妾とお揃いだしな
ギルド都市ラピーセル。
そこには冒険者という方々がいて、日夜市民や世界の平和、お金の為に働いております。
冒険者さんは基本的に、一般人には危険なお仕事を引き受けます。
野生動物が沢山いる場所にのみ生える薬草の採取。危険な生物の狩猟。
荷物の護送や重要人物の警護など。
その仕事は実に多岐に渡ります。
けれども、やはり冒険者の花形といえば、魔物退治でございましょう。
現在、私たちはその花形仕事を終えた新人として、手厚くギルドで持て囃されておりました。
「いやぁ、いきなりドラゴンを狩るとはねぇ。おいらはびっくりしちゃったぁ」
ギルド受付員であり、我々をギルドに入れてくださった恩人。ーークオッタルさんは嬉しそうに仰います。
「いえ。貴方様が私たちをここに連れてきてくださったお陰でございますよ」
私たちはナルさんのご提案で、ドラゴンさんたちの耳をギルドへ提出したのでございます。すると、彼らは私たちがドラゴンさんを討伐したと考え、大いに祝ってくださいました。
まあ、討伐はしました。
殺すつもりはなく、殺されない為の抵抗のつもりだったのですが。
その結果、私たちは一躍有名人へと変身しました。テレビでプロマグナト店員として取り上げられた時を思い出しますね。
「で、結構な金が入っただろう? 何に使うのさぁ」
「えっと、ですね」
本当ならば、マグナト異世界店への資金としたいところですが、そうもいきません。
マグさんとナルさんの目が怖いですから。
「武器を買おうと思います」
「お、そりゃあいいなぁ。……武器もなしで、ドラゴンを討伐したのかぁ?」
「え、ええ。私たちは素手の使い手でございますから。魔法使いもいらっしゃいますしね」
「そうかぁ。まあ、武器を持つことは良いことさぁ。これからを考えるならなぁ」
ふふふ、と笑ってクオッタルさんは我々に背を向けて行ってしまいました。
「武器を買いに行くぞ、君次」
「はい」
散財はしたくありませんが、仕方がありませんね。私は頷きました。
けれども、その前に道具屋さんへ行かねばなりますまい。
と、私たちはギルドのお隣にある道具屋さんへ向かいました。
「すいませーん」
「いらっしゃい。聴いたよ。ドラゴン倒したんだって?」
「はい。ところで、依頼の件ですが」
依頼番号を答えた後、手に入れた全ての薬草さんを道具屋さんへ手渡しました。
「かなりの量だ。こんなことなら、もっといい薬草頼むんだった」
ぼやきつつも、道具屋さんはしっかりと私たちに依頼料をくださいます。
「で、その金はどうするのさ? うちの商品買ってく?」
「魅力的なお言葉でございますね」
ここには冒険者として生きて行く為に必要なものが沢山揃えられております。もしもの為に、煙玉などは欲しい所ですが。
「ダメだ。君次は武器を買う」
と、ナルさんは一歩も引きません。
一銭でも価値のある武器を私に持たせたいようですね。マグさんもそこは変わらないようで、無言で胸を張っておりました。
猫耳さんがふんす、という具合に立ち上がっているのが愛おしい。
「武器を買うのか。一応、うちにも武器は置いてあるよ」
そう言って、道具屋さんが指差す方向には確かに武器が沢山ありました。
「全部曰く付きだけどね。でも、能力は全部保証するよ」
曰く付きは嫌ですが、道具屋さんの好意は無碍にできません。近寄り、実際に手に取ってみます。
やはり、最初は王道の剣でしょう。
剣を鞘から勢い良く抜き去り、その銀の刀身を宙にかざします。
「……格好良い。だいすき」
「ありがとうございます」
マグさんの猫耳さんが狂喜乱舞しておりますね。これはこの剣で決まりでしょうか。
「まだあるぞ。これなんかどうだ?」
ナルさんが差し出してきたのは、杖でございました。良いですね。
賢そうに見えます。
「ふむ。悪くないな。魔法使い系の妾とお揃いだしな」
「ありがとうございます」
これは杖も捨てがたいですね。
使えるかはわかりませんけれど。
「青方。これも」
「君次、これなんてどうだ?」
女性のお買い物は長いことが多いです。マグナトでも、女性の方の方が注文に手間取っておられました。
私はまるで着せ替え人形(武器のみ)となりました。どちらも実用性も重視しているところが侮れませんね。
店の目星い物をあらかた装備した後に、残されたのは変なものばかりでした。
スプーンや抱き枕などがございます。
「これらは武器なのですか?」
「スキルが付いているんじゃないか?」
私の疑問に対して、ナルさんが疑問で返答なさいました。武器にもスキルが備わることがあるのですね。
武器というか、道具ですかね。
「スコップまで」
スコップと言いますと、マグナトを思い出しますね。バギングスクープと言えば、マグナトファンには一発で理解できますよね。
そうです。
揚げ芋を掬うあのスコップのようなものでございます。
これ、テストに出ますよ。
流石に、このスコップはそこまで小さくはありません。大きさでいうと、私の身の丈ほどあります。
「懐かしいですね」
そっと、私はスコップに手を伸ばします。そして、私の指がスコップに触れた瞬間、それは起きました。
「やー。そこ触らないでくださいー」
可憐な声が、スコップから響いたのでございます。
そう、スコップの鉄の部分に口が生まれ、声を響かせたのでございます。
「あ、あのどちら様で?」
「わたしの名前ー? トート」
トートさんと言う名のスコップが現れました。
今回、青方君次の武器の案を出してくださったのは、『生徒会に異議あり!』の紅夢想さんでございます。ありがとうございます! スコップが武器というのは、意外とありだと思いますね。使い勝手がよろしいですから。
http://book1.adouzi.eu.org/n6220cq/
面白いので是非読みましょう!
また、シャベルとスコップの違いですが、方言差があるようです。
喋るからシャベルにしようかとも思いましたが、自重しておきます。長く大きい方がスコップということでお願いします。
長々と後書き、申し訳ありませんでした。
これからもよろしくお願いします。




