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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第一章① あれから十五年

 魔王との戦いから十五年。俺は二十九歳になった。

 三十歳まで生きられないという呪いも、魔王あってこそ。魔王が消え去った今となっては何歳でも生きながらえることができる。二十二代目にして、ようやく俺の一族は三十歳の壁を越えられるのだ。三十歳に縛られるつもりはないが、俺は加齢できる喜びをかみしめていた。


 十五年も経てば、世の中は大きく変わると思うだろう。だが意外なことに、ポートという街に大きな変化はなかった。最も大きな出来事はドルドネとの交易が増えたこと。それ以外は学問優先なこの街のスタイルは変わらなかったし、学園自体に大きな変化はなかった。だって街のトップである学園長が変わらないのだから。


 俺が出会った時、すでに高齢だった学園長。彼は今も健在だ。なんと御年百二十五歳!

 後になってわかったんだが、あの学園長は死なないんだ。実は脳以外はほぼ機械。今は学園長本人だけど、いつ脳が死んでも問題ないように、人格や知識といった情報がすべて特別な魔法具にバックアップされている。死してなおも学園長が残るという仕組みだ。

 ポート最盛期を支えた学園長の後継者を育てるより、本人が長生きした方が何倍も街にとってプラスと判断されたため、このような非合法な延命が許可されているそうだ。そんな秘術を生み出すなんて、学園長は本当に天才だよな。もちろんこの街の極秘事項で、俺も名誉市民になってから知ったよ。



 そんな感じで街は変わらないけど、俺を取り巻く環境は大きく変わった。

 ドルドネとの交易で莫大な財を成したし、名誉市民として街の最重要課題を話し合う場に呼ばれることも多くなった。クレディの助手という肩書は今も残ってるけど、学園に遊びに行く暇はほぼない。毎日うちの事務所に籠って働いていた。まあ、事業が伸びるのは楽しいし、従業員たちも喜んで働いてくれているから、やりがいもあるんだけどさ。


 でも何が一番大きく変わったかって、俺の子供たち。長男なんて、もう十四歳! 俺が魔王と戦った時と同じ年齢になってしまった。ポートの一人立ちは十三歳なので、一歳下の次男アーサーも今年成人した。まったく、年月が経つのは本当に早い!


 ああ、次男のアーサーだけど、お察しの通り王国騎士団のアーサーから名前をもらった。剣士にしようと思ったわけじゃないが、彼のように勇敢な男になってほしいと思ってな。

 だがアーサーの興味は百パーセント商売に向いている。常に俺につき従い、物や金が行き来するのを見ていた。在学中からアーサーは「卒業後は父さんと働く!」と言っていたほどだ。父としてこれほど嬉しいことはない。


 そんな剣士への願いは、なぜか三男のロベルトに引き継がれている。

 アーサーのさらに一歳下、十二歳のロベルトは刀剣に興味があるらしく、俺の剣をいつも触りたがっていた。そしてアーサー同様、俺の仕事場にやってきては、用心棒に話しかけて邪魔ばかりしていた。仕事の邪魔になるからと剣の稽古場に通わせたが、毎日楽しんで通っているらしい。母親にも「将来は騎士になる!」と言っているそうだ。


 末っ子はロベルトより二歳下の女の子。十歳のミーナだ。

 まだ将来について何も決まっていないが、とにかく頭が回る。そして義両親譲りの優しさを持ち合わせ、人の世話を焼くのが大好き。将来は義両親のやっている下宿をそのまま任せてみようと思っている。親バカだけど、きっとミーナの手腕なら、一人でも下宿を切り盛りできるはずだ。変な男に引っかからないかだけが心配だけど。


 そんなふうに、どの子たちもそれぞれ将来が楽しみで、何も心配はない。と言いたいところだが、たった一つ問題がある。長男・アズールジュニアだ。

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