緋色 2
サウストリアのメイン通りから一本入った裏道の、歩道に面したオープンカフェテラスで、朝っぱらから何とも奇妙なメンバーが朝食を採っていた。
一人は大きいサングラスを掛け、大人っぽい格好をした黒髪の美少女。一人はグレー髪にヒゲの似合う、なんとも渋い老紳士。そして、スパイ風のダークスーツでキメ、サングラスまで掛けた男女二人……
どうでもいいが、すごいサングラス率の高さだった。
皆それぞれ理由があるため食事中とはいえ、なかなかサングラスを外せないのだが、そんなことは端から見ただけではわからない。だから、こんな集団はただの怪しい人達か、なんちゃってセレブくらいにしか思われない。
実際、そんな四人が同じテーブルに座り、黙々と朝食を食べている光景は、やはり歩行者の目を引かずにはいられなかった。
が、しかしまだ早朝なだけ良い。
これがもし通勤通学の時間帯だったら、ミニスはきっと穴にでも入りたくなっていたことだろう。まぁ、今でも十分過ぎるくらい、人々の視線を痛く感じるのだが。
「はぁ。ま、そりゃそうよね」
とミニスは思う。
しかし、いったい道ゆく人々は私達四人の関係をどう見ているのだろうかとも心配した。
ひとつ、無理矢理考えられるとしたらそれは、このヒゲがキミの祖父で、私達二人が若夫婦、そしてキミが私達の娘と言ったところか。
しかし、それには大いな矛盾がある。
それは……
「私はこんな大きな娘がいるような年齢なんかじゃないわよ!」
ということだった。
ミニスは、そう思われるのだけは勘弁、と心の中で叫んでいた。
でも、それと同時に「やはり目立ち過ぎには注意が必要だわね」と、ちゃんと冷静に考えられてる自分もいたのだが。
一方、そんなミニスの気がかりも知らず、他の面々は何やかんやと喋りながら朝食を食べ進めている。
ミニスはその様子を聞くともなしに聞きながらコーヒーを飲む。
「トカゲの手先!?あいつらが?」
カジがエッグ・ソーセージのソーセージを齧りながらキミに言った。するとキミは
「そうよ。ちなみにこのヒゲさんも本当はあのペンギンとかいう人に雇われていた殺し屋で、トカゲの仲間なの。ま、でも今は私の味方になってくれたんだけどね」
とパフェをつつきながら言う。
それを見てミニスは、朝からよくそんなものが食べられるわねと思いつつも
「ちょっと待ってよ、なんでヒゲさんはそんなにあっさりペンギンを裏切って、あなたの味方になってくれたわけ?全然わからないわ。ちゃんと理由を説明しなさいよ」
と疑問を口にした。しかし、それに対しキミは
「さぁ?別に。なんとなく、ちょっと気が合っただけよ。ね?ヒゲさん?」
と素っ気なく言うだけで、ヒゲも
「はい。まぁ」
と頷き、黙々と紅茶を飲むのみだった。これでは当然ミニスは納得しない。
「あのねぇ、そんな適当な理由で、あ、そうね、友情っていつどこで結ばれるものかわからないものだし、そんなこともあるわよねー、とでも私が言うと思ったわけ!?ふざけるんじゃないわよっ」
「まぁまぁ、ミニス。いいじゃねぇか」
若干ヒートアップしそうな相棒を制しそう言うカジの顔は、憎たらしいほど落ち着いていた。その顔を見てミニスは益々腹を立てそうになる。
「何がいいのよ?よくないことだらけでしょ!しかもこの娘は何も説明しようとしないし……」
ミニスがそう言いかけると、キミが
「別に何も説明してないわけじゃないわ。トカゲが現れたこととか、ちゃんと説明してるじゃない」
と口を挟んだ。それを受けてカジも
「そうだぜ。お嬢ちゃんは、ちゃんと事情を説明しようとしてくれてる。だからよ、多少の疑問には目を瞑ってやろうぜ」
とキミに同調した。その前ではやはりヒゲも同調するように、うむと頷く。
「あ、あんたらねぇ……」
ミニスはそれを見てさすがにうんざりした。なんなの? この三人は? と。
だから、とりあえずここは黙ってカジに任せることにし、ミニスは椅子に深く腰掛けなおした。
それを見てカジは満足げに笑い、
「そうそう、ここは大人しく戴ける情報だけ戴いとこうや。誰にだって隠したい事情の一つや二つくらいあるもんだ。な?そうだろ、お嬢ちゃん」
とキミに話を振った。
それに顔を上げたキミは
「ええ、そうね」
と特に肯定も否定もしなかった。
カジはそんな様子のキミの目を見る。正確に言えばサングラスの奥に隠されている目を見ようとした、ということだったが、カジは先ほどのホテルの部屋でキミの目を見ていたので、頭の中ではイメージができていた。
二人がホテルの部屋に押し入ったあの時、キミはサングラスをしていなかったのだ。
だから、その時にカジとミニスはキミの緋色に輝く瞳を目撃できたわけなのだが、キミは部屋を出る際にサングラスを掛け、その目を隠してしまった。
でも、そのことの重要性に気づいていたのはカジだけだった。
カジは気づいていたのだ。このキミという少女の目が、あのショットの目にそっくりな色をしているということに。
そして、そのことが何か大事な意味を持つかもしれないということも薄々勘付いていた。ミニスがそのことに気がついていないのは、おそらくショットの目を見ていないからだろう。あの時、カジとミニスはそれぞれ別の場所で待機していたのだ。だから角度的にも距離的にも、ミニスにははっきりとはショットの目までは見えなかったに違いない。カジはそう思っていた。
そのことをミニスに話さないでいるのは、まだ確信が持てないからだ。
それに、いくら珍しい瞳の色だとは言え、それがどういうものなのかカジには見当もつかない。今更ながら、ナーウッドにショットのことをもっと聞いておけばよかったとカジは思った。
だからここは、ひとまずキミのことを信用したフリをして情報を聞きだすことにしようとカジは考えていたのだ。また、その過程でキミのことを本当に信用していいかどうかも判断しようと。
「んで、話は戻るけどよ。お嬢ちゃん。このヒゲの手助けもあってトカゲの仲間は捕まえることはできたけど、あいつらはラシェットさんがどこに捕まえられているのか知らなかった。しかも、唯一知っていると思われるトカゲの野郎には逃げられちまったって、そういうわけだな?」
カジが聞くとキミは
「ええ、そうよ」
と答えた。
「よしよし、そこまではわかった。それでこれから、ラシェットさんの居場所を探そうってこともな。でもその前に、いくつか教えてくれ。そもそも、お嬢ちゃんとラシェットさんはなんで一緒に行動しているんだい?それにどうして昨晩はKとの接触場所に来なかった?」
カジが単刀直入に聞くと、キミはパフェをつつく手を止め
「私とラシェットが一緒に行動しているのは、私が砂漠で倒れているラシェットを助けたからよ。それでラシェットはその恩返しに、私をコスモの学校に入れてあげるって約束してくれたの」
とどこか寂しそうな顔で答えた。
「ああ、それはラシェットさんがグランダンで行方不明になった時の話だな?」
「ええ。そうよ」
「そっか。まぁ、わかった。でもよ、それなら何も一緒に行動することはなかったんじゃないか?ラシェットさんの仕事が終わった後にでも、迎えに来てもらえばよかったんじゃ……」
カジは言う。それにキミは
「私が一緒に行くって言ったの。私は両親が亡くなって以来、ずっと砂漠で一人で暮らしてきたから、外の世界をどうしても見てみたかったのよ。それに、せっかく久しぶりに友達ができたのに、お別れするなんて、なんだか寂しくて……」
と言った。するとカジとミニスは
「あっ、そうなのか……」
と気の毒そうな顔になる。
「そっか、それは例の内戦でかい?」
「うん。そうよ。でもあまり気にしないで。もう済んでしまったことなんだから」
そのキミの言葉にカジは、なにやら苦々しい気持ちになった。また、それと同時に「なるほど、だからラシェットさんはこの子のことを……」とやっと腑に落ちた気がした。
しかし、その途端、
「それに私とラシェットとは共犯なの。なぜなら、その例のトカゲにもらったっていう手紙。一緒に砂漠に隠してきちゃったんだもの」
と、突然キミが言い出したので、カジはまた驚いてしまった。
それだと、話が全然違ってくるではないか。
「か、隠しただって!?」
「そうよ。だから私達は一緒に行動していたとも言えるし、Kとの約束の場所にも行かなかったのよ」
キミはカジが驚いている様子を涼しげに見ながら、またパフェを食べ始めた。
そんなキミを見てミニスは思っていた。なんか、この子は年齢の割りに堂々とし過ぎていないか? と。
それにこの子はラシェットから、ほとんど全ての事情を聞いているようだ。トカゲのことも、Kとの約束のことも、そして我らが上司リー少尉のことも、その上司が出した手紙のことも。
しかし、そういった込み入った事情を聞けば聞くほど、この子が危険な目に合う可能性は高まるのではないか?現に、こうしてこの子はトカゲの一味に襲われたのだ。ラシェットはちゃんとそのことまで承知していたのだろうか。それとも、そのくらいこのキミって子をラシェットは信頼していたのだろうか……
しかし、いずれにせよこの子の今までの仕草や言動を見る限り「ラシェットとお別れするのが寂しかったから……」などという子供っぽい感情は似合わない気がする。
ミニスはキミが言葉の端々に嘘を入れ込んでいることを直感で気づいていた。
「まぁ、確かに肝心の手紙がないんじゃあ、Kの所に行っても無駄だったろうけどよ。でも、その手紙は見つかっちまいやしないのかい?」
わけがわからなくなりつつも、カジは疑問を挟む。するとキミは
「大丈夫よ。絶対に見つからない場所に隠したから。それに隠し場所を知っているのは私とラシェットだけ。だから私達のどちらかが口を割らない限り、あの手紙は見つからないわ」
と言ってカジの心配を否定した。
「うーん……なるほどなぁ」
そう言うとカジは言葉を詰まらせてしまった。
それを見計らい今度はミニスが質問を再開する。
「ねぇ、キミさん。その手紙を隠そうって案。それはラシェットさんが思いついたことなの?」
その質問にキミのパフェを食べる手が止まった。そして、少し考えた後、キミはあきらめたように
「ううん。ラシェットから事情を聞いて、私が考えたの」
と口にした。
それを聞いてカジは目を丸くしていたが、ミニスはやっぱりねといった感じで
「じゃあ、それはどうして?なぜ、あなたはあの手紙を隠そうと思ったの?」
と重ねて聞く。
「それは……なんとなくよ」
「なんとなく?」
ミニスはキミの言葉を繰り返す。
そして、まただ、また「なんとなく」という茂みの中にこの子は肝心なことを隠そうとしていると思った。
しかし、
「うん。そうよ。なんとなく、とても不吉な予感がしたのよ。あの手紙から。だから、これは隠した方がいいって。それにその方がラシェットにとって交渉が有利になるんじゃないかなって思ったの」
と続けてキミが言った。
ミニスはその言葉には嘘がないように感じられた。
だからこそ、うーん、これじゃこの子が正直な子なのかどうか、またわかりづらくなっちゃったわねと、ミニスは困ってしまった。
「ふーん、だから、なんとなくなのね……」
ミニスは考える。
この子のことをどう受け止めたらいいのだろうかと。
この子はきっと、何かを隠している。それは私達に知られてはいけないことなのか、それとも知られたくないことなのかはわからない。でも、彼女は私達にラシェットを助け出すのに協力して欲しいと思っているのだ。つまりは全ては教えられないが、これ以上は何も聞かず、信じて協力してくれということ。
もちろん、私達の任務はラシェット・クロードと合流し、その手助けをすることなのだから、助け出すことに異論はない。協力もしよう。しかし、この子の言っていること虫が良すぎるし、大体、それでは私達は心からこの子のことも、このヒゲのことも信用ができない。こんな状態で一緒に行動を共にするのは無茶だと、ミニスは思った。
「ねぇ、ミニスさん」
ミニスが考えていると、その不安を見透かしたようにキミが話しかけてきた。
「なぁに?キミさん」
ミニスはそう聞き返す。
するとキミは
「やっぱり、私のこと、まだ信用できないかしら?」
と言った。
その言葉にミニスはドキッとした。
でも、それと同時にこのギクシャクした感じを払拭するのなら、今が最後のチャンスかもしれないとも一瞬で判断した。
だから思い切って
「ええ。正直、あまり信用できないわ。だって、あなたは色々と隠し事をしているんだもの」
と言った。
「そっか……それはそうよね……」
それを聞くと、キミは困ったように顔を伏せた。
その様子をカジは心配そうな顔で見ていたが、ミニスは心を鬼にして冷たく見下ろす。
こうでもしなければ、問題は先送りになってしまうだろう、そう思ったからだった。
大丈夫、この子ならきっとこんなことくらいでヘコたれはしない。
むしろここは彼女に任せよう。
逆に、私達のことを信用するかどうかを、この子に決めてもらうべきなんだわ。
と、ミニスは考えていた。
すると、しばしの沈黙の後、キミが
「ふーっ」
と大きく息を吐き出し、そしておもむろに顔を上げた。
二人はその動きを注視する。
するとキミは続けて、掛けていた大きなサングラスを外し、二人に向かって微笑した。
キミの目は朝日を吸い込み、深く透明な鮮やかな緋色に輝く。その目は薄暗い部屋で見た時よりも、遥かに美しく感じられた。
その瞳をぼーっとして見つめるカジ。
そして、そのことの意味が分からずあっけに取られるミニス。
二人とも言葉が出なかった。
だから何も言わない二人に代わってキミが先に口を開いた。
「変わった色の目をしているでしょ?」
と。すると、ようやくミニスが反応し、
「え、ええ。確かに部屋で一目見た時から、初めてみる瞳の色だと思っていたわ。でも、それがどうかしたの?」
と言った。
「ふふ、ミニスさん。これが私が隠しておきたかった秘密なの。そして、ヒゲさんが私に味方してくれている理由」
「ん?」
ミニスはその言葉の意味が全くわからなかった。確かに綺麗だけど、これが一体何の秘密になるのだろうか?それに、この目が理由でヒゲが味方に?ミニスはもっとわかりやすく説明して欲しかった。
するとキミがまたそれを見透かしたように口を開く。
「この目には特殊な力があるのよ。それは言うなれば、人の心を操る力」
「ひ、人の心を操る?」
二人は声を合わせて言った。
「なんだそりゃ?オカルトか何か?それとも催眠術?」
カジが言うとキミは笑い
「ふふっ、やっぱりみんなラシェットと同じような反応をするのね」
と言った。
「ってことは、本当のことなのそれ?」
ミニスがそう聞くとキミは頷いた。
「ええ。信じられないかもしれないけど、そうなのよ。だからヒゲさんは正確に言うと自主的に私の味方になってくれたわけじゃなくて、私が支配しているから仕方なく味方になってくれてるってわけなの」
「はぁ、俄かには信じがたいわね……」
「いや、俺は全然信じられないぜ。そんなことがあるわけ……」
そこまで考えてカジはふと思い出していた。それはショットのあの目。そして、ナーウッドとショットが交わしていた会話のやりとり。人の心を操る力……?
なにやら黙り込んでしまったカジを尻目にミニスは
「まぁ、実際にここに操られてる人がいるっていうんだからさ、信じなくもないけど。でも、じゃあその目っていったい、何なわけ?他にもその目を持っている人はいるの?」
と質問を続ける。
「実は私にも詳しいことはわからないの。この目の力のほとんどのことは父から教わったんだけど、父も全てを知っているわけではなかったみたいだから。それに、母は私と同じ目をしていたけど、私が秘密を知る年齢を迎える前に死んでしまった。だから私もこの目の力の全てを知らないの。それに、同じ目を持つ人が他にいるかどうかさえも……でも、幼い頃母に聞かされた話では私達がおそらく最後の生き残りだろうって……」
「最後の生き残り……」
カジはそれを聞いて呟いた。
「あれ?なによカジ。何か気になることでもあるわけ?」
「ん?いや、別に。なんでもない」
カジはそう言うといったん言葉を切り、そして
「それよりもさ。この際、お嬢ちゃんのもう一つの秘密の方も聞いておきてぇなぁ。つまり、トカゲの手紙の隠し場所さ」
と言った。
「それは教えられるかい?」
その質問にキミはまた困ってしまった。
しかし、しばらくするとキミは意を決して椅子から立ち上がり、
「ごめんなさい。それだけは教えられないの。本当にごめんなさい」
と深々と頭を下げた。その口調には初めて必死さ滲んでいた。
さらに、続けてキミは
「でも、これだけは信じて。私がラシェットを助けたいって気持ちに嘘はないわ。二人に協力して欲しいって気持ちも本当。それに、あの手紙のことだって悪いようにはならないわ。隠し場所を教えられないのは、むしろ発見される危険を避けるためなの。だからお願い。これ以上何も聞かず、私に力を貸してっ!」
と二人に訴えた。
その姿を見て二人は顔を見合わせる。そしてカジはぽりぽりと頭を掻き、ミニスは小さくため息をついた。
「だぁーー。もう、やめたやめたっ!この俺様がこんな子供相手にいつまでも、ねちねちと事情聴取なんてよ。まったく、どうかしてたぜ」
「本当よね。どっちにしろ私たちにも他にラシェットさんを探す当てはないんだから」
二人はそう言った。
それを聞き、キミは勢いよく頭をあげる。そして
「えっ?じゃあ協力してくれるの?」
と笑顔になった。
「ああ。協力するぜ。もう、大体の事情はわかったし、それに手紙のことだって無理に見つけ出すことはないんだ。所在さえ明らかならな」
「ええ。ま、まだたくさん疑問に思うことはあるけど?それは一緒に行動しながら、おいおい説明してくれればいいわ。とりあえず、今すぐ手を組んでもいいくらいには、私はあなたのことを信用したわ。キミさん」
それを聞いてキミはますます嬉しくなり、少し涙ぐんだ。でも、なんとかそれを堪え
「ありがとうございます。カジさん。ミニスさん」
と精一杯の気持ちを込め、礼を言った。
「ま、いいってことよ。それよりもこれからどうするんだい。こんな所で、のんきに朝食を採ってるわけだけどよ。ラシェットさんがもし本当に捕まっているんなら、今いる場所から、またどこか別の場所に移送されないとも限らないぜ?」
カジがまだ皿に残っていた目玉焼きを食べながら言うと、キミはサングラスを掛け直して
「そうね、それは心配なんだけど……でも、とりあえず今は時間が来るのを待つしかなかったから、それならいっそ朝食でも食べた方がいいんじゃないかなって思ったの」
と言った。
「そうだな。腹が減ってはなんとやらって言うもんな」
キミの言葉に特に引っ掛かるところがなかったのか、カジは言う。
しかし、それに続けてミニスはパンを齧りながら
「時間が来るのを待っていたってどういうこと?だって、私達はこれからニコ・エリオットの所に行くわけなんでしょ?それなら早く行った方がよかったんじゃ……」
とさすがに気になったので聞いた。
それを受けてキミは
「そう。私達はこれからペンギンさんから聞き出した、ニコさんの住んでいる寮まで行く予定だけど、情報によるとかなり警備が厳しいらしいの。そんなところに明るいうちから行ったって、すぐに見つかってしまうわ。だから仕方なく、待ってるのよ」
と頷いた。
「だから、待ってるって何を待ってるのよ?」
「通勤通学の時間になるのを待ってるに決まってるじゃない」
キミが当然のようにそう答えると、二人の頭の上にまたクエスチョンマークが浮かんだ。
「通勤通学?」
「よく、考えてご覧なさいよ。ニコさんの寮とニコさんの仕事場との距離を。結構離れているわ。だから、ニコさんはきっと出勤に使うはずなのよ。車をね」
「あっ」
キミがそう言うと、ようやく二人は合点がいった。
なるほど、確かに寮に忍び込むより、その方がより確実で簡単かもしれない。
「さぁ。わかったら、ちゃんと朝ごはんを食べなさい。これから待ち伏せなんだから。そして、細い路地に入ったら、ニコさんの通勤車を襲うわよ。いいわね?」




