6-10:次の目的
(´・ω・`)短め
「お父様」と呼ばれることで俺の大物感が少し増した。
(違う、そうじゃない)
言いたいことが色々あるが、取り敢えず確認することから始めよう。
「ライム、何故『お父様』なんだ?」
こちらとしては至極真っ当な質問だったと思うのだが、当のライムは首を傾げており、質問の意図がわからない様子。それでもきちんと言葉にしてくれたのだが、少々理解が及ばない。というより飛躍している気がする。
曰く「赤子のように無力だった自分をここまで育ててくれたのだから、それは最早利害を通り越して『愛』である。その愛情を受け、育てられた私は貴方の娘と言っても過言ではない」らしい。簡単にまとめたが実際はもっと多く、そして熱く語っている。その後も延々と俺を褒めちぎっていたのだが、止まらなかったので強制終了。
兎に角理由は把握した。納得はしていないが、把握はできた。問題は「俺はこんな大きな娘を持つような歳ではない」こと、自分を父親と慕う相手を抱くことに抵抗が生じることである。当然のことながら、今更父娘のスキンシップレベルでは満足するはずもない。高級ソープを知ってしまったが故に、安い風俗で済ませることができなくなってしまった男の気分を味わっている。
その辺りを相談したところ、自称娘から「常識を捨てろ」とお叱りを受ける。「世界が違うのだから常識も違う。だから柔軟な思考を持たなくては痛い目を見ることになる」と力説された。確かに言っていることはまともなのだが、その後に「だからこれまで以上にイチャコラしましょう」と付け加えさえしなければ素直に頷くことができた。
流石に良心に訴えかけるものがあり、せめて「呼び方の変更を」と思ったところで俺の中の天使と悪魔が、左右の肩を同時に叩いてサムズアップ。「それはそれでアリやと思うで?」と言わんばかりの眩しい笑顔に、俺の良心など既になくなっていたことを思い出す。
胸を押し付けられる等の各種おねだりと協議の結果、通常の呼び方は「お父様」でも良いがイチャつきタイムは「ご主人様」にすることで収まった。また、対外的にも「ご主人様」と呼ばせることで、こちらが支配関係にあるように誤認させるという形で説得に成功。
しかしながら「そういうプレイの方が興奮する」という取ってつけたかのような理由で納得してもらえるとは思わなかった。個人的には「ご主人様」で統一して欲しいのだが、しかしそうなるとメイド服も調達したくなってくる。
(エロいメイド服とかも良さそうなんだが……ガチャからでないもんかねぇ?)
そんなことを抱きつかれながら考えていると、思い出したかのようにライムが「これはどうしましょうか?」と突然何もない空間からカードホルダーを取り出した。いつの間にか消えていたと思ったらそんなところにあったのか。見えないから失念していたというより、ライムのインパクトがでかすぎて俺の処理能力を超えていた。
さっきから頻繁に押し付けられているもののことではないが、また俺の脳みそがオーバーヒートしそうな案件が発生。「空間魔法だ! 収納量が無限になるよ、やったね!」と思いきや、そんな都合が良いものではなく、一時的な保管しかできないらしい。長時間放置すればどこかに行ってしまい二度と取り出せないのだそうだ。
おまけに燃費が恐ろしく悪く、今のライムでも頻繁に使用すれば魔力切れを起こすという使えない魔法だった。素直に喜べるのはライムの各種強化くらいなものか。ともあれ「おかえりカードホルダー」といつもの定位置に装着しようとしたところで、中身を確認して手が止まった。
念の為にもう一度ホルダーの中身を確認……見間違えではない。カードが減っているのは当然だ。あの戦闘跡を見れば大分使ったことも想定内だ。だがしかし、だ。
「はは、ははははははは……」
笑うしか無い。攻撃カードはほぼ全滅。金、銀の攻撃カードは一枚も残っておらず、白金のバースト系しか残っていない。シールドも全滅。状態異常系カードもゼロ。回復系のカードも一枚も残っていない。
あるのは銅のカードとネタ枠くらい。おまけによくよく見れば、白金のカードも何枚か消えている。にも関わらずしっかりと残っているこの「タイたん」のカード。
(使えよ! ここはしっかり使っておいてくれよ!)
黒のカードは残っているが、使い道がわからない「祝福」では気休めにもならない。「コンテニュー」は俺が持っていたが……「転移」も補充しなければいけないので今日の「交換」はそちらに充てる他ない。結論から言ってしまえば――俺、戦闘能力激減。思わぬところからの攻撃で膝から崩れ落ちた。直後に顔面に覆う柔らかい谷間。
「私がおります。お父様には決して危険が及ぶことはありません」
ライムはそう言いながらムニムニと俺の頭部を抱え込むようにたわわな果実に押し付ける。俺を依存させにかかっているような気がしてきた。実際問題、今は何かあればライムに頼る他ない状態である。「何という策士!」とキリッとしたところでおっぱいに挟まれていれば絵にもならない。
座り込んでしまったが、立ち上がる力が湧いてこない。そりゃ「魔王」が相手だからね。沢山使うのは仕方ない。でもね、ここまで使わなきゃ勝てない相手だったなら素直に引き返して欲しかったとも思わなくもない。
「大丈夫ですか、ご主人様?」
そんな俺を見かねてか、ライムが優しく声をかけてくる。はい、イチャつきタイムのお誘いです。そういう設定にしたからね、仕方ないね。
ブラウザゲームに例えるなら「集めていた資源を寝ている間に根こそぎ略奪されていた」気分である。おわかり頂けるだろうか?
積み上げてきたものが一瞬でなくなる様は脱力感に苛まれるのも仕方がないのだ。その気分を払拭するためにも、心機一転の切っ掛けが必要だったのだ。こっちもパワーアップしまくってたので「変身」が失われたことには目を瞑ろう。めちゃくちゃ良かった。意思疎通ができるのもそうだが、言わなくても察してくれるところが最早神がかっている。
取り敢えず立ち直れるくらいにはなったので、今後は開き直ってライムを全面に出し、カードは可能な限り温存していく方針で行く。戦闘に使わないようなカードは無事だったので、恐らく問題は起きないだろう。ちなみに現在のカード状況は簡単に説明するとこんな感じになる。
銅のカード:可愛そうなくらい手が付けられていない。
銀のカード:便利系以外ほぼ全滅。
金のカード:可愛そうなほど使い切られている。
白金のカード:バースト系以外残っていて欲しいものが尽く消えている。
黒のカード:コンテニューと祝福のみ。
バースト系は効果範囲が広すぎるので使い所が中々ない。加えて、その威力から使用に相応しい相手というのがどうにもハードルが高く、適当に使うには勿体ない気がしてならない。貧乏性なのだから仕方がない。
「よし、じゃあそろそろ動くか」
魔法の鞄に簡易ベッドを仕舞いつつ移動を宣言。気力が回復したので体を伸ばし、次の目標へと向かう。だがその前に、この廃墟となった城を確認。「検索」のカードで金、銀、マジックアイテムに美術品のワードでそれぞれ検索。反応が集中している場所が一つあったので、そこに「マーキング」を使用して回収に向かう。
俺の腕に抱きつくライムと城を歩く。道中検索に引っかかった物を見つけるが、ポイントになりそうにないので放置。壁に書けられた美術品を変換してみたが、保存状態が悪いのか300Pにしかならなかった。
「この荒れ具合だと、宝物庫も期待できそうにないな」
俺の独り言に「それは残念ですね」とライムがくっつきながら応える。特に説明をした覚えはないのだが、どうやらライムは俺の持つスキルが「一日百個ランダムなアイテムを取り出す」と「物質を何らかの力に変換し、それを別の物へと変える」という能力を所持していることを理解しており、その条件なども把握していた。
説明の必要がないので手間が省けたと思うべきだろう。それに何度もライムには見せているので今更である。そんなこんなで辿り着いた宝物庫なのだが……
「見事なまでに荒れてるな」
「手入れが全くされていない、という感じでしょうか?」
そんな感じだろうな、と呟きながら取り敢えず埃に塗れた銀細工の装飾品を変換。状態が悪いのかやはり予想よりも低い。値打ちの有りそうな物を片っ端から変換していくが、やはりというか美術品は全滅。まともなポイントになるのは貴金属と宝石類ばかりである。
「んー、マジックアイテムや魔剣の類はどの辺かな?」
俺の言葉にライムが「あちらです」と指差す。そこにあったのは金で装飾された箱。中身は指輪だったので「鑑定」のカードを一枚使用する。
「耐熱の指輪」
はい、微妙。効果なんて調べる価値もないとばかりにポイントに変換。450万Pと意外と高額だったので「やってしまったか」と一瞬ビビった。他もライムがすぐに見つけてくれたのでサクサク変換。だって魔剣(形が歪)とか使いにくそうな上、ライム曰く「保有してる魔力が微量です」とアドバイスをくれるので、わざわざ「鑑定」のカードを使うことすらしなかった。
実際ポイントに変えても高額とは言い難く、1千万超えは一つもなかった。数も少なく、この宝物庫の目立った物を粗方変換したところで、合計が1840万ポイントにしかならなかったのだからがっかりである。
「まあ、廃墟となった城ならこんなもんだろう」
そもそも期待したのが間違いだったのだと思うことにしておこう。念の為にもう一度「検索」のカードでマジックアイテムを探すがヒットはなし。そこで気が付いた。
(あ、強力なマジックアイテムや魔剣みたいなのがあったら、あの悪魔が使ってるわ)
ここにあるという時点で、それは「使うに値しない」代物だったのである。この結果は当然だったのだ。とは言え、ポイントが増やせたことには変わりはない。前向きに考えようと宝物庫を後にしようとした時、ライムが俺の袖を引く。クイクイと引っ張られ、肘がポヨンポヨンと胸に当たるが今はそちらに気を取られるわけにはいかない。
「どうした?」
俺はポーカーフェイスでライムに尋ねる。
「お父様は有用なアイテムを生み出すために値打ちのある物を必要としているのですよね?」
ライムの質問に俺は頷く。
「では、一つ提案をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
俺は思わず「ほう」と感心して声を出す。ライムからの初めての提案である。受けてやらないわけにはいかない。なので俺はその先を笑顔で促してやった。
「お父様、神器を取りに行きませんか?」
次回あたりにカードまとめ。




