表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第2部】運命の出会い
91/147

第十一章④ さらば島暮らし

 ここからの船が来るまでは、瞬く間に過ぎていった。

 洞穴にいた人々を治療した後、俺は一人でルルたちと合流。仲間を引き連れて原住民のもとに戻り、俺らが来た目的を原住民に告げた。


 やはりサザムが嘘を教えており、原住民はホーシー一団を侵略者だと思っていた。誤解が解けた原住民は非常に友好的で、クレディ、ホーシー、ヒギンズの調査にも協力してくれた。帰路では大収穫を得たと、三人とも顔が緩みっぱなしだったくらいだ。



 一方の俺は、治療の日々。何せ捕まった仲間たちだけでなく、原住民の治療もあるのだから!


 呆れたことに、俺たちが見つけた拠点の他にも病人の隔離施設があった。島内をぐるっと囲むように、全部で五カ所。場所的に、何か呪術的な意味合いを感じる。

 サザムの奴、本当に何を企んでいたんだ?

 まあ、それは聞けずじまいだし、見当もつかずに終わったけど。忙しすぎて、ゆっくり考える余裕なんて、ちっともなかったからな。


 どうしても手が回らなくなったから、俺は原住民を数人弟子させた。一緒に魔法薬を作り、治療させたのだ。

 こう書くと簡単そうに見えるが、魔法薬作りを教えるのは結構難しい。以前クルスで魔法薬作りを誰かに教えようと思った時に、どうやって教えたらいいのかを暇があれば考えていた。何度もイメージトレーニングしていたおかげだろう、いざという時には、スムーズに教えることができた。今になって、あの時の多忙さに感謝した。


 ただ、誰にでも魔法薬が作れるとは限らない。魔力が高い人間でなければ。そう思っていたが、人選は楽だった。サザムの呪術にかかったのは、魔力が低い人ばかり。逆に言うと、最後まで元気だった人は魔力が高かった。試しに作らせた魔法薬はかなり効力が高く、王都で売れそうなレベルだった。


 最初こそ、原住民たちは戸惑っていた。彼らの文化には、薬という概念がない。サザムが来る前までは、最長老のおばば(話を聞く分には魔術師らしい)が何でも治してくれたとのこと。

 だがサザムが来たすぐ後におばばが死んでしまった。後継者を指名しておらず、また同等の力が使えたサザムの言うことを信じるしかなかったらしい。


 そんな特別なことが自分たちにできるはずがないと、一部の原住民は拒んだ。しかし試しに作らせてみたら、案外簡単に作れた。病人に飲ませて回復した様子を見た時に、原住民たちは自分にもできると理解した。



 それからは早かった。原住民たちは俺の教えをグングン吸収し、船が来た頃には魔法薬作りのプロが五人も誕生した。おばばがいなくても大丈夫だと、彼らは別れ際に笑っていた。その笑顔を見て、俺も安心した。今後の原住民たちは、もう大丈夫だろうと。


 そうそう。原住民と薬作りを始めて知ったんだけど、この島には俺が知らない宝がゴロゴロ眠っていたんだ。

 クレディが観察用に採取してきた植物を見て、これを食べると元気が出るとか発酵させると酒になるとか、原住民が色々と教えてくれたんだ。薬を持たない彼らだが、食べ物を上手く使って体調を整えていたんだ。クルスの「食べて治す」という概念に近いと思った。


 先代たちの知識を遡っても、知らない植物が毎日のように見つかった。しかし見た目や効能を聞いて、だいたいどんな植物かは察しがついた。ドルドネは独自の進化を遂げていると聞いてはいたが、馴染みがある植物の亜種がたくさん見つかった。新しい効果があったり、より強力な力を発揮したり。この島の植物を使えば、新たな魔法薬を開発することができるだろう。もしかしたら、サザムの奴はこの島の植物を狙っていたのかもしれない。それほどに貴重な発見が日々あったのだ。


 帰り際、俺は原住民たちと交渉し、薬草の交易を取り付けた。原住民の窮地を救った英雄の頼みとあって、彼らは快諾してくれた。原住民は俺たち(というか、特に俺)に対してとても好意的で、ドルドネを去った後も非常に親切にしてくれた。ちなみに、ドルドネとポートの長きにわたる友好関係は、この事件が発端だ。実は俺ってすごいだろ。当たり前になりすぎて、誰も褒めてくれないけどさ。


 そんなわけで、ドルドネでの怒涛の日々を終えて、俺は念願のポートへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ