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砂漠の星 郵便飛行機乗り  作者: 降瀬さとる
第3章 ラシェット・クロード 時の試練編
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記憶への旅 7

僅かな月の光さえも木は遮り、山は闇に沈んでいる。


夜の山中のこの世界での再現度を、どう形容したらいいのか僕にはわからなかったが、やっぱりここも、妙なリアリティに包まれていることには違いない。現実においても、この世界においても、闇は払い難いほど重いし、色々な動物の鳴き声や木々を歌わせる風の騒めきは、僕が今、どうしようもないくらい、山の体内にいるのだということを自覚させた。


街にいては、到底気づかないというか、つい忘れてしまうが、本来夜とはこういうものなのだ。この感覚はちょっと夜間飛行機とも違う。なんだかんだ言っても、飛行機は頼り甲斐のある相棒で、それに包まれているというある種の安心感と、僕はこの機械を手足のように駆使できるのだという心持ちが飛行中にはあるからだ。特に僕はそれをいつも強く感じていた方だった。


そんなことを考えながら、僕は山道を歩く。今、僕が頼りにしているのは、ランタンと懐中電灯の灯り。それと、バルスの大きな背中だ。

彼の道案内に従い、僕達はひたすら山道を登っていた。今のところ、道は一本道である。木々も途切れる様子はない。これがしばらくすると、木も生えない岩山に変化するのだが、それはまだずっと先のようだ。


「大丈夫か? 若僧。ちゃんとついてきているか?」

バルスが振り向かずに聞いてくる。それに僕は

「はい、大丈夫です。疲れを感じないのは、やはり変な感じですが、今は有難いですね」

と返した。


「ハッハッハ、違えねぇ。この調子なら日が昇る頃には着くだろう。それまではぐれるなよ? はぐれちまうってぇのがここでは一番厄介だからなぁ」

「はい。わかりました。でも、このペースなら問題なくついていけそうです」


僕はそう言いつつ、ずっとバルスの背中を見つめ、時折、足元を確認しながら、ずんずんと山の奥へ進んで行く。

そして、その単調なリズムに慣れてくると、次第に頭は考え事を始めた。それは、僕が今まで見つめてきた、数々の背中についてのことだった。思えば僕は、まだたった二十数年の人生だけれど、その上に置いて、色々な人の背中を見てきた。


幼い頃は別にして、僕は大抵の場合、誰かの背中を追うことによって成長をしてきた気がする。

と言うのも、その一番最初は父親だったのだと今になれば思うのだが、若い時はそれを素直には認められないものだ。

だから、僕の一番最初に追いかけた背中は父というよりは、サマルのお父さんの背中だったという印象の方が強い。


僕もあんなふうに、優しく、逞しく、それでいて子供の心をちゃんと持っている大人になりたいと。


なかなか青臭い発想だが、その思いは根本的には今でも変わっていない。そういった幼い頃に感じた理想というのは、容易には否定できない、不思議な強固さを持って、未だに僕の中に居続けている。言わば、僕の心の原風景みたいなものだ。

それが、いつの頃からか変わり始めた。その時期もなんとなくわかっている。


それは軍学校に入ったこと、また、そこでの訓練の日々だ。


軍学校で僕の理想は徹底的に否定された。まぁ、考えてみれば当たり前の話だ。軍というところは極めて現実的にできている。それを評して中等学校時代のサマルは


「軍ってところはどうも好きになれない。気楽に機械いじりでもしている方が、僕の性に合ってる」


と言ったのではなかったか。

サマルはその時既にわかっていたのだ。たぶん自分と気が合う僕も、軍には肌が合わないであろうことを……当の僕は全然気が付きもしなかったというのに。


結局、当時の僕は自分の理想と両親の望みをごちゃまぜにして、将来を選択してしまったのだろうと思う。そして、それに気がつくのに随分と時間をかけてしまった。


僕が軍人に向かないと最初に見抜いたのは、リー辺りだったと思うが、それを僕に気づかせてくれたのは、ドレット・バラン団長の背中だった。


僕からしてみれば、ドレット団長もとても軍人に向いているとは思えない人だった。

なぜなら、彼はとても優しく、逞しく、いつも飄々としていて、それでいて子供っぽいという、僕の思い描いた理想通りの人だったからだ。

そんな人がなぜ、第1空団の団長をやっているのか、僕は今でも妙に思うが、それはやはり実力と、何より家柄を重んじる世界だったからだろう。団長は実力は勿論のこと、家柄もその重責にぴったりだった。なぜなら、彼の曽祖父もかつて軍の重責を担っていた大人物だったからだ。その影響力は未だに残っているらしく、一族の推薦があっては、いくら野望の「や」の字も持っていない団長でも断れなかったのではないかと、僕は勝手に推測している。


そんな団長が何を思ったか知らないが、僕の空団入りを後押ししてくれたらしいと知ったのは、僕が退団した後だった。団長はそんなことは一言も言わなかったのだ。しかし、その代わりと言っていいのかはわからないが、団長は僕に人一倍訓練をやらせ、任務でも常に最前線を張らせた。そうやって空団とボートバル軍、そして王族や貴族の全てを僕に垣間見せてくれた。でも、僕はそれを見るにつけ、日に日にうんざりしてしまった。


「それで結局……団長は僕に何を期待していたんだろう……?」


「ん? 何か言ったか、若僧?」

「えっ? あ、いえ、何も……ただの独り言です」


そう言うとバルスは前に向き直り、また道を吟味し始めた。どうらや思わず口に出てしまったらしい。

僕はふーっと息をつくと、性懲りもなくまた考える。

いや、それは僕の考え過ぎで、団長は別に僕なんかに何も期待してなどいなかったのではないか、と。


その後、僕は軍を辞め、けれども飛行機から降りることはできなかった。

たぶん、唯一これだけだったのではないか。僕が軍を辞めて残ったことは。


即ち、僕は飛行機に乗るのが好きだと言うことと、飛行機の操縦なら上手だということ。それだけ。


「でも、そんな自信もラウル爺さんに出会ったことで呆気なく、打ち砕かれったっけ……」

そう思い出すと、僕は思わず笑いそうになってしまったけれども、またバルスに怪訝な顔をされそうなので、何とか我慢し、道を登り続ける。


それから今までも、僕は色々な人の背中を見せてもらって来た。


例えば、ジン。僕は彼の自分の仕事に対する、丁寧さやこだわりに強く惹かれた。

それは彼の店で出されるものを口にすれば、簡単にわかった。彼は、自分の店で客が口にするもの全てにおいて、丁寧に選び、こだわっていたのである。それこそ水やピーナッツに至るまで。でも、値段はそこらの店と同じなのだ。そして、そのこだわりが全然押し付けがましく、ごく自然に客も、それを「当たり前のように」受け入れている。

ジンはそんな様子を見て、静かにグラスを吹きながら微笑んでいた。僕は感服した。


それ以来、僕もより自分の商売道具である飛行機の整備や、操縦技術の向上に取り組むようになった。そして、他の郵便飛行機乗りよりも速く、しかも同じ値段で、確実に届けるということが僕の商売のモットーになった。


要するに、どうせ好きなことをするならば、とことん極めたいという気持ちが湧いたのだったが、そんな時に出会ったもう一人がラウル爺さんだ。彼の背中も、僕に色々な景色を見せてくれた。彼の背中は言うなれば「この人について行けば、きっと面白いことに出会えるぞ」と思わせる背中だった。


そして、そんなラウル爺さんの背中と似たような雰囲気の背中を、僕は今まさに追いかけている。


「そう言えば……ラウル爺さんとバルスさんは確か、知り合いだったはずだよな……?」


僕はそう思ったが、黙々と道を探し歩くバルスの背中に、今その質問をぶつけることはできなかった。

でも、もしそれが本当だったとしたら、人生の縁とは何とも不思議な偶然と必然に満ちているのだろうと、僕は思わずにはいられなかった。



それから、しばらくした頃

「おい、ちょっと例の写真を見せてくれ」

とバルスが言ったので、僕はリュックからアルバムを取り出し、バルスに渡した。

そして、二人で辺りを照らし、見当し合う。


「うーん……ただでさえ手がかりが乏しいのに、こんなに暗くてはよくわかりませんね」

「まぁ、そうだなぁ。同じ場所を見るにしても昼と夜ではガラッと印象が変わっちまうってこともあるからな」


バルスはそう言って頭を掻いた。しかし、当たりはつけているようで

「だがな、よく見ろ? まずはこの辺りに生えている木の種類だ。そして、次に写真に写っている木。ほら、ほとんどが同じムクロジュの木と、ナレの木だろ?」

と言う。しかし、僕にはそのことの重要性がさっぱり分からず、


「はい。それはそうですが……でも、ムクロジュもナレも特に珍しい木ではないと思いますが……?」


と返した。するとバルスはまた、僕にわかるように丁寧に説明してくれる。


「ああ。この辺りではな。しかしこのナレの木はな、実はちょっと普通のナレの木とは異なるんだ。通称「古代ナレ」と言ってな、寒さに強く、若干背丈が小さいのが特徴のここらの固有種なのさ。そして、この木とムクロジュの木が同じ所に群生しているのは、世界広しといえども、このベルト山脈の谷間しかない」


「谷間?」

僕はその言葉にはっとした。そう言えば一向に岩山の斜面に辿り着かないな、とは思っていたのだ。


「なるほど、じゃあサマル達は山の上を通るルートを使わずに、山の裾野の谷間にある森を抜けて、遺跡に至ろうとしたのですね?」

僕がそう聞くと、バルスは自信ありげに

「ああ、おそらくな」

と応えた。


「森の中を通り、下から遺跡に回り込もうとしていた、その時に偶然この山小屋を見つけたのだろう。俺は当時上から行ったからな。だから山小屋の存在を知らなかった」

「でも、それだと変ではありませんか? サマル達も崖崩れに道を阻まれたんですよねぇ?」

「そりゃあ、結局遺跡の入口は一つなんだ。そこが塞がっていたら、どちらから来てもお手上げさ。さ、そうと決めたら、すぐに出発だ。間違っていたら最初からやり直しだからなぁ。時間が惜しい」

「はいっ。そうですね、すぐに行きましょう」


僕達はそう言うと、アルバムを仕舞い、また歩き出す。

今度は緩やかな登り坂、より闇の深い森の奥の方へと向かって。


途中途中で写真をまた確認したが、これといった手応えはなかった。

辺りはより鬱蒼としてきている。こんなに森の深くまで来てしまったら、コンパスがあっても容易には戻れないだろうなと思うくらいに。

しかし、僕の感覚の中では、だんだんと目的地に近づいて来ている気がしていた。

すると、バルスが

「ちょっと、疲れたな。小休憩とするか」

と言い出した。僕はその言葉のおかしさにすぐに気がつき

「つ、疲れですか?」

と首を傾げる。でも、バルスは当然のように


「ああ。ちょっと気持ちが疲れちまったからよ。気分転換さね」


と言い、その場にドスンと腰を下ろしてしまった。

僕は

「そうか。確かに精神的な疲れというのは感じるかもしれないな」

と、素直に感心し、それに倣って座るしかなかった。


バルスが焚き火を作り出す。

だから僕もコーヒーとパンを出した。空腹感も勿論ありはしなかったが、風情のためだ。それはバルスの焚き火も一緒だった。特に動物を警戒したり、寒さを凌ぐためのものではないのだ。


僕はコーヒーを啜り、

「なんだか奇妙な感じですね。全然、登山という感じがしないのは」

と言う。するとバルスは笑い、

「そうだな。景色なんかはよくできているが、さすがに状況による緊張感ってもんがここにはないからなぁ」

と言った。

それはその通りだと僕も思った。

僕達はここで死の危険と隣り合わせで登山をしているわけでもないし、すぐに帰れないということもない。そういう意味では登山とはまるで呼べないことをしているのだから。


バルスがパンを齧ろうとするのを見て僕は、リュックからジャムを取り出す。それはサマルの家からこっそりと持ち出してきていた『スクアータ印のジャム』だった。それを見て、バルスはとても喜んでくれた。僕も久しぶりに食べてみたが、やっぱり美味しかった。これは無事に現実に帰ったら、買って、キミにも食べさせてあげようと、そう思った。


30分程座り込んだ後、僕達はまた歩き出した。

休憩の効果は確かにあり、なんだか前よりも落ち着いて道を観察できるようになった気がした。


「あ」


そして、僕はその分かれ道に気がつくことができたのだ。

道と言っても蛇の通った後のような細い道だ。

それは、写真にあった道と同じ角度で曲がっていて、周りの木の生え方からもまず間違いないと思われた。茂みに隠れていて、うっかり見逃しそうになったが、それはここに来てから初めての確かな手応えだった。


「じゃあ、こっちの道が有望ってことだな」

「はい。いよいよって感じですね……?」

「そうだなぁ。しかし、まだ油断はならねぇ。ゆっくり行くぞ」


バルスはランタンを一段と高く掲げ、その道を行く。僕も左右を懐中電灯で照らしながら、その後ろについて行った。時刻はどのくらいだろう? もう夜中2時近い感じはした。



やがて、森の隙間みたいな広場に出た。

上を向いても木がないため、そこからはよく月が見える。その角度からして、やはりあと2時間ほどで夜明けが来そうだ。いくら疲れないからとは言え、よくここまで歩き詰めたものだと、僕は思う。


「なんか、変なところに出たなぁ」

「ええ。この付近だけ木が生えていないというのは……自然にはあり得ることなのでしょうか?」

そう僕は聞いたが、こればかりはバルスにもわからないようだった。


僕達は月を見、そして反対を振り向き、目の前の山の斜面を見上げる。そこは今いる場所とは打って変わって、ゴロゴロした岩肌の斜面だった。あまり、気がついていなかったが、知らず知らずのうちに結構な標高まで登ってきていたらしい。ここは、まさに山の裾野の谷間、その最奥部に近かった。


「サマル達は、ここからあの斜面に向かったのでしょうか?」

「さぁな。しかし、そこからしか遺跡には行けそうにない」


アルバムを見ても手掛かりはなさそうだ。しかし、あえて言うならば、山小屋の周りには木が生えているのだ。と、いうことは遺跡に行くのならば、斜面に向かうのが正しいのかもしれないが、山小屋を探すなら、この辺りの森をぐるっと見て回るのが良いだろうと思われた。

これにはバルスも頷いてくれ、

「よし。じゃあ、ここを中心にして虱潰しに、全方角を当たってみるしかねぇか」

と言った。


「手分けてしてですか?」

「いや、森をナメちゃあいけねぇ。すぐに方向感覚が狂うからな。一緒に探すのよ」


しかし、僕はここの地形の特徴にすぐに気がついた。


なんとなく、一方に向かってゆるやかに上がっているのだ。そして、その先からぐっと一気に上がっている。背の高い木々に目隠しされていて、遠くからではわからなかったが、その奥は鋭く切り立った丘というか、崖のようになっていた。


その岩壁を見つけると、僕達はどちらからともなく頷く。

そして、ピッケルと手袋、靴やロープなどを出し、それらを素早く身につけると、すぐさまその壁に取り付いた。高さはビルの4、5階分はあるだろうか? しかし、僕は訓練でこの手の岩壁は慣れていたし、バルスもお手の物のようだった。互いにルートを確認し合いながら、僕達は難なく10分程でそこを登った。


僕が頂上に手を掛けると、先に登りきっていたバルスが手を貸してくれる。

そうしてから、バルスはおもむろに、その丘の奥に向け、ランタンをかざした。


すると、それはそこにあった。


丘の周りの背の高い木とは違う、小ぶりなナレの木に囲まれ、まるで隠れるようにひっそりと建っている、小さな山小屋が。

それは改めて写真と見比べるまでもなさそうだった。サマル達が泊まっていた、あの小屋だ。


僕は息を飲んだ。

バルスはそんな僕を、ほらと促す。どうやらここから先はお前さんが行けということらしい。

僕はそれに黙って頷き、手袋などを外すと、懐中電灯を手にゆっくり歩き始める。


近づいて行くと、その小屋から微かに灯りが漏れているように見えた。正面には窓はない。側面からも光が漏れていないところをみると、側面にも窓はないようだ。もしあるとしたらそれは奥だろう。そこから光が微かに漏れているのだ。


僕はそっとドアの前に立った。

小屋はよくありがちな、丸太を組んだ作りのものだったが、相当な年月の経過を思わせた。

しかし、それでもこうやって、ちゃんと耐えているのだから、木の加工も、丸太組みもしっかりしている建物なのだろう。こんな木製の小屋など、すぐに朽ち果てそうなのに、そうなっていないというのはどこか変な気もするが、ひとまずそう思っておくことにした。


そして、僕はドアをノックしようと手を伸ばす。

すると、そこで僕はまた、驚くべきことに気がついてしまった。


それは、このドア。その表面にあったであろう彫刻のことだ。


今、僕の目の前にあるそれは、すっかり磨り減り、紋様もよーく見ないと判然としないが、僕はこのドアの彫刻に見覚えがあった。


一枚の大きな木の板でできているドア。その表面には蛇や葡萄、武器、幾何学紋様などが彫られ、他にもたくさんの見たこともない動物が丁寧に彫られているように見えた。


「バ、バカな……まさか、ここって……!?」


僕はそう思うと、慌てて周囲の山を見渡した。しかし、まだ夜明けまで少しあるためか、その全貌はこんな灯りでは照らし切れない。


しかし、僕はそんなことがあるはずないと証拠を探しながらも、それを半ば確信していた。

背中にはじっとりと嫌な汗が伝う。


「間違いない……ここは、あのキミの遺跡で見た……」


「おい、どうしたんだ、小僧? まさか、ハズレだったか?」


僕がなかなかドアを開けないことに、痺れを切らしたのか、バルスが遠くから聞いてきた。

その声で僕はようやく正気に戻って、首を振り応える。

何も問題ありませんと。

そうして、ひとつ息をつくと、僕は様々な疑問を抱えたままドアをノックした。

だが、返事はない。


僕は思い切ってドアに手を掛ける。


すると、それは何の抵抗もなく手前に開いた。


ドアの隙間から漏れる光と暖かさが僕の体を包み込む。

そして、その眩しさに目が慣れるよりも前に部屋の中から、


「あ、本当に来た! 写真と同じ顔っ! ラシェット・クロードだっ!」


という声が聞こえてきた。


僕はその方向を見る。

すると、そこには見たことのある人物が立っていた。

いや、見ていたよりもずっと健康的で、活発そうな美しい顔立ちの女性だ。ジェラルダ・ヤンだった。


「ヤン……さん?」


僕はそう言いながらも、視線をその奥へと進ませる。すると、そこにも見覚えのある顔、ケーン・ダグラスとイニエ・イリエッタが座っていた。二人は僕に「よぉ」とか「あ、どうもー」とか言いながら、にこやかに手を振っている。


僕はそれを見てまた、ヤンの方を見る。

そんな僕の顔を見て、ヤンは不思議そうな顔をした。


まぁ、それも無理もない。僕は今まで、てっきりここに何か三人の居場所を示す「ヒント」があるものだとばかり思っていたが、どうやら違ったらしいことに、この時初めて気がついたのだから。

ヒントどころか、本人達が待っていたことに僕は、ただただ驚いていた。


それにこの小屋……


僕はまた、わけがわからなくなってしまった。



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