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6-5:今更なあれこれ

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


少し前から新しい作品を書いているのですが……何故かエロくなった。

別のものにしようと作り始めたらこれもエロくなった。

だったらいっそのこと初めからエロくしてしまおうとしたら「載せられないよ」的なものになった。

除夜の鐘では私の煩悩を打ち払うことが出来なかったようです。


 怯えるライムを宥めながら相手の言葉を待つ。ディバルを見た時に感じた威圧感を何百倍にもしたような重圧の下では、待つだけでも苦痛に感じる。おまけに当の厄災は何かを喋ろうとしているようだが、上手く言葉にならないらしく何度も首を傾げている。


―お前が何者であるかはさておき、何故「厄災」という言葉が出て来た?―


 悩んだ挙句、結局は頭に直接である。テンポが悪いが、相手に合わせる他ないのでこのまま話を続ける。

「色々と話すべきことはあるが、まずはこれから話そう。ディバルはまだ戦っている。あんたと同じように『厄災』となり『世界』と戦うことを選んだ。俺がここに来たのはその繋ぎ…そしてこいつを届けることだ」

 そう言って鞄の中から指輪型の神器「境界の指輪」を取り出し彼に差し出す。厄災が俺に近づきそれを手に取るとしばらく指輪を眺めた後、真っ直ぐに俺を見る。

「ディ、バル、が…」

 声は低く、小さかったが確かに聞こえた。長年喋る相手がいないとこうなるのかと場違いな感想を抱く。


―理解はした。ならばお前は何なのだ?―


「いや、異世界人と言ってるだろう…ああ、そういうことか」

 言葉にするのを諦めたコミュ障の疑問の意味が一瞬理解出来ずに、同じことを何度言わせるのかと呆れたが質問の意味を理解して軽く二度頷く。

「俺のスキルは見えているか? どうにも魔力がないことも相まって状況が少々良くない。ディバルの話を聞く限りでは、この件に首を突っ込んで『世界』をどうにかしないと命が危うい。仕方なく、という面はあることを否定はしないが、こんな世界に召喚されたことの恨みをぶつける機会だとも思っている。一応ディバルとは共闘という形で協力関係にある」

 大分端折っているはいるが、相手は厄災。ならば理解してくれるだろうと思っていたのだが反応が薄い。いや、どうやら考え込んでいるようだ。伊達に数百年独りでいたわけではなく、話すことは疎か思考さえも鈍っているのかもしれない。いや、そんなことよりも―

「取り敢えずこの威圧みたいなの止めてくれてないか?」

 さっきからライムが怯えまくって錯乱したかのようにデタラメに合図を連打しており地味に痛い。この調子ではいつか経絡秘孔でも突かれてしまいそうだ。俺の言葉でスキルか何かの効果を切ったらしくリュックの中のライムがようやく落ち着いた。

「取り敢えず自己紹介をし直そう。日本人の『白石亮』だ。あんたは?」


―サフィヨス。サフィヨス・ルーネルナス、だ―


「取り敢えず、自己紹介も済ませたことだから話をしたいんだが…」

 一度言葉を止め周囲を見渡す。そこは森の真っ只中、今から何をするにしても相応しい場所とは言い難い。なので「まずは落ち着けるところに行かないか?」と提案すると、厄災は大様に頷いてみせた。




「いや、まあ…落ち着く場所というのは人それぞれだと思うが…」

 まともに掃除などしたことがないのだろう。サフィヨスの住居は「散らかっている」というレベルを通り越して「ゴミ屋敷」一歩手前のところまで来ていた。何と言うか色々と残念すぎて台無しである。

 想像してみて欲しい。RPGでラスボスのいる部屋に辿り着いたら、妙に生活感があるゴミに塗れていた時の光景を。遺跡と思われた場所を根城にしているサフィヨスはこの場所を、掃除は疎か片付けすらまともにやっていなかった。

 結果、数百年分のゴミがだだっ広い遺跡を埋め尽くすに至る。異臭のするゴミ屋敷に住む魔王とか最早笑い話である。

「もう少し、まともな場所はなかったのか?」

 俺の問いかけに無言を貫くサフィヨス。しばらく非難するような目で見続けていたら目を逸らした。ものぐさっぷりやこの仕草を見る限り、はっきり言って臭い体臭と共にポンコツ臭まで漂ってくる。

(こいつ大丈夫か?)

 若干の違和感を覚えつつも一番前に来るのは不安。この分だと綿密な計画や目標も曖昧なのではないかと思えてくる。

「まあ、場所に関しては置いておくとして…ディバルは今帝国―帝都ディバリエストにいる。俺との要件が済んだらそっちに行ってくれ」


―帝国? まだ滅んでいないのか…ディバリエストとは何処だ?―


 首を傾げるサフィヨスに俺は嫌な予感が漂ってくるのを感じる。

「ディバリエスト帝国。ロレル帝国が崩壊した後に異世界人達が作った国なんだが…もしかして知らなかったのか?」

 質問の返答は沈黙。つまり知らないということだ。

(拙い。こいつ知識が昔のままで止まってやがる)

「こいつ今まで何やってたんだ?」という疑問が湧き上がる。もしかして700年もあって「何の成果も得られませんでした!」というオチはなかろうな?

 可能性としては「世界」に関すること以外に全く興味がなかった、という線もあるが、ディバルの話を聞く限りではスキルを持った者の情報を集めておく必要はあったはずである。にも関わらずこの世間知らずっぷりには不安を覚える。

「まあ、大陸で一番デカイ国だし方角くらいは教えておくから後で行ってくれ」

 俺が突き放すように言うとサフィヨスはじっとこちらを見ている。連れて行けと言うのか?

「俺は俺でやることがある。同じ日本人に『神眼』の能力を獲得したのがいる。そいつを探しに行く」

 やはりというか「神眼」というワードには反応した。ディバルが言うには「世界」に干渉可能な能力である。これで少しは饒舌になるのではないかと期待したが、それ以上の反応はなかった。

(そうか。何かがおかしいとは思っていたが、こいつはディバルと決定的に違う点がある。「世界」に対する執着心が明らかに低い)

 この温度差の原因は一体何だと考える。取り敢えず思い当たるのはディバルはあのSFチックな装置からして大半の時間を眠りに費やしていたと思われる。対してこちらは700年間活動しっぱなし。歳月が感情を薄れさせたという可能性は十分考えられる。

 俺に対する反応から、今のこいつをディバルに合わせて良いものかと考えてしまう。だが「どうにもならん」で片付けてしまう他ない。未だ挙動不審のライムのためにも要件を済ませたのでさっさと立ち去りたい。ここの臭いが服や体に染み付く前に。

「それじゃ、俺はもう一人の日本人に会いに行くから」

 そう言って立ち去ろうとしたところ待ったがかかる。一体何の用なのかと言わんばかりに不満顔で応じる。遺跡の臭いもそうだが、威圧系と思われるスキルを切ってもらっても「厄災」特有の妙な重みがまとわりつく感じがどうにも気になる。

 恐らくライムもこれを嫌って怪しい動きをしているのだろう。先程からリュックの中でもぞもぞしておりこそばゆい。俺はさっさと打ち切って離れるべく、このコミュ障に畳み掛けるように鞄から取り出した物を押し付けた。

「ああ、そういうことか! 確かにその格好じゃ旧友には会いに行くのは躊躇われるな。ほら、ボディソープとシャンプーだ。後これは服を洗う洗剤だ。使い方は解るな? それじゃ!」

「ち、が…」

 何か言おうとしているが気づかぬフリで早足に立ち去る。


―待て。確認したいことが幾つかある―


 心の中で舌打ちしつつ嫌そうに振り返る。戦って勝てる相手でなければ逃げることも出来ないので大人しく話を聞いてやる。


―まずお前が召喚された経緯。他の異世界人が召喚された場所と人数。あとディバルと会った経緯をまずは知りたい―


 他の召喚者についての情報は教えておいた方が良いかと、仕方なく知っている範囲で話す。場所についても問題ない。詳細は不明だがおおまかな位置でも構わないとのことで、地理に疎い俺でも問題なく説明出来た。あとは俺自身に関することなのだが…

「そう言えば聞いておきたいことが俺にもあった。お前さん大量のスキルを持っていると聞いているが、幾つくらい持ってるんだ? あと俺のスキルはやっぱり見えているのか?」


―スキルの総数は158だ。当然お前の持っているスキルも見えている。全部で4つ…どうやったか聞きたいものだな―


 思ったよりもスキルの数が少ない。数百人の異世界人を相手にしたと言っていたが、スキル奪取の条件は厳しいと見るべきだろう。それとやはりというかこいつも俺がスキルを複数持っていることに注目している。腐っても「世界」の敵。見るべきところはきちんと見ている。

「それに関してはディバルから聞いてくれ。お前さんらとはまだ共闘関係だ。俺から秘密を明かす気は今のところない」

 少しばかりこいつを見直した俺の言葉に「そうか」とだけ頭の中にメッセージを送ってくる。それくらい喋れ。

「俺に関しては欲深い王とその側近やらが、領土拡張の為に役に立ちそうなスキルを持っている異世界人が来るまで何度も召喚した結果、だ。逃げた先で他の異世界人に会い、逃げたり戦ったりしながら放浪してたら帝国でも面倒事に巻き込まれてな。鬱陶しいから殴り込みに行ったところディバルの下へ案内された」

 まあ逃げたと言ってもただ面倒事を回避しただけだが、とさり気なく修正しておく。嘘発見器持ちの可能性が高いので迂闊なことは言えない。それからついでとばかりに「聖杯」と「犠牲」のスキルを持っている者を倒していることを話す。

 この件についてはディバルも知っていたはずだろうし、何も言われなかったことから問題はないはずである。ディバルは「勇者」に対して恨みを抱いていたが、その件はサフィヨスには関係がない。「魔王」を倒す「勇者」のスキル所持者を撃破した俺に対して、コミュ障の「厄災」がどう反応するのか?

 少しばかり冒険したと思ったのだが、返ってきた反応は「ほう」という感心したようなメッセージのみ。思った以上に淡白でつまらない反応だった。


―ふむ。一つ疑問が沸いたのだが…お前が戦ったのか?―


 魔力がないことでその結果を信用していないのか、こんな質問をしてくるとは失礼な奴である。

「俺の持ち物は見えていないのか? 教える気はないが、ちゃんと俺が戦って倒している」

「犠牲」持ちの護衛女騎士に関しては途中でライムに交代したが、決定打となったのは俺のスキルである。よって俺の勝ち星。嘘にはならない。もう片方も同様なのだが、思い出して少し震えた。トラウマになってないようで何よりだ。

 ともあれこれで俺の評価を上方修正するだろう。今後のことを考えれば多少の背伸びは必要である。ところがこのコミュ障は考える素振りを崩さずそのまま黙っている。それから少しの間が空いた後、サフィヨスは顔を上げ俺を見るとメッセージを送ってきた。


―お前は自分のスキルの使い方を間違えている―


「はあ?」

 唐突のダメ出しに俺は間の抜けた声を上げる。だがそんなことは気にせず、サフィヨスはメッセージを再び送ってくる。


―例えば…お前が背負っているスライムが全く同じカード、枚数を持ってお前と戦う時、どちらが強い?―


 条件に付いて考える。俺と同じカードという条件でライムと戦闘する。戦うことなどないと思うが、仮に模擬戦として行った場合まず間違いなく俺が負ける。

「…あ」

 言われてようやく気が付いた。


―そうだ。お前がカードを使用して戦うより、そのスライムがカードを使用して戦った方がずっと強い―


 俺が察すると同時にコミュ障が気が付きたくなかった事実を遠慮なく突いてくる。「戦闘はライムにカードを渡して任せた方が良い」という今更気が付いても遅すぎる事実に、俺の今までの苦労は一体何だったのかという疑問が湧いてくる。

(そりゃ「粘体装甲」を思いついた時は自画自賛したけどさ)

 思えばそこで気がつくべきだった。気が付いてさえいれば、帝国での戦闘も先日の緑の怪生物との戦いも必要なかったのである。そんな風に顔には出さずショックを受けていると、また頭の中に直接声が響く。


―そもそも魔力のないお前のスキルで戦闘に役立つものと言えば「影界」ただ一つ―


「え、何そのスキル?」

 俺の言葉にサフィヨスも「え?」という声を漏らす。

 ああ、そう言えば「影渡り」は名前が判らないから俺が付けたものだったと、今更ながら正式な名称を知ったことに我ながら驚く。確かに今まで全く気にしていなかったが、今更そんな情報が何の役に立つというのか?


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[一言] ここまで読んで放置してた!いつの間に完結!うおおお
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