ねぇ。明日買い物付き合ってよ」


「明日? いいけどあまちゃんと二人だとナンパがなぁ」


 明日香はお昼前から三時まで家の手伝いだから誘えない。居るだけでボディガード兼抑止力たる明日香がいないとどうなるかと言うと、男の人に絡まれる。

 あまちゃんの容姿からすればそれは仕方ないことだけど、あまちゃんはいつも無視するだけで何も言わないからナンパ男の相手をするのは必然的に私になる。嫌だと伝えるだけだだし、毎回のことだから対処法も確立されているけど面倒臭いものは面倒臭い。言ってないけどプールの時だってあまちゃんと二人の時はそれはそれは酷いものだった。


「は? それは椎名せいでもあるでしょうが」


「そうかもだけど、私はあまちゃんほどじゃないし」


「はぁぁぁ。椎名は無自覚過ぎ」


「違います。これは事実です」


「はっ」


「あまちゃん、怖いって」



 と言うことで、本日、お昼近くの午前中に待ち合わせて電車に揺られること二十分、私とあまちゃんは地元よりも栄えていて、色んなショップが充実している街までやって来ていた。


「椎名。あのお店も寄りたい」


「いいね。行こう。でもゆっくり歩くよ。筋肉痛が酷いから」


「わかった」


「いてて。あまちゃん速い。ちょっと待ってよ。筋肉痛が」


「軟弱者」


 私はジムで鍛えてるから椎名とは違うのよ的に、ふふんって笑って私をからかうあまちゃん。こうして二人で出かける時のあまちゃんは、学校に居る時やみんなと居る時よりはよく笑うしよく喋るし凄く生き生きしてて楽しそう。今この時を余すことなく謳歌しているように思える。亜麻色の髪を靡かせて自信満々、颯爽と街を歩く姿は明日香とはまた違ったあまちゃんの持つ芯の強さみたいなものをいつも感じる。


「なんだとー。う、いてて」


「あはは」


 痛みが走り膝に手を当てて耐える私を見てまた愉しそうに笑ったあと、仕方ないから軟弱者に手を貸してあげると私の腕に腕を絡めた。


「引っ張ってって」


「いいよ。お婆さん」


「くっ。なんか言い返せない」


 ぐいぐい歩き出すあまちゃんの肩にはお店のロゴが入った紙袋が既に四つ掛かっている。そういう意味でも今は楽しいのだろう。


「痛いって。もっとゆっくり行こうよ」


「はいはい」


「ちょっ、全然ゆっくりじゃないじゃんっ」


「椎名は細かい」


 私も何か気に入った物があれば買うつもり。というか筋肉痛を押してまで来たんだから絶対な何か買うつもり。そこで私は思いついてしまった。


「あまちゃん。あとでCDショップに行きたい。何軒か見たい」


「えー」


「見たい。てか行くよ」


「はいはい。わかった」





「うへへ」


「気持ち悪い」


「いいでしょ。これずっと欲しかったんだから」


「いいけど」


 あまちゃんにこれの良さはまだわからないかーそっかーそっかーと、三件目のCDショップを出てそんな会話をしながら次の目的地へ歩いていた。


「なぁ彼女たち。俺たちと付き合えよ」


「なぁいいだろう。一緒に遊ぼうぜ」


「なぁ」


 で、またこれ。


 絶対買う。そんな決意で私が手に入れた物は好きな古いバンドの古いCD。中々見つからなかったからホクホク顔でご満悦の私と呆れた顔のあまちゃんが道を歩いていたら本能剥き出し野生のボンクラどもが私たちの行くてを遮るように現れたってわけ。鼻息が荒くて気持ち悪い。


「ほらまただよ。ぜーんぶあまちゃんのせいだよ。まったくさー」


「は? 違うし」


 これからお茶と一緒にパンケーキでも食べて地元に戻ろうという段になったところだったのにまたしても絡まれたってわけ。あまちゃんのせいで。


「なぁ。いいだろう」


「嫌」


 いつものようにあまちゃんは無視。私は相手にわかるように嫌とひと言きっぱり断って、そのまま横を通り過ぎようとしたけど他の連れの男どもに回り込まれて足を止めてしまった。


「そう言うなよ。なぁカラオケとかどうよ?」


「おいおいいきなり密室ってか」


「お楽しみは夜だろ夜」


「「「うはははは」」」


「「ちっ」」


 好き勝手に盛り上がる馬鹿ども。あまちゃんは額に青筋を浮かべながらの舌打ち。私はなんだコイツらまじうざぁって思いながら嫌な顔して歩いて行くつもりだったけど私の口からも同じ音が勝手に出ていってしまった。ついでに言葉も。


「うざぁ」


「「「あ?」」」


「あ、つい本音が出ちゃった」


「本当のことだしべつにいいでしょ。椎名は正直だから。行こ」


「そだね」


「ああん? 待てよっ」


 馬鹿の一人に腕を掴まれる。はい来た。ここまでされることは稀だけどないわけじゃない。私たちはこういうことにも慣れたもの。私は伊達にあまちゃんと二人で出掛けているわけじゃない。それに私は法律だってちゃんと勉強している。

 だから私は腕を掴まれたまま言ってやる。


「離せボケカス。痛いんですけど。これ暴行罪になり得るんですけど。懲役二年以下、若しくは三十万以下の罰金又は勾留若しくは科料ですけど。それにもしもあんたが掴んでるこの腕に擦り傷とかアザなんかが出来てたら傷害罪になるんですけど。そしたら懲役十五年以下、又は五十万以下の罰金なんですけど。彼女もいるし周りにも証言してくれそうな人もたくさんいるし防犯カメラもいっぱいありそうだから証拠には事欠かないだろうし、これ以上何かするつもりなら警察行って被害届出しますけど?」


 あ、今のは刑事で民事は別。裁判起こして慰謝料取るからと付け加える。そして横からあまちゃんが参戦する。


「密室とかお楽しみとか、そんな言い種からすると余罪がありそう。性的暴行とか強姦とか。見たところ学生みたいし、バレたら大変そう。くくく」


「で、おたくはいつまで掴んでるの? 警察呼ばれたいの? 行きたいの?」



 早口で法律を捲し立ててハッタリをかます。あまりにしつこい男どもにはこれをして終わらせる。


「けっ。おととい来やがれってんだっ。ね、あまちゃ、あれ? なにその顔」


「台詞が古い」


「え。嘘でしょ?」




 そして今、ティーソーダとパンケーキを食べて大満足でお腹も膨れた帰りの電車の中、隣に座るあまちゃんは静かな寝息を立てている。私の方に傾げた亜麻色の髪が私に触れて電車が揺れる度に私の頬をくすぐって、その右側は遠慮なく私に寄りかかっているから体重がかかって重いと言えば確かに重い。けど今あまちゃんは安心して眠っているみたいだし、たかだか二十分くらいのことだから余裕で耐えてみせる。


 こうしてガタゴト電車に揺られながら私はあまちゃんのことを考えている。


 なぜあまちゃんがああも頑なに他人を拒むのか、他人に対してああも攻撃的なのか、私はその理由を知らない。あまちゃんと同中の人の態度とか噂話なんかから何となく察しているけどその理由をその口から聞いたことはないし憶測でものは言えないし、そもそも話そうとしないんだから私からはそれに触れるつもりはない。

 そしてもう一つ。どうしてそんなあまちゃんが私にはこうも無防備になったのか、私にはその理由もわからない。わからないけどあまちゃんが望んでそうしてくれるのならやっぱり私は構わない。それであまちゃんが少しでも癒やされるのならそれに越したことはないと思うから。


 それにしても。


「これ。椎名にあげる」


 と、買い物中、アクセ専門のショップであまちゃんが買った、綺麗にラッピングされた箱をその場で渡された。


「え? なにこれ?」


「チョーカー。可愛いよそれ。私も色違いのやつ持ってる」


「嬉しいけど、いいの? 私の誕生日三月だよ」


「いいから。気が向いたら着けてよ」


「うんわかった。ありがとう」


 お店を出て道の端、さっそくラッピングを剥がして箱を開けてみると、濃紺のベロア生地、その両の(ふち)には赤いステッチが入って青林檎のトップが付いている可愛いチョーカーが入っていた。


「わぁ可愛い。それにトップが青林檎とはロックだね」


「ロック?」


「ロックじゃん。可愛いくてカッコいいじゃん。ありがとうあまちゃん。大事にするね」


「ロック?」


 ロックって何? と首を傾げつつも、私が気に入ったのがわかって、あまちゃんはやけに嬉しそうに微笑んでいた。

 そして私は取り敢えずのお礼、と言うには些かチープかなと思ったけど、そのお返しとしてクレープをご馳走した。一応苺とか、ベリー系の果物が色々入ったスペシャルなやつ。


「どうぞ」


「ありがとう」


「どう?」


「美味し」


「よかった」


 機嫌よくもぐもぐとクレープを食べてくれたあまちゃん。口元を隠すことなく食べ物を口いっぱいに頬張るあまちゃんを私は初めて見た気がする。本当のあまちゃんはきっとこういう女の子なのかもなぁと思う。そう思うと何があってあまちゃんは変わったのか、やはりそれが気になるところ。



 それにしても。


 こうも懐いてもらえると私の抱えているモノが少々勘違いしちゃいそうで怖い。

 いま私は明日香のことが好きだから、あまちゃんとは仲のいい友だちのままでいられるけど、明日香への気持ちにケリが着く日が訪れたあとその時もあまちゃんの態度が変わらなかったら、私の気持ちは一体どこへ向かっていくのだろうと思う。もしかするとまた同じことの繰り返し、想いを我慢するだけの辛い恋をしてしまうのかも。

 もしそうなったとしたら、その時はまた一人でベッドの上で泣いて疲れて眠るまで耐えなくてはならない。それは凄く嫌だけどそれしか出来ないのだから仕方ない。他人を想うことや慕う気持ちにはブレーキは効かないもの。それもまた恐ろしい話。


「怖いなぁ」


 チラリと様子を確認すると、あまちゃんは今も私の肩に預けた顔を俯けてすうすうと静かに眠っている。すっかり気が抜けている寝顔に何となく優しい気持ちになる。


「うん」


 まぁ、今は友だちだから、起こるか起こらないかもわからない未知の話、たらればの話を悩んでいても意味がないから置いておいて、とにかく、その二つの理由をいつかあまちゃんから話してくれたらって思う。あまちゃんの気持ちに整理がついて、いつかそうしてくれたらいいなって思う。その時は、私はあまちゃんの味方だよって、どこに居ても誰と居てもずっと仲良しだよってやっぱり伝えたい。そんなこと、あまちゃんはもうわかっていると思うけど伝えることは大事だし。


「次はー」


 アナウンスに釣られて目線を窓に向ける。そこには夕陽に映える見慣れた私の街の景色が見えている。そろそろ到着。こうした時間はまた今度。私は優しくあまちゃんに触れた。私は明日香みたいに、おい起きろってゆさゆさ揺らしたりしないの。


「あまちゃん」


「ん?」


「もう着くよ。けどその前によだれ拭いて。垂れてるよ」


「え。嘘」


「嘘」


「あ?」


「ふふふ」








 あ、そうそう意味がわかんなかったと思うから、私が出たかった筈の障害物競走をなぜ上手く回避した件について、について触れておくね。大体こんな感じ。



 私はコースの最後に設置される小麦粉の中に隠されたボンタンアメを探して食べたかったの。だから進んでエントリーしたの。


「え、本当に?」


「本当に」


「へぇ。水野がねぇ。珍しいじゃん」


 種目を決めた翌日、お昼ご飯を食べて、例の体育館裏でまったり過ごしている時、あまちゃんが私と同じ種目の障害物競走、しかも後で同じ組だって知った時はもっと驚いた。


「なんで?」


「何か出ないといけないし、椎名がソレだって言ってたから」


「あー。なるほどね?」


 私の隣に座ってご飯を食べたあと、いつものように眠くなったと私の肩に頭を預けていたあまちゃんがそんなことを言ったの。


「お前ら一緒の種目かよ。ほんと仲良いなー。ま、私の方が仲良いけどなー」


 そんないつもの台詞を吐いた明日香が私たちにひっ付いてきて三人ひと塊りになった時に、私を守るようにして明日香は離れてって言っていたあまちゃんが楽しそうにしていたのが印象的だった。



 そしていざ本番。障害物競走に出る生徒たちと列を作って出番を待っているあいだ、網をくぐって平均台を渡って頭陀袋に足から入ってぴょんぴょんやって小麦粉に顔を突っ込んで顔を白くしている生徒たちの様子を見ていたら私は衝撃的事実に愕然としてしまったの。


「げ」


「椎名?」


「あまちゃん。あの粉にさ、もしかしなくても先に走った男子の唾がめっちゃ入ってるんじゃないかなぁって思うんだ」


「は?」


 そう言った途端に私の声を拾った近くに座る女子たちが私に視線を向けたの。嫌なこと言うなよなぁ的に。けどそれどころの話じゃないからそれは無視して出来ることを始めたの。


「いたたたた。ヤバい。お腹超痛いよ」


「椎名、なに言って、はっ」


「あまちゃんお願い。わた、わたしを保健室、保健室にぃ」


「わかった。先生っ、先生っ。私この子を保健室に連れて行きますっ」


「お? おお、よろしく頼む」


「ほら椎名行くよ」


「うん」


 こうして一芝居打って、私は見事に障害物競走を回避したの。あまちゃんも助けるなんて凄いでしょ? 

 ただね、周りの女子たちが去って行く私たちを、と言うか私を凄い目で見ていたのがとても怖かったけど、嫌ならみんなもお腹痛くなればいいじゃんと思いました。


「ははは」


「いきなりなに。キモ」


「ぐは」



お疲れ様でございました。


さて。このままプロット通りにいくか、少し端折ってお話を進めるべきかと悩ましく思うこの頃、皆様今日の雪は大丈夫でしたでしょうか? 私は今日、在宅ワークでしたので全く問題ありませんでしたっ。うはははは。


読んでくれてありがとうございます。



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[一言] 関東以北は大変だったようで。 私は西の方ですので今回はなにもなく、前回の寒波の時に雪が積もりましたね。 話の展開は作者様の納得のいくようになさってください。 寒いですのでお体に気をつけて。 …
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