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特別。
そう思うだけで、なんというか心が膨らんだ。
身体ごと浮いてしまうみたいに、こう、ふわっと。
「かわいい」
ふと桃花がつぶやく。
「何が?」
「瑠美が」
「……暑さでどうにかなっちゃった?」
あきれて寝返ろうとしたけど、そっと両手で顔を捕まえられて。
「ねえ、もう一回笑って」
「いや、別に笑ってないけど」
「うそ、今笑ってた」
「笑ってない」
「笑ってた」
黙って見詰め合うこと数秒。
「じゃあ、笑わせてよ」
「いいよ。でも、後悔しないでよ」
そういって、私の脇腹に手を伸ばしてくる。
いわなきゃよかったなんて思っても後の祭り、私は笑うどころかなんども変な声を上げる羽目になった。
こんなこと、生まれて初めてだった。
こんなに友達とぶつかり合ったり、ふざけ合ったりするなんて、本当に今までなかった。別に友達がいなかったわけじゃない。でも、今まで自分から仲良くしようなんて思ったことなかったから。
桃花にこうして出逢うまで。
なんだか新しい自分に出逢えたようで嬉しくなる。
嬉しくなったら、自然と頬も緩んでしまった。




