9日目 学校と洗脳②
これは、とある男の旅路の記録である。
「へぇ~、つまりは人間にとって知識って、人間自身の生存にも関わってくるんだね」
「そういうことだな」
「じゃあ、学校って呼ばれる場所は知識を身につける場所って認識で良いのかな?」
「そういうことだ。それで、その学校にはいくつか種類があるんだ。まずは【小学校】。これは、クロノスと同じような幼さが残る人間……こういう人間を【子ども】って言うんだが、そういう子ども達が、人間同士で作られる【社会】って呼ばれるもので生きていく為の最低限の知識を身につける場所だ」
「へぇ~、そこで必要最低限の知識を身につけるだね」
「そうだな」
時折オレンジジュースを飲みつつも、俺の話に頷いてくれるってことは、大体は理解出来たってことで良いんだよな。
「そして、クロノスが話してた【中学生】と【高校生】なのだが……これは【小学校】と同じように、それぞれ【中学校】と【高校】って場所に通っている人間のことを言うんだ。ちなみに、小学校に通っている人間のことは【小学生】って言うんだ」
「ふ~ん、それでその【中学校】と【高校】って何が違うの? 小学校と同じように思えるんだけど」
「これが同じじゃないんだ。中学校っていうのは、言わば小学校で身につけた知識をより深く知って、新たなる知識を身につける場所なんだ。それで、高校は中学校で身につけた知識を更に深く知って、色んな知識を身につける場所なんだ」
「へぇ~、どうして小学校で身につけた知識を更に深く知る必要があるんだい? 別に小学校で最低限の知識を知っていれば、社会ってところで生きていけるんじゃないの?」
「まぁ、それもそうなんだが……」
「ん? どうしたの、律」
純粋な質問をしてくるショタ神様に苦笑いすると、頬をポリポリと掻いて目線で少しだけ外した。
まぁ、俺も中学か高校の時に同じことを思っていたから、他人のことをあまり言えないけど。
「あのな、クロノス。確かに『小学校で人間社会を生きていく為の必要最低限の知識を身につけてたんだから、それで良いじゃないか?』と俺も学生時代に思ってたし、そう思う人間は俺以外にも大勢いることは否定しない。でもな、必要最低限の知識を身につけたからって、必ずしも人間社会で生きていけるとは限らないんだ」
「どういうこと?」
「人間社会を生き抜く為には貨幣……つまり、お金を稼がないといけないんだ」
「うん、それはさっき聞いた」
「そうだな。まぁ、そういう風に人間同士で決めたんだけどな。だけどな、お金を稼ぐには必要最低限の知識では少しだけ無理なんだ」
「そうなの?」
「そうなんだ。これが不思議なことでな、お金を稼ぐ人間の大半が必要最低限以上に知識を身につけてる奴なんだよ。それも、知識を多く身につけている人間ほど、より多くのお金を稼ぐんだ」
「へぇ~」
「もちろん、必要最低限の知識でもお金を稼ぐことは出来るが……人間っていう生き物は、つくづく欲深い生き物で、そういうお金を多く稼ぐ奴が1人いると、自分もその人間と同じように多くお金を稼げるかもしれないと、より多くの知識を身につけるんだ。そして、そういう考えの人間が多くなれば多くなるほど、自然とお金を稼ぐ為に必要になる知識の量が増えていくんだ。中学校や高校は、そういうお金を稼ぐ為に必要になる知識を身につけるための場所なんだ。そして、自分の願望を叶える為に必要な知識を身につけるの学校として、【大学】や【専門学校】って場所もある」
「そうなんだね。でもそこまでして、どうしてお金を稼ぎたいんだい? 必要最低限の知識だけでもお金が稼げるんだったら、それで良いんじゃないのかな?」
小さく小首を傾げるショタ神様に大きく溜息をついた。
「クロノス、それはさっき言ったろ? 人間は、欲深いんだ。その欲ってやつは、底なし沼のように深くて大きなものなんだ。そして、その欲を満たす為なら、何だってやるんだよ。お金だって稼ぐし、そのための知識だって身につける」
そして、俺のことを目の敵にしているクソ上司や何故か上から目線で来る取引先のやつにも、愛想笑いを浮かべながらおべっか使うこともな。
何だろう、思い出すとだんだんムカついてきた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!




