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異世界釣り暮らし  作者: 三上康明


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113/113

異世界で始まる新たな「釣り暮らし」

 照りつける陽射しがあまりにもまぶしく、おれの身体に降り注いでいる。

 暑い。

 ひたすらあっつい。

 ボートが進んでいくと沼の水面に波紋が広がっていく。沼から立ち上るなんともかぐわしい泥のニオイに頭がどうにかなりそうだ。


「おーい、ハヤト。どうだ?」

「全然ダメっす! 藤岡さんは?」


 藤岡さん——大賢者様こと藤岡さんは、向こうからやってきたボートの上、両手をクロスさせてバッテンを見せる。


「ですか……なんていうか、まったく反応ないですよ。ヤツはいないんじゃないですか?」

「俺もそう思うんだがよお、見たってヤツはいるし、1匹いたら30匹だからなあ」

「Gですか」

「Gよりタチが悪い」


 一人乗りのボートにごろん、と横になる藤岡さん。

 ボートには釣り竿が置かれてあって、釣り糸が外へと垂れている。あーあー、ちゃんと回収しないで垂れっぱなしじゃ……。


「ふ、藤岡さん! 引いてますよ!」

「お!?」


 がばりと起き上がった藤岡さんがとっさに釣り竿をつかもうとして——汗をかいていたせいだろうか——手を滑らせる。


「うがっ!?」

「ウソ、こっちに!?」


 こっちに飛んできた釣り竿をおれがつかむ。

 同時に竿先が沼へと引きずり込まれそうになる。


「うわー! 掛かってますよ! この沼にいたんだ、こいつ!」

「さすが俺。沼トローリング」

「冗談言ってる場合じゃ——」


 おれは竿を立ててフッキングする。掛かってる。がっつりと。引き込む手応えはかなり強く、熱いバトルを期待させてくれる。

 さすがだわ。

 スポーツフィッシングの元祖、っていうか、メインストリームというか。


「おお、でかいな! こっちでタモ入れたるぞ!」

「お願いします!」


 水面に現れたのは——黄色がかった銀色の魚影、ブラックバスだった。




 夕方、ボートから上がると、狭いところにずっといたせいか身体が強ばっているのを感じる。

 夕闇が迫っており周囲では多くの虫が鳴いていた。すでに涼しくなり始めている——このあたりは、夏でも夜は十分涼しいんだな。


「ハヤトさん! おかえりなさい」

「ただいま、リィン」


 船着き場をこちらにやってくるのは天使——じゃなかった、「おれの天使」リィンである。

 1日ボート漕いでめっちゃ疲れたけど、リィンの顔を見たら疲れは全部吹っ飛んだ。リィンは天使。今日も再確認できておれは幸せである。


「どうでした?」

「やっぱりブラックバスがいたよ。だいぶ淡水魚を食い荒らしているみたいだ」

「そう、ですか……この後はどうなるんでしょうか?」

「一度沼の水を抜いて、完全駆除しないとヤバイかもね。まあ、それはここの領主ががんばるんじゃないかな? やる気ありそうだったし」

「はい」


 リィンがにこりと微笑む。やっぱりリィンは天(省略

 おれがリィンとともに歩いていくと、沼のほとりにある宿——の周囲に展開しているいくつものテントがあって、そこには各国の旗が翻っていた。

 なんでも、大賢者藤岡さんがこの沼に来るにあたって「絶対に危険を回避しなければならない」ということで各国が腕利きの騎士を派遣したらしい。中にはビグサークの騎士団長レガードさんもいる。騎士団長ヒマなのかな?

 宿は1軒しかなく、騎士全員が入りきるわけもないのでこうしてテントを張って、夕飯はバーベキューなんかをしているのだ。


「ハハハ、肉が焼けたぞ」

「どれどれ、ふむ、これはなかなか」

「我が国のタレはどうですかな?」

「酒をおひとつどうぞ」


 ……各国のガチムチが集まってちょっとしたアウトドアを楽しんでいるようにしか見えないが。


「平和だな」

「平和ですね」


 そう、レジャー感があるのは、彼らに緊張感がないせいでもある。


「ここ……ほんとにアガー君主国なんだよな?」

「もちろんです。でなければここまで多くの騎士が参加しないでしょう。周辺モンスターなどの危険はすべて排除してあります」

「なるほど……」


 おれと藤岡さんが、ソロでボートを漕ぐことを許されていたのも、騎士たちが沼の周りをぐるり取り囲んでくれていたからだ。どんだけVIPなバスフィッシングだよ。


「ハヤト様!」


 弾丸のように飛んできたカルアを抱き留めるのもずいぶん慣れてきた。


「飯はできてる?」

「はいぃ! お待ちしてました!」

「……や、もう食べてるだろお前」

「こっ、これは味見ですぅ!」


 口の周りにべたべたのBBQソースがついてるぞ。おれの服にもくっつけおって。

 まあ、焼けた肉を目の前にしてカルアが自重できるわけないもんな。

 おれたちがバーベキューの輪に入っていくと、すでに藤岡さんがハーレムに囲まれて肉を食べさせてもらっていた。ほんと、この人ってこっちの世界でアメリカンドリーム的なものを成し遂げてるんだよなぁ。


「お、ハヤト来たか」


 藤岡さんともよく会うようになって、「牛尾くん」から「ハヤト」と呼び捨てになっていた。憧れの釣り人(アングラー)に名前で呼んでもらえるのって最高……!


「……? ハヤト様?」

「今ハヤトさんは謎の喜びに浸っているようですね……少しだけならわたくしも理解できますが……」


 おれと藤岡さんはあの釣り大会が終わってから1月後、アガー君主国に入ることになった。

 次回釣り大会は淡水魚をターゲットとすることになって、各国は大いにざわついた。

 で、アガー君主国も例外じゃない。

 君主代理がやらかしたことや、国境に配備された兵士が攻めこもうとしてたこととかいろいろあって、アガーも相当混乱するんじゃないかと思ってたんだけど——割と、あっさりと君主があきらめた。


 どうも暴走してたのは君主代理とその一派で、君主は結構なお年なので老い先もそう長くないんだとか。

 君主は自分の命を差し出すし、一時的な国の統治権も差し出すから国民を救って欲しいと言ったんだ。


 アガー君主国の国内は、金もない、食い物もないと困窮していた。

 大賢者様を中心とした視察団はそれを確認するや、すぐに緊急支援を決定した。大賢者様はアガーの国内に湖や沼が多いことから「来年の釣り大会を目指す釣り人に、アガーで特訓してもらうよう誘導しよう」と提案した。

 新たな観光産業の提案だよな。いやはや、藤岡さん、ただの釣りバカじゃなくてマジすごい。


 それで調査が進んですぐに判明したことなんだが、このアガーにはブラックバスが生息しているらしい。で、おれも呼ばれて実際に釣ってみることになったのだ。


「ハヤト、さっきの魚だが間違いなくブラックバスだな。問題はなんでこんなのがいるのか、ってことだが」

「なんで……ですか?」

「外来種だろう」


 藤岡さんの言葉におれは笑ってしまう。


「それは日本の話でしょう?」

「そこなんだがな、ハヤト。俺が思うに、この大陸は日本なんじゃないかな?」

「……藤岡さん。日本にエルフはいませんよ」


 ちらりと、藤岡さんにかいがいしく世話を焼いている巨乳のエルフお姉さんを見やる。


「そんなことはわかってる。あのな……地球に似た、地球じゃない世界なんじゃないかと」

「どういうことですか」

「つーかここは日本語でしゃべってるだろ」

「……はい」

「生態系もほぼ同じ」

「……確かに」

「ジャークラ公国の砂浜(サーフ)は駿河湾や遠州灘のそれと同じだし、ノアイラン帝国の半島は伊豆のそれだ」

「いやぁ、さすがにそれは……。ないですよね?」

「地形は変わってるけど、釣れる魚種はほとんど同じだぞ。釣りまくった俺が言うんだから間違いない」


 そのおかげでアタシは大賢者様に出会えたんだニャー、なんてネコミミ美女が藤岡さんに腕を絡める。なにそれうらやま……。


「コホン」


 おれの表情に気づいたのか、リィンが咳払いする。も、もちろんおれにはリィンがいるからうらやましくなんかないけどな!


「で、でも藤岡さん、富士山がないですよ」

「まあ、そういう細かい違いはあるが、それは些細な問題じゃない」


 静岡県民と山梨県民が聞いたらキレそうな言葉だったが、あいにくここは異世界だ。


「……なぁ、ハヤトくん。俺がこっちに転移したときの話はしたよな」


 おれは藤岡さんがどうやって異世界転移したのか、その話をすでに聞いていた。

 東京湾でひとり、ボート釣りを楽しんでいたとき、海底から紫色の光が迫ってきて——気づけばそこは異世界だったという。

 おれは、冷凍マグロに直撃という変な経緯だったがよくよく思い返してみるとあの冷凍マグロは光っていたような気がする。


「魔魚による転移」


 それが魔魚の仕業なんじゃないかと藤岡さんは考えているらしい。


「おそらく海のどこか……深海で、こちらとあちらの世界がつながっているんじゃないかな」

「マジで言ってます? それ」

「ああ。とんでもない魔力を有した魔魚がいるんだよ。広い海には」

「——それは面白そうな話だな」


 とそこへ話に入ってきたのは、クロェイラのイケメン叔父さんだった。

 相変わらずイケメンだが、バーベキューのエリアで焼き魚を食べている。しかもおれと藤岡さんが釣ったブラックバスだ。クロェイラもその横でもっしゃもっしゃ食べている。


「え、えぇ……ブラックバス食べてる……」

「いやさ、俺も言ったんだけど、こいつら食うと言って聞かなくてよ……」


 日本出身アングラー2名(おれと藤岡さんだけど)が呆れていると、


「臭みがあって美味くはないな」

「でも食べられないほどじゃない」

「うむ。淡水魚はめったに食す機会がない」


 えぇ……ブラックバスでも食べちゃうのかよ……。

 まあ、彼らはだいぶ強靱なあごを持っているようだから、骨だらけでも気にならないとかそういう人間との違いもあるんだろうけど。

 つうかこの人たちも視察団に参加してたんだよな。海竜と人間の約定に関することだから。まあ、山国に入るもんだから「魚はほとんどないよ」と言ったらスゲーイヤそうな顔してたけど。


「それでハヤト、今の話だけど——どこにその魔魚はいるの?」

「だからあくまでも仮説なんだよ。100%いると決まったわけじゃない」

「俺はいると信じてるぞ。場所の候補も考えてある」

「ほう」


 藤岡さんの言葉に、イケメン叔父さんとクロェイラが目を輝かせる。これはアレだ。視察が面倒になってきたしそろそろ海の魚を食べたいから、帰る口実を見つけたかったとかそういう感じのアレですわ。

 で、藤岡さんは騎士のひとりに大陸地図を持ってこさせた。地図はだいぶ大雑把だけど、クロェイラたちは自分たちがどこにいるのかをなんとか理解した。

 ていうかこうして地図を見ると、確かに日本によく似てる……っていうかここ「大陸」って言ってたけど島国じゃん。え、もしかして海の向こうにユーラシア大陸とかアメリカ大陸があるの?

 ……この世界、広い。


「それで魔魚の居場所だが——ここだと俺は思う」


 藤岡さんが指したのは——最も海の深い場所。

 日本海溝があるはずの海域だ。




 クロェイラは叔父さんといっしょに帰っていった。川を下っていけばいいんだから楽は楽だが、重金属が流れていないかどうか確認しながらするそうだから時間はかかる。

 海竜の中に、深海遊泳が得意な竜がいるらしい。クロェイラは得意ではないが「魔法でなんとかするし」と鼻息も荒かった。そんなに魔魚食いたいか。

 藤岡さんとしては「世界は深海でつながっている」仮説こそあったものの、調べる手段がなかった。深い海域は海竜がいるから船を出すこともできないしな。そこへまさかの海竜登場である。海竜とおれのつながりを知ったときには、彼らに協力してもらって海底を調べることを思いついていたらしい。マジ賢者。


「ハヤト!」

「ハヤト」


 食事が終わってから大きなテント——というか天幕で休んでいると、入ってくる人影があった。


「ランディー!? それにスノゥも」

「久しぶりだな」

「久しぶり」


 実のところこのふたりと会うのも1月近くぶりになる。

 ランディーはディルアナ子爵に請われ、アガー君主国の視察団に参加することになっていた。巨大クロダイを釣った子爵に、逃したとはいえ魔鯛を釣りかけたランディーのふたりは知名度抜群で、視察団の意気も大いに上がったらしい。

 ふたりはアガーの首都で、釣りや漁業に関する指導に当たることになっていたはずだ。


「ハヤトがこっちで釣りをしていると聞いてな、いてもたってもいられずに、来た」


 にっ、と笑う彼女はほんのり日焼けしていた。まぁ、おれなんかはとっくに真っ黒だけど。

 こんな真夏にも日に焼けていないリィンはマジ天使。ていうかどうなってんの?


「来た、って……簡単に言うけど、大丈夫なのか?」

「大体、私に書類仕事をさせるんじゃないって話だよ。それがイヤで、釣りだけをするために男爵位を返上したのに」

「そんなに仕事を振られてるのか」

「ディルアナのヤツ、『ついてくればアガーの湖で調査フィッシングしまくりだ』とか言ってたくせに……自分が書類仕事やらせされるのわかっていたから私を巻き込んだんだぞ。ひどいだろ。しかも毎日毎日『帝国に来い』『貴族位を手配するよう陛下にお願いする』『むしろ私の子爵位をやる』などと……自分が辞めたいだけだろうに」

「ははは……」


 乾いた笑いが漏れた。

 単にディルアナ子爵が釣りバカってだけだよな……? 百合的なアレなアレじゃないよな……?


「それにしても、ハヤトたちも仲良くやっているようでなによりだな」

「え!?」


 おれとリィンを見て、意味ありげに笑うランディーだったが、


「はいっ! ご主人様はいつもお優しいです!」


 とカルアが元気よく返事をした。

 ふー、ランディーめ、いきなり繊細な話題をぶっ込んでくるんじゃないよ。こっちとしてはリィンにOKをいただいたもののどうやって距離を縮めていけばいいのか日々悩んで生活してるんだからな……。


「おー、そうだったな、カルアもいたもんな」


 にこにこしていたランディーだったけれども、


「……ハヤト」

「ん?」

「一応聞くけど、カルアに……」

「ちょっ、変な言いがかりよせよ!? カルアはもはや妹みたいなもんだからな!」

「だ、だよな……うん、そうだよな」

「カ、カルアは妹なんかじゃ、ないですっ! も、もうちゃんと一人前の女性でっ……!」


 むぅ〜、と頬をふくらませているカルア。

 一人前の女性かー。そんなこと言うようになったか。

 ……なんかこのおれの感覚って、娘を持った父親みたいじゃないか? それはそれでアレだな……。


「そんなわけでリィン。私が来たからには日中はハヤトを借りるぞ?」

「は、はい。わたくしに許可をとる必要は……」

「その代わり、夜は、な……?」

「んなっ!?」


 ランディーがリィンの耳元でなにかを囁いている。

 なんだなんだ。わたしとっても気になります!

 おれも近づこうかと思っていたところへ、スノゥがくいくいとおれの服を引っ張った。


「ハヤト。新しいルアーできた。お祖父ちゃんも大賢者様に持ってってる」

「おお、そうか!」


 スノゥとゴルゾフおじいさんは、今は共同で鍛冶をやっている。

 なにしろゴルゾフさんは藤岡さんのルアーを見て一目で気に入り、ビグサークの鍛冶工房を息子に押しつけて藤岡さんにくっついて旅をすることにしたらしい。

 おれと藤岡さんがあれこれルアーや釣り具について言うので、ゴルゾフさんひとりでは対応できなくなってスノゥもいっしょに手伝っているということだ。

 まあ、フワフラ糸についてはゴルゾフさんも藤岡さんも知らなかったから、これは自慢してもいいよな!


「ボルゾイさん……だよな。スノゥのお父さん。連絡したのか?」

「うん。手紙を送ったらすぐに返事が来た。お祖父ちゃんのやることは滅茶苦茶だって、すごく怒ってた」

「ははは……」

「途中から自分も参加したいっていう愚痴になって、最後は……その……」


 スノゥは言いづらそうに、もじもじしていたが、


「……あたしのことを、自慢の娘だって」

「そうか」


 おれはスノゥの頭をなでてやる。


「よかったな」

「ん!」


 照れくさそうにスノゥはうなずいた。

 ……してカルアさん、その横でこちらに頭を向けているのはなんですか? なでろと?


「それで、ハヤトよ。明日はなにを釣る? そこの沼か? そうなんだな?」


 やる気満々のランディーが言う。


「あー、ブラックバスがなんでここにいるのかの調査をするんじゃないかな? 話し合いによっては沼の水を抜くことになるかも」


 外来種だからなぁ、藤岡さんの推測によると。ある程度歴史をひもとけばわかりそうな気もするけど。

 いずれにせよ在来種を保護するならブラックバスさんには消えていただくしかない。


「はぁ? 釣りじゃないのか?」

「調査フィッシングはもう終わりだよ。これから藤岡さんとは別で移動——ビグサーク王国に向かう」

「あー、そう言えばそんな時期か」


 ランディーもわかったらしい。そう、キャロル王女との約束がある、落ちハゼ釣り大会だ。


「その後は?」

「その後は——寒くなる前に北へと回って釣りをしたいかなあ。ビグサークの辺境に大きな湖があるんだよな?」

「ハヤト。ビグサーク国内にいる間は、お祖父ちゃんといっしょに一度家に帰って、そこでルアーや釣り針を打ってもいい?」

「もちろんだよ。ゴルゾフさんもそれでいいって?」

「……気まずくて絶対嫌がるから、不意打ちで連れてく。大賢者様の許可は取ったから」

「そ、そうなんだ……」


 たくましいことで。


「カルアはハヤト様といっしょです! ずっとずっといっしょです!」

「わかってるよ。——それに、リ、リィンも」

「はい」

「王国にご家族がいるのなら、一応、その、ご挨拶とかしようかなと……」


 言うと、リィンは真っ赤になってしまった。

 だけど、


「……是非、お願いします」


 消え入りそうながらもそう言ってくれた。

 なんだこれ。めちゃくちゃうれしいんですが。


 翌朝からおれたちは行動を開始した。

 アガーのことは偉い人たちに任せるし、藤岡さんも呼ばれてる国があるから行動は別々になることとなった。

 クロェイラたち海竜の調査がどうなるかはわからないけど、とりあえず人間と海竜が争うことはなさそうでよかった。


「よーし、それじゃ出発しようか」


 おれ、リィン、ランディー、カルア、スノゥの5人。

 ビグサークを出たときのメンバーは変わらない——これから誰かが増えたりするかもしれないけど。

 楽しみだな、落ちハゼ釣り。それから別の国も回りたいし。

 冬には釣果が渋くなるから工夫しないとなぁ……。ハッ、やってみようか、エサ釣り! エサなら冬にメジナを狙えるじゃないか。いや、やっぱりここはルアーにこだわって夜間のアジングやメバリングもいいよな。海沿いの、温泉がある釣り場でルアー釣りして、身体が冷えたら温泉に……くぅー、考えるだけでわくわくしてきたぞ。


「ハヤト様がまた釣りのことを考えているいやらしい目をしています」

「わかる。釣り人ってのは一皮剥けばこうだからな。こんなにいい女がいるのに釣りのことばっかり考える」

「それはランディーさんも同じ。釣り人はみんなこう」

「ふふ。一時はどうなることか思いましたが——平和がまた戻ってきてくれたからこそ、釣りのことに集中できるんでしょうね」


 馬車に乗り込んだ女性陣がなにかを話して盛り上がっている。

 おれは、彼女たちの話の邪魔をしないようにそっとイスにもたれて目を閉じた。


 外は夏。セミがうるさいほどに鳴いている。

 でも吹き込む風が涼しくて——おれは眠気に誘われた。

 夢の中でも釣りができたらいいのにな、とそんなことを思って。


「異世界釣り暮らし」これにて完結です。皆様ご愛読誠にありがとうございました。

 私の個人的な愛を詰め込んで出発した本作ですが、書籍化にまで至ったことは望外の喜びでした。書籍版を購入いただいた方々、ありがとうございます。未購入の皆様、「異世界釣り暮らし」で検索するとアマゾンさんなど通販サイトで購入いただけますので是非。電子版の予定は今のところないみたいです。


 ハヤトの異世界での釣りはまだ続くようですが、本作としてはここで終了ということで。ここから先はどうしても蛇足感が出てしまうので……。

 もしよろしければページ下部に評価項目がありますので、本作の評価を入れていただければありがたいです。それと、現行で続いている連載・書籍化の「察知されない最強職」もよろしくお願いします。

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