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第7話 出会える相手

お待たせ致しましたー

 今日あった出来事を、赤鬼の隆輝(りゅうき)に話したら。


 当然のように声を上げてバカ笑いされてしまった。



「そりゃ、(かおる)君が悪いよ?」

「せやけど、隆やん? あの大将はんがやで?」

湖沼(こぬま)さんには、火坑(かきょう)君はベタ惚れだからね?」



 今、隆輝の自宅にいる。界隈ではなく、人間界の。


 人間と共に仕事をしているので、付き合い云々。緊急連絡先などと色々手続きがあるのだ。面倒だが、わざわざ専門学校まで行った彼の努力を、馨は否定しないし、むしろ感心している。


 それはいいのだが、あの大将とも友人でいるこの鬼もまた、人間の女と交際しているのだ。



「隆やんもやし、なんなん? 人間の女がそんなにええのん?」

「馨君も、いつか出来たら分かると思うよ?」

「……おん。その笑顔で言われると納得してまうわ」



 蕩けそうな笑顔。


 本当に、相手を想っているからこそ、出来るものだ。


 一反木綿(いったんもめん)として生を受けた馨だが、戦前に戦後の人間の生き方を厭うわけではない。


 だが、短い命で、とてもか弱い。


 それを同胞として引き込むのも、どうしたものか。


 とは言え、あの猫人の関係者はほとんどそんな感じだ。



「人間でも妖でも。大好きだと思う人が出来て、そんな相手に尽くしたいと思えるんだ。そんな瞬間が最高で仕方ないんだよー?」

「……最高にねぇ?」



 今日会った、火坑やのっぺらぼうの芙美(ふみ)もだが。


 それほど、人間相手にそこまで惚れるのが。やはり、馨にはいまいちわかっていなかった。


 けれど、聞いた話ではぬらりひょんの総大将の身内もだとか。


 惚れに惚れ抜いて、同胞に(いざな)うのは。


 どれだけ、惚れたらわかるのだろうか。少なくとも、わずかに興味を持った程度の今ではわからないだろう。



「と・り・あ・え・ず。真穂(まほ)様を二度も怒らせる事態にならなくて、よかったんじゃない?」

「それはほんま勘弁!! まさか、あの嬢ちゃんの守護に憑くとは思わんやろ!?」

「まあ、妖力は巧妙に隠しているからねえ?」

「あの嬢ちゃんの霊力は桁違いやったけど」



 芙美の言ってたように、(さとり)御大(おんたい)の子孫。


 見目はなかなか可愛らしいが、それだけで火坑が見初めたわけではないだろう。猫人だと、これまた言い寄られることもあるらしい彼が、唯一心を許した相手。


 それを機に、彼の店である楽庵(らくあん)では様々な(えにし)によって結ばれている人間と妖のカップルが多い。


 それくらいは芙美のせいで噂にもなっているし、記事にもしたいところだが。絶対出禁にされるので却下だ。


 彼の師匠である黒豹の霊夢(れむ)の料理も実に美味いが、なんというか、火坑の方がほっと出来るのだ。仕事上がりに一杯ひっかけるくらいに、ちょうどいい店。


 そんな安寧の居場所を失いたくないのだ。



「まあ、仮に。俺とケイちゃんを記事にしたら俺でも怒るよ?」

「……肝に銘じておくわ」



 いつか、出会える相手。


 それに少し期待を抱きながらも、馨は界隈に戻るのに隆輝の家を後にしたのだった。

一反木綿編終了


次回から新章スタート‼️


また明日〜

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